「男性版顔立ちマップ」はメンズ美容革命の狼煙 資生堂ヘアメイクアップアーティスト・中村潤氏に聞く(後編)

 

2020年資生堂はパリメンズ・東京でコレクションのバックステージでヘアメイクチーフも務める中村潤さんを、メンズビューティーに特化したヘアメイクアップアーティストとして擁立し、資生堂メンズビューティーを強力に打ち出しはじめました。それを牽引する中村潤さんはどんな人物なのか、また、どんな武器を持ってメンズ美容に革命を起こそうとしているのかうかがいました。インタビューは前後編の2回。後編は、2020年に発表されたばかりの「男性版顔立ちマップ」の誕生秘話とその活用法がテーマです。ぜひ前編と合わせてご覧ください。

 


 

メンズメイクの知識や経験を、客観的な理論に落とし込む

 

 

男性のメイクについて考えるとき、たとえばヒゲがあるかないかで、できることも随分と変わります。選択肢の多い女性のメイクとは自由度が異なるので「こうすればこんなイメージになるよ」という議論を起こすことが難しかったのです。だから、これまで女性の美容理論はあるけれど、男性のものはありませんでした。

 

私は「男性の顔は、こうすれば印象を変えられる」というナレッジを蓄積していたので「いつかこれを整理したいな」と思っていたんですよね。とはいえ自分の力だけではきちんとした議論になりません。それに、恣意的な意見に止まるものにはしたくなかったので、できる限り客観的に男性の顔立ちについて外見的印象をつくり出している要因をまとめたいと考えました。そして生まれたのが「男性版顔立ちマップ」です。

 

 

「男性版顔立ちマップ」をつくる上で、まず基本となる顔の分類をするために資生堂ビューティークリエイションセンターに所属する40人のヘアメイクアップアーティストに600通りの男性の顔写真を見て判断してもらいました。40人に協力してもらったのは、できるだけ客観的なデータがほしかったからです。

 

「男性版顔立ちマップ」をつくるための、データの元になっているのは20代から30代の平均的な体重の男性です。その男性の顔写真を照らし合わせて「似ている・似ていない」の判断をします。その統計データを使って三次元のグラフにマッピングすると4つのグループができたのです。そしてこの4つのグループの中にある写真を、AIを使ってモーフィング(合成)することで一つの顔(代表的な顔)にしました。

 

分類としては、「COOL」「ACTIVE」「KIND」「MASTER」の4つ。この分類は、「この顔を見てどういう印象を持ちましたか?」というアンケートを7000名に実施し、その結果から導き出されたものです。恣意的な要素を極力減らしているので、7割か8割くらいのかたには「男性版顔立ちマップ」の内容に納得してもらえると思っています。

 

多くの男性は自分の顔立ちを無視してセルフメイクをしてきた

 

 

女性は「顔立ちマップ」がすでにあって、顔立ちに対してメイクで印象を変えることはわりと身近です。一方で男性は、眉の表現ひとつとってみても、一昔前なら「細眉が流行っているみたいだから自分もやっている」という感じだったと思うんですよね。眉を整えるのがブームだからとりあえずやってみるというレベルで、なりたい自分になるためというところに達していなかったのではないでしょうか。

 

「男性版顔立ちマップ」は言い換えれば、地図のようなものです。自分の現在地と目的地がわかっていないといつまでも目的地に着くことができません。かっこいいと言われている人の真似をして、魅力的になる場合もあるかもしれませんが、元々の顔の要素は人それぞれですから、なかなか思い通りにならないものなのです。

 

「男性版顔立ちマップ」はその人に合ったメイクをする上での根幹の考え方になるものだと私は考えています。私たちも「男性版顔立ちマップ」を用いて、眉や肌のメイクの考え方について発信していきますし、他社さんや美容業に携わる皆さんからも「男性版顔立ちマップ」を応用した情報発信が行われると思います。そうやってメンズ美容が盛り上がれば本望です。今は男性が化粧水や乳液を使うのも当たり前の時代ですから、「男性版顔立ちマップ」をきっかけに、男性の行動が変わることも不可能ではないと思っています。

 

>「男性版顔立ちマップ」を参考に眉カットにトライしてほしい

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