【舞台に立つたび、技術が覚醒する】ADITIONいさなが振り返る。ヘアショーが技術を「芸術」に変える瞬間
ヘアショーが解き放った、潜在力

―大勢の観客を前にステージ上でヘアカットを披露するのは、相当な度胸が求められることだと思います。そうしたステージでの経験は、どんな形で自身の力になっているのでしょうか?
サロンでの施術は鏡を見ながら慎重に進めますが、舞台では観客からの距離があり、鏡もありません。この「鏡がない状況」って、モデルさんだけに集中できるんですよ。鏡を見てチェックするというプロセスが減ることは、視点が減るということ。アンテナが3〜4個減るみたいな感覚があるんです。だから、逆に自分の視点だけに一点集中できるし、研ぎ澄まされた感覚が生まれるんですね。これは何度かステージに立って切らせてもらいながら気づいた感覚です。
この経験はコンテストにも直結すると思っていて。ヘアショー経験を通して、もっともっと表現者としてのプライドを持って、新しいことに挑戦したくなりました。これまで何度か審査する立場にも立たせてもらいましたが、あえてヘアコンテストに自分がエントリーして、向こう側に立って自分を奮い立たせたいんです。

―審査する側からあえてチャレンジャー側へ回るという姿勢が、まさに“表現者のプライド”だと感じました。
では、そうした新しい挑戦をする上で、これからどんなコンテストに挑んでいきたいと考えていますか?
これまでADITIONとしては、そういったコンテストに積極的に取り組んできませんでしたし、文化として根付いていなかった部分もあります。だからこそ、自分が先陣を切ってチャレンジすることで、サロン全体として新しい流れをつくりたいんです。
ヘアショーで得た経験は、間違いなく技術コンテストやフォトコンテストにも活かせると思っています。限られた条件の中で「なにを捨て、なにを見せるか」を瞬時に判断する力、鏡がない環境でもモデルさんだけに集中して仕上げまで持っていく力、あの感覚は写真づくりにも直結すると思うんです。
それに自分の表現の軸をあらためて見直すいい機会だと感じています。ヘアショーという“ライブ感覚”で培ってきた自信と集中力が、写真という“静”の表現でどこまで通用するのか。結果がどうであれ、まずは本気で向き合う覚悟です。

- プロフィール
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いさな
ADITION 渋谷 (アディション)代表
大阪府出身。神戸ベルェベル美容専門学校卒業後、ADITIONに入社。入社後すぐに類稀なセンスで頭角を表し、ADITION史上最速でトッププレイヤーの仲間入りを果たす。リクエストQJの恒例目玉企画「好きな美容師ランキング」 において2024年はトップに輝く。2025年度はヘアショー出演をはじめ、美容業界誌オールメディア掲載も制覇。現場での経験をまとめた初の著書「推しの時代の推される技術 ISANA brand」(髪書房)も話題に。
Instagram:@__07hria
(文/リクエストQJ 撮影/松林真幸 MIKAN inc)