中村トメ吉さん。ヘアライター佐藤友美がみた”美容師列伝” 最終回「革命を起こす人」

時代は若者が作る

 

トメ吉さんは、取材でこんなことを語ってくれた。

 

時代を作るのは若者です。

美容業界の若手も、若いお客さまたちも、冷めた世代なんかじゃない。

大人たちが、彼らの夢を鼻で笑って潰そうとするから、彼らは自分の想いを語らなくなっただけなんです。

彼らに好きにさせてみてください。

今の大人たちよりもよっぽど、熱量もあるし、やる気もある。

 

目をキラッキラさせて語るトメ吉さんを見ていて、正直、恥ずかしくなりました。スミマセン……。私もその「ダメ」な大人の一人だ、って思って。私もそこそこピュアに仕事をしていると思っていたんだけれど、もう、純度が全然違った。

 

スタッフ一人一人が登りたい山を登らせる。

やらせるよりやりたくさせる環境を作る。

若手が全力で走れるために、障害をなくすのがトップのつとめ。

 

トメ吉さんが語るOCEANの教育の根幹を知った後に、私はOCEANのサロンワークに密着させていただきました。

そこで感じたのは、OCEANってなんだか、シリコンバレーの会社の空気に近いってこと。

 

昨年、たまたまシリコンバレーに取材に行き、Googleや、Facebook、Twitterなどの創業期を知っている人たちと話す機会があったのだけれど、上下のヒエラルキー関係なく、新しい発想がどんどん生まれてくるOCEANの会社風土は、シリコンバレーのスタートアップの空気にとても似ている。そう感じました。

 

そして、思いました。

ああ、これは、革命が起きる。って。

 

この一年間、毎月トメ吉さんと会って、OCEANの今について話を聞いてきました。ベンチャー企業らしく、一ヶ月会わなかっただけでも、話は前に進み、スタッフさんたちは爆速で成長をされていました。

それらの成長の裏側に、どういった教育があるのか、つぶさに聞いてきました。その、トメ吉さんの教育スピリッツを一冊にまとめたのが、3月8日に発売になる『若手を動かせ』です。

 

ちょうど、この原稿を書いている今、『若手を動かせ』の書籍の情報が解禁になったので、Twitterでトメ吉さんへの想いを綴るOCEANのみなさんの熱いコメントがタイムラインに嵐のように流れています。

 

「永遠の師匠。『中村トメ吉』という美容師に憧れ、兵庫から東京へ出てきた。僕も心を動かされた若者の1人だった」

「一人一人スタッフを大切にして、言動や生き様に毎日毎日心を動かされる。それがうちの社長、中村トメ吉」

「中村トメ吉は【灯台】のような存在。僕らが進む先で迷わないように、確かな道を一番の光で示す。だから僕らは自信を持って進めるんです」

「壁にぶち当たった時、いつも助言をくれたのは……中村代表でした」

「常に『誰かのため』と自分のことより周りのことを考えている中村さんの想い。この本を読めば中村さんの頭の中を覗くことができるかも……」

「この人以外尊敬した人はいません。出会ってなかったら美容師になっていない。僕の人生を変えた人」

 

これら、スタッフさんのコメントのほんのほんの30分の1程度です。こんなにも熱いメッセージを、スタッフさんからもらえる経営者の方ってどれだけいるだろう。

 

中には、それまでのサロンでは芽が出なかった若手もいるし、大学を卒業後にOCEANを目指したスタッフさんもいるそうだ。

熱く燃えるOCEANの若いスタッフさんの言葉を聞いていると「最近の若者は冷めているし、やる気もない」と感じるならば、それは単に自分が信用されていないというだけのことなんだなと思わされる。

 

 

OCEANの絶対的エース、共同経営者の高木琢也さんのコメントにも、トメ吉さんが、OCEANでなしてきたことを垣間見ることができる。

「ちっぽけだった俺が今日本一の美容師になれたのも相方が開花させてくれたから今の自分がいます。トメは自分でも気づかない一人一人の魅力を発見し、引き出してくれる。背中を押して、波に乗せてくれる。成功へ導いてくれる男です」

 

今、日本で最も憧れられている高木さんでさえも、やはり、トメ吉さんがその才能を開花させてくれたと語っているのだということに、胸が熱くなります。

 

人の心を動かし、人を熱くし、人の背中を押す。

若手を信じ、若手を動かし、若い世代で、新しい時代を作っていく。

 

トメ吉さんとOCEANの挑戦は、美容業界を超えて、日本の新しい時代のチャレンジになっていくんじゃないか。そんなことを思っています。

 

(終わり)

 

 

「美容師列伝」連載を終えて

 

トメ吉さんと一緒に『若手を動かせ』という書籍を作っている間、美容業界のこれからってどう変わっていくのだろうと、ずっと考えてきました。それと私自身、これから美容業界とどう関わっていけばいいだろうと、ずっと考えていました。

私はもう若手ではないけれど、トメ吉さんと一緒にいると、私もやはり、自分の中の熱がふつふつ沸いてくるのを感じるのです。

 

トメ吉さんと出会って、決めたことが二つあります。

 

一つは、この連載を終了してもらおうと思ったこと。

連載スタート時とは事情が変わり、今は美容業界から少し距離を置いた私が、こんなにもまっすぐ現場と向き合っている美容師さんの「今」について、何かを語るのはやめようと思いました。

トメ吉さんのいうような、言葉だけでさもわかったふうに物を言う大人にはなりたくないし、何かものを言うならば、同じだけ汗をかいて現場に立って物を言おうと思いました。

と、いうこと。

 

あともう一つは、私、もう一度美容業界に戻ろう。そう思いました。撮影現場に立つのはやめ、これからは活字だけで生きていきますと宣言して3年経ちましたが、撤回します。もう一度、美容業界で、影響力のあるビジュアル作りに関わろうと思いました。

それは、これから先も、トメ吉さんをはじめとする、美容業界の若い革命者たちが起こす革命の目撃者になりたいから。彼らの仕事を最前列で応援したいから。トメ吉さんと出会ってから、美容業界に関係するいくつかの企画を持ち込みました。

もう一度、現場に戻らせてください。

 

21回にわたる連載の間、たくさんの感想をいただきました。次は僕を取り上げてくださいという立候補もたくさんいただきました。本当に、ありがとうございます。

美容の最前線の現場に戻って、私にまた、皆さんの仕事を語る資格が持てたと思ったら。

 

その時は。

 

私が心から愛して尊敬する美容師さんの仕事について、生き様について。また、書かせていただきたいと思います。

 

QJナビの皆さん、企画を打診くださった編集者の桑名さん、そして筆の遅い私の原稿をいつも優しく待ってくださった担当編集者の池谷さん。ありがとうございました。

 

佐藤友美

 

 

-Profile-

 

OCEAN TOKYO

代表取締役/中村 トメ吉(なかむら とめきち)

1984年、栃木県生まれ。都内の美容専門学校を卒業後、25歳で都内有名店の店長に就任。就任後「店舗売上」を2倍に、メンズ雑誌の「行きたいサロンランキング」1位、「スタイルランキング」年間1位と実績を積み、人気サロンへと押し上げた。2013年に高木琢也氏と共同経営でOCEAN TOKYOを立ち上げ、前店の同僚だった三科光平氏を加えた3人で有名店に成長させる。サロンの経営・プロデュース・戦略・マネジメント・人事など「経営部門」を主に担う。

平均年齢23.8歳の若手集団で次々と美容業界のレコードを塗り替えてきたその人材マネジメントが美容業界を超えて話題になり、この3月8日に、ビジネス書『若手を動かせ』(枻出版)を刊行する。

 

文・佐藤友美

 

 

日本初、かつ唯一のヘアライター&エディター。MINXの故鈴木三枝子さんについて関係者191名に取材してまとめた最新著作『道を継ぐ』が、美容業界を超えて話題になった。また、『女の運命は髪で変わる』(サンマーク出版)は、NHK「あさイチ」でも特集され、7万部の大ヒットに。「美容業界と一般のお客さまの橋渡しになる」ことをミッションに、数々の企画を担当する。

 

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