「鏡のない美容室」を目指して。世界一周をした美容師が描き出す、理想のサロンの形 ―「RAVENALA」宇高俊晃さん

店を訪れるのは、“髪を切る”という理由でなくてもいい。「美容室らしくない美容室」を作って…。

 

 

帰国後は、どこか拠点を決めて、その地に根を生やしたいと自然に思え「自分の店を持ちたい」という夢を叶えることにしました。

 

サロンを辞めてから3年も経っていたので、勤めていた当時のお客さまは離れてしまっているだろうと考えていました。しかし予想外にも「日本に帰ってきたなら髪の毛を切ってよ」と言ってくれる昔のお客さまがたくさんいてくれて。以前勤めていた京都にお客さまが多かったこと、また僕自身も京都はすごく好きな場所だったので、京都での出店を決めました。

 

店のコンセプトは特に決めていません。あえて言うなら「美容室らしくない美容室」。美容室が苦手な人も足を運びやすい場所でありたい、という思いでやっています。テイクアウトのカフェも併設しているのですが、それも美容室の閉鎖的なイメージを払拭したかったから。街行く人たちがふと足を止めて立ち寄ってくれるような、髪の毛を切るという目的でなくても自然と足が向くような店にしたいと思って作りました。

 

そもそも“サロン”とは「人が集まる場所」という意味。デザインを売る場というよりも、人を繋げる場所でありたいんです。

 

仕事と旅、どちらも諦めない人生が理想

 

 

「RAVENALA」には鏡を置いています。日本で店舗を構える上では、鏡は外せません。ただ実際に鏡があるかどうかという物質的な問題ではなく、心の在り方はいつだって、『鏡のない美容室』でありたいと思っています。

 

僕の人生のメインテーマは“旅”。僕は心置きなく旅に行ける美容室にしたいと思っています。理想は1年間働いたら1ヵ月休むということをやってのけられる美容室。仕事を辞めないと旅に出られないという働き方がいやなんです。海外にはそんな自由度の高い生活がまかり通る国や社会の風潮もあるけれど、日本でそれを実現するのはハードルが高いんですよね。

 

そしてこの理想はお客さまとの信頼なくして実現できません。そういう意味でもただの「美容師と客」という関係ではなく、そこからさらにお互い踏み込んで深い信頼を築いていきたいと思っています。

 

僕は人生を豊かにするということに重きを置いた働き方がしたい。そこに集まってくれるお客さまやスタッフなどの周りの人たちが同じように幸せに、そして豊かになってくれるような、そんな店でありたいんです。「何か大きなことをしたい」というより、自分の手の届く範囲が豊かであってほしい。それが僕に合った生き方、働き方なんです。

 

 

プロフィール
RAVENALA
オーナー/宇高俊晃(うだかとしてる)

京都での9年間の美容室勤務を経て、29歳で長年の夢だった世界一周へと旅立つ。2年8ヵ月で47ヵ国を訪れ、各地でさまざまな人や文化と出会いながら、旅中に約150人もの髪をカット。帰国後2017年6月、京都市左京区にカフェスタンドを併設したサロン「RAVENALA」をオープン。店名は“旅人の木”という植物名に由来する。

 

(取材・文/鈴木美奈子 撮影/秋月武)

 

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