December 北田ゆうすけのびよう道 元フリーター、有名店最速デビューからオーナーへ “美容師の夢を守る場所”を自分でつくる
理不尽をなくし“誰もが続けられるサロン”を目指す

30歳前後、数字や評価が安定してきた頃先輩が退社したのをきっかけに、クリエイティブディレクターや副店長の役割を任されるようになりました。もともと僕は肩書きにはあまり興味がなかったのですが、「スタッフが辞めてしまうのは当たり前という空気を変えたい」と思って引き受けたんです。
アシスタントのときから、美容業界に根強く残る理不尽な叱責や、一部の人だけがチャンスを得られる仕組みに疑問を持っていました。だから、マネジメントに関わるようになってからは、チェック会の雰囲気を変えたり、誰もに外部の仕事のチャンスができる仕組みを整えたりして、スタッフが安心して続けられる環境づくりに力を入れました。
マネジメントを経験する中で、会社の経営的な部分にも関わるようになりました。経営上、やむを得ない判断とはいえ、スタッフにとってマイナスになる決断を迫られる場面にも直面しました。その瞬間に強く思ったのは、「これは自分のやりたいことじゃない」ということ。だからこそ「今いる子たちを全員デビューさせてから辞める」と決めて、独立の道を選んだんです。僕が独立を決めた一番の理由は、スタッフが安心して続けられる環境をつくりたいという思いです。
お店は一人でつくるものではなく、みんなでつくるもの

Decemberを立ち上げてからも、そのビジョンはずっと変わりません。美容師一人でできることには限界があります。でも、同じ志を持った仲間が増えれば、その分だけ幸せにできるお客さまも広がっていく。お店は一人でつくるものではなく、みんなでつくるもの。スタッフが自分らしく力を発揮できて、お客さまを笑顔にできる。その循環を広げていくことが、僕にとってのDecemberのビジョンです。
よく「北田さんが一人前になったと思った瞬間はありますか?」と聞かれるのですが、正直、僕は自分のことをまだ一人前だと思ったことはありません。むしろ「一人前になった」と思った瞬間に、成長が止まる気がしているんです。美容の世界は終わりがなく、お客さまもスタッフも常に成長していく。だから僕自身も学び続けなければ衰退してしまうと思っています。

これからの目標は、自分一人で何かを成し遂げることではありません。同じ志を持つスタッフを育てて、その人たちがお客さまを幸せにする。その連鎖を広げていくこと。僕一人で十人を幸せにするよりも、十人の仲間がそれぞれ十人を幸せにできれば、その数は一気に広がっていきます。地方でセミナーをすると、同じ思いを共有してくれる美容師さんがたくさんいることを実感します。そうした輪を広げ、地域ごとに喜んでもらえる場をつくっていきたい。それが、僕にとっての「December」の未来であり、これから歩んでいきたい道です。挑戦こそ成長!周りを巻き込みながらみんなで成長していきたいと思っています。

- プロフィール
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December
代表/北田ゆうすけ
大手有名サロンのクリエイティブディレクターや店舗代表などの要職を経て、2018年4月表参道に「December」、2020年10月に「laundry」(表参道)をオープンし、さらに2023年4月に「laundry」拡張してDecember/jingumaeに。2025年2月には群馬県伊勢崎市に「December/ISESAKI」をオープン。ふんわりと柔らかく、ケアしやすいラフなスタイルが得意で、ヘアアレンジなどにも定評がある。日々のサロンワークのほか、数多くの女性誌、セミナー、ヘアショーなど、多岐に渡り活躍中の人気美容師。
(文/外山武史 撮影/菊池麻美)