内田聡一郎のsoucutsラジオ vol.7 石の上にも3年どころか10年が結局強い

 

東京渋谷の美容室LECOのオーナー、内田聡一郎さんが若手美容師や美容学校生に向けて発信するsoucutsラジオ。サロンワーク、クリエティブ、経営、教育、ファッション、DJとマルチに活躍し、さまざまなことに出会ってきた内田さんだからこそのリアルでハッとさせられるトークが展開されています。若手美容師、美容学生をはじめ、ベテランスタイリストやオーナーなど、どのフェーズの人にも、きっと「気づき」があるコンテンツです。第7回のテーマは「石の上にも3年どころか10年が結局強い」。多動力や副業などの言葉に惹かれやすいあなたに読んでいただきたいメッセージです。

 


 

大御所のカットを見て「あ、やっぱりかなわないな」と思った

 

今日お話ししたいのは、“生温く多動しているやつは売れない”っていうちょっと過激なテーマです。というのも最近そう思うことがあったのでボイスメモとして残しておきたいと思います。

 

先週ですね美容専門誌の取材があったんです。六本木にあるスタジオでですね、30代から40代くらいの技術を売りにしている美容師さんが集められて、Doubleの山下さんのカット講習が開催されました。これは本当にクローズドな会で、媒体さんのご厚意で、実現したことです。そんな特別な場で、痛烈に感じたことがありました。

 

結論から言わせてもらうと、山下さんのカットがめちゃくちゃ上手かったんですよね。もう本当にぐうの音も出ないくらい。やっぱり、業界を牽引して20年以上、年齢は60歳近くになるのかな。その技術を見たときに「あ、やっぱりかなわないな」って思ったわけですよ。

 

僕も40歳になり、第一線でやっている美容師としてそれなりに技術をやってきた自負もあるし、センスの面でも積み重ねてきたものがあると思っています。でも、山下さんを前にして、力不足を感じました。

 

「一つのことを突き詰めろ!」という強烈な揺り戻しがくる予感

 

それでね、家に帰ってぼーっと考えていたんです。今は多動力とか、多様性とか、副業してみようとか、ダブルインカム大事だよねとか、自分の個性を生かして、自分の本業とは別のことにも目を向けてみようとか言われていますよね。複数の窓口をつくって余裕のある生活をしていこうとか。実際、ここ1、2年で、多様性がある美容師さんが圧倒的に増えてきていると思うし、働き方についても週休2日もあるし、3日休めるところもあるかもしれない。ライフワークバランスが改めて謳われているし、僕も全然そのことに対して否定する気は無いんですけど。

 

そんな中、石の上にも3年って言葉が思い浮かんだんですけど、多動に傾いていた世の中の強烈な揺り戻しが2020年にくるんじゃないかと思っていて。というのも、僕はどちらかというと多動力がある美容師だと見られてきたと思います。もちろん美容師は真面目にやっていたけれど、いろんなコミュニティやダブルインカム的なものもある。そこが評価されていた部分もあると思うんです。

 

まず圧倒的に技術と向き合い、絶対的な力を養え!

 

でもその一方で、美容師って技術あってこそだし、圧倒的な説得力や探究心、相手を抱擁する力がないと結局売れなくなってしまうし、仕事もこなくなるなと思ったんですよ。で、山下さんの間近でベーシックなシザーのカットとレザーのカットを見せていただいたんですけれど、やっぱりしっかりとした自分の軸があるんですよね。自分なりのベーシック、理論がある。

 

僕らみたいな流派の違う人間に対しても、見るものが納得をせざるを得ない正確な技術を披露してくれました。自分の既成概念を一度壊してもいいなと思えるくらい、圧倒的な説得力のある技術をまざまざと見せつけられたんですよ。

 

山下さんが、本当にカットが好きで、探究してきて、原点をブラさずに何十年もやってきたその先にある絶対的な力だなと思いました。この力は未来永劫崩れないし、それが仕事を生んでいるし、ビジネスを生んでいると思ったんですよね。

 

多動的に動くことを僕は全然否定しないし、むしろ自分は第一線でやってきた人だと思っています。でも、やっぱり最後は、石の上にも3年どころか10年、それ以上続く人がやっぱり強いなって思ったんです

 

これを聴いてくれている美容専門学校生には、2年間でどこまで自分に厳しく、どこまで自分と向き合えるか考えてほしい。新人さんなら20代の今から30代を見据えてどこまで自分に厳しくできるか考えてほしい。人並みに頑張っているんじゃなくて、圧倒的に、血反吐を出すくらいに頑張れば、そのさきに確かな技術と、技術力に支えられたビジネス力がつく。これらの力は本当に裏切らないと思います。

 

「めちゃくちゃ古いよ」「ブラックだよ」っていうご批判上等

 

じっくり、じっくり一つの武器と向き合う。寝ても覚めてもそのことだけを考える。これってもうめちゃくちゃ古いよって思われている時代じゃないですか。そういうことを言っている人はブラックだよねって。でもね、ブラック上等ですよ。これはね、本当に大事なことなので。

 

なんか今日は最後のほう熱くなっちゃったんだけど、俺自身もなんか盲目になりかけていたなと気付かされました。自分がオーナーになったとき、どう間口を広げていくか考えましたが、やっぱり山下さんの純粋な探究心とか技術、説得力を目の前にして、なんてちっぽけなことを俺は考えていたんだって実感しました。

 

石の上にも3年、美容師で言ったら、デビューが2年でできるとか、3年でできるとかそういうことが大事なんじゃなくて、10年、20年続けて、技術力を育んでいくことを考えてほしい。古くて最高、ブラック最高ということで、今日も古い思想のSOUCUTSこと内田聡一郎がお届けしました。

 

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プロフィール
LECO代表 内田聡一郎(うちだ そういちろう)

2003年より原宿のサロンでトップディレクターとしてサロンワークをはじめ、一般誌、業界誌、セミナー、ヘアショー、著名人のヘアメイク、商品開発など様々な分野で活躍。
2018年 渋谷にLECOをオープン、2020年 セカンドブランドQUQUをオープン。代表として今後一層の活躍が期待されている。著書「自分の見つけ方」(2013年)、「内田流+αカット」(2017年)、「内田本」(2018年)を発売。また、シザーやシザーケースなどのオリジナルプロダクトも発売中。
2019年12月から若手美容師にエールを送るsoucutsラジオを始動。

【twitter 】@soucuts
https://twitter.com/soucuts
【instagram】@soucuts
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