『貪欲なインプットなしに、心を動かす作品は生まれない』 柏 昌弘のメッセージ性とリアリズムを兼ね備えたクリエイティブの作法

「ロックっぽい」ではなく「90年代のグランジ」 イメージに具体性を持たせる

 

90sグランジな雰囲気がイメージソース。引き算思考で脱力感ある雰囲気に。

 

イメージに対してどこまでの具体性を持てるかが作品の質を左右すると考えています。例えば、「ロックっぽい」と「90年代のグランジ」だとイメージするものが違いますよね。「ロックっぽい」でイメージするものは人によって違うけど「90年年代のグランジ」なら似たようなイメージを共有できると思うんですよね。ファッションも音楽も情報に具体性があると、撮影現場にいる人たちと同じイメージを持つことができます。

 

また、どんな仕事をするにしろ、心を動かすメッセージ性、テーマ性を込めることは絶対に外せないです。もちろんそれはサロンワークでも同じで、この髪型にしたからいつもと違う服を着てみたくなるとか、そういう気持ちの変化が一番大事だと考えています。

 

―今までで最も成長を感じた仕事をあげるとしたら?

 

 

GrimoireというVintageショップの新店舗のヴィジュアル撮影ですね。ヴィンテージのクラシックな世界観の強いファッション(古着)に合わせたヘアメイクの仕事で、「レトロすぎずモード感を入れた感じに」という要望でした。クライアントが僕のことを信用してくださり、ヘアメイクのヴィジュアルイメージを全て任せてくださったんですよ。50年代、60年代、70年代という自分が経験したことのない時代のアイテムを扱うヴィンテージショップの撮影だったので、まずは自分の知らないファッションカルチャーや思想をインプットするところからはじめました。

 

 

スタイリスト、カメラマン、デザイナーなど、いろいろな目線でイメージを共有し、意見を交わし、バランスをとってイメージを固めていきました。チームでクリエイションするときは、関わる人が多い分、デザインの足し算、引き算が複雑になります。自分が出過ぎるのもよくないし、出ないのもよくない。バランス感覚を養える仕事でしたし、カルチャーやバックボーン、歴史や思想も踏まえて、掘り下げて表現していく新しい目線を手にいれられたことも大きかったですね。

 

そのときつくった作品はファッションメディアにも拡散され、反響も驚くほど大きかったです。髪を切るだけじゃなく、美容業界誌やコンテストの作品でもなく、アイテムの世界観からイメージをつくることで、美容師の活躍の可能性を広げられるという手応えを感じられる仕事でした。

 

>「食わず嫌い」と「縁」が自分の世界を広げた

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