ヘルニアや手荒れ、腱鞘炎で労災は降りる? 美容師が労災保険で知っておくべきこと

申請しても会社に迷惑はかからない! 美容師にありがちな労災の誤解とは?

 

 

本来、会社は人を雇っているのであれば、労災への加入は義務です。しかし、美容室が労災保険に加入していないケースも見受けられます。「いくら美容師に知識があっても、会社が労災に入っていなければ補償を受けられないのでは?」と思う人もいるかもしれません。しかし、榊さんによれば「労災保険は会社が未加入でも労働者本人は補償を受けられる」とのこと。労災保険は、労働者を守るための保険なので、会社の落ち度で労働者が補償を受けられないことがあってはならないと国は考えているためです。労災について誤解しやすい注意点をチェックしていきましょう。

 

1:労災を申請すると、会社に迷惑がかかるのでは?

 

「労災の補償金は国から支給されるため、美容室が負担するわけではありません。そのため、補償を受けたからといって、会社に金銭的な迷惑がかかることはありません」(榊さん)

 

 

2:労災を受けて休んでいる期間に、解雇されたり退職を促されたりしないか心配

 

「労災で休んでいる期間と、復帰後30日以内に解雇することは法律で禁止されています。仮に解雇されそうになった場合は、この点を主張してみましょう」(榊さん)

 

 

3:オーナーが認めないと、労災の申請はできない?

 

「労災は、会社の証明を受けるのが原則です。しかし、事情があって受けられない場合は従業員のみでも申請可能です。手続きが少しややこしくなりますが、受けられる補償を考えると、必要に応じ、労働基準監督署の窓口などで助言も受けながら、申請したほうがいいでしょう」(榊さん)

 

 

会社が労災に未加入だった! 労災に入ってもらうためのアプローチ方法

 

 

万が一のとき、労災認定されれば金銭的な負担も軽くなります。そのため勤務先で怪我をしたら、自分のためにもまず労災の申請をしてみるべき。しかし、働いている美容室が労災に入っていないとき、スタッフはどうしたらいいのでしょう?

 

――先ほど、労災に加入していない美容室もあると聞きました。その場合は、どのように対処すればいいですか?

 

まずは率直に、会社に労災に入ってもらえないか打診してみましょう。労災保険の保険料は賃金の0.3%。社会保険などと違って金銭的な負担も大きくありません。

 

直接伝えるのが難しい場合は、労基署に匿名で相談すれば、指導してもらうこともできますが、行政指導があった場合、美容室には過去の保険料が請求されたり、延滞金の支払いを命じられたりする可能性があります。しかし、指導が入る前に自ら加入を申請した場合は、過去の保険料や延滞金を命じられる可能性は少ないので、会社は指導を受ける前に入るほうが得策と言えます。

 

そのことを合わせて伝えることで、加入を考えてくれるオーナーは多いのではないでしょうか。

 

――それでも加入してもらえないときはどうすればいいでしょうか?

 

かたくなに加入を拒む場合は、きちんと労災保険に加入している美容室へ転職を考えるのも一つの手。労災保険に加入しているかどうかは、厚生労働省のサイト内「労働保険適用事業所検索」で調べることができます。

>>労働保険適用事業所検索はこちら。

 

――会社が加入してなくても個人で申請できるなら、加入を打診する必要はないのでは?

 

確かに、美容室が労災保険に加入していなくても美容師は補償を受けられます。しかし、加入していたほうが申請の手続きなどがスムーズ。病気や怪我で身体が思うように動かないときに、無駄な労力を使うのは辛いですよね。なので、できることなら加入してもらうよう、お願いしてみることをおすすめします。

 

 

<まとめ>

 

いざというときの生命線となる労災保険。ぜひこんな制度があることを覚えて、万が一のときに活用できるようにしてくださいね!

 

 

プロフィール
ポライト社会保険労務士法人
特定社会保険労務士・CFP/榊祐葵(さかきゆうき)

東京都立大学法学部卒業。上場企業の海外事業室、経営企画室に約8年間勤務。独立後、ポライト社会保険労務士法人を設立し、マネージング・パートナーに就任。現在は同社で会社員時代の経験も生かしながら、経営分析に強い社労士として顧問先を支援。さらにメディアでの執筆活動にも従事している。

 

(取材・文/小沼理 撮影/河合信幸)

 

 

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