お客さまの喜びが人生の全て。ブリーチワークを極め、技術と献身で無理難題に応える 奧杉拓未さん
ブリーチを辞めても通い続けてもらえる信頼関係

─フリーランスになったのは、どういったきっかけだったのでしょうか?
1社目では3年ほど働いたのですが、その間に、サロンに所属し続けた場合の自分の天井が見えたんですよね。
ハイトーンのブランディングが定着してからは、売上も安定するようになって。1年目の3月に330万円を達成して以降、平均してその前後の数字を作れるようになりました。でも、会社に所属している以上、自分の枠数もメニューの料金も決められている。そう考えたら、自分がどんなに頑張っても、売上のアッパーは決まっているなと思ってしまったんです。
それに、いくつも枠を抱えて掛け持ちするサロンワークは、どうしてもお待たせする瞬間があるし、お客さまに負担をかけてしまいます。忙しなく働くうちに「せっかく僕を指名してきてくれたなら、最初から最後まで自分が全部やってあげたい」という思いも芽生えていたので、フリーランスになることを決めました。

─前社は池袋で、フリーランスとして働き始めたのは渋谷。エリアを変える不安はありませんでしたか?
そこは、特に気になりませんでした。先ほども少しお話ししましたが、僕のお客さまは長く通ってくださる方が多いんですよ。信頼関係を築けていると思っているので、エリアが変わっても来てくださるんじゃないかなと思っていました。
実際、そういう方がほとんどで、ありがたい限りですね。それこそ、これだけハイトーンをメインに打ち出しているにも関わらず、ハイトーンをやめた方や、カラー自体をやめてカットだけになったお客さまも、変わらずに来てくださるんですよ。
─その信頼関係は、どのように築かれたのでしょうか?
もちろん美容師である以上、技術が上手いことが大前提。でも、それだけではない気がしています。というのも、僕は他の人と比べて、お客さまと仲良くなるのがかなり早いタイプなんですよ。それは、お喋りな性格に起因するところもあるかもしれません。一方で実は僕、LINEの友だちが6人だけというぐらい、プライベートの友達がほとんどいなくて。その分、人生の構成要素が仕事とお客さまくらいだし、来てくださる皆さんのことが大好きなんです(笑)。

僕にとって、美容師として働く上で一番の楽しみはお客さまに会うことだし、仕事の原動力は全てお客さま。
技術を磨くのも、上手い方が喜んでいただけるからですし、マンツーマンで接客するのも、その方がクオリティの高い技術を提供できるから。昨年、別のシェアサロンから今のお店に拠点を移したのも、エクステをやりたいという方がいて、このお店ならエクステの取り扱いがあったからです。そういう思いが伝わっているからこそ、美容師としてだけでなく、人としても信頼していただけているのかなと感じます。
どんな履歴も、無理難題も断らない。

─カウンセリング動画では、かなり難しい履歴の方にも対応されていますよね。
はい。基本的に、どんな履歴だとしても、お客さまのオーダーを僕の方からお断りすることはありません。もちろん、髪を見て履歴を聞いて、求められた通りに染めたら髪の毛が千切れてしまうかもな、と感じるケースもあります。そのリスクを説明して、お客さまが「じゃあやめる」という場合は別のアプローチを考えますが、「それでもやりたい」と言われたら「わかりました」と言って、ブリーチもカラーもできる限りオーダーに沿った施術をしますね。
というのも、そういう子って、結局はどうしても自分の求める通りのカラーがやりたいんですよ。だから、僕が断ってその場では踏みとどまったとしても、後からそのオーダー通りにやってくれる別の美容師を探すんです。それなら、僕がやった方が綺麗にできるだろうという自負があるので、リスクを背負ってでもやるようにしています。

─そうした積み重ねも、信頼に繋がっているんですね。今後は、顧客のために自分のお店を構えることなども想定されていますか?
今は、自分のお店を持つことは考えていません。例えば、アシスタントを雇って枠を増やせば、お客さまも予約を取りやすくなりますし、担当できる方の総数は増えるかもしれません。でもその分、そのお客さま一人一人に僕が使える時間は減ってしまいますよね。それは本末転倒かなと思うんです。
1社目で『カラーの塗布はアシスタントに任せて、自分はチェックだけ』という働き方を経験したからこそ、結局、自分1人で受け持てる範囲で入客するのがお客さまにとってベストな形だと実感したんですよ。売上を上げたいという自分の欲求よりも、提供するヘアのクオリティを担保することの方が僕にとっては重要。
なのでこれからも、僕を選んでくれるお客さまの幸せを第一に、手の届く範囲で美容師をやっていきたいと思います。

- プロフィール
-
M .O.D.渋谷
奧杉拓未
北海道札幌市出身。札幌ベルエポック美容専門学校卒業後、都内トレンドサロンに入社。3年間勤めた後、退社しフリーランスとして活躍。ビビットなカラーのハイトーンを発信するSNSでは、9万人以上のフォロワーを抱える。
Instagram:@takumilk_tea410
(文/岩木日向子 撮影/菊池麻美)
- 1 2