Uターン後の未来/都会での経験を生かして地元で花咲くサロンづくり

CASE2:実家サロンの3代目としてUターン。『hull』濱田健太さん

 

DSC_0025

 

[濱田健太さんのUターンプロフィール]

兵庫県神戸市・元町のサロンに勤めた後、2007年に、創業70年の実家サロン『ミスターハマ』を継ぐために兵庫県高砂市にUターン。3年後にサロン名を改名し、創業者である祖母の名前の『hull(ハル)』に。現在サロン2階でカフェ「はま茶」も営む。

 

スタイル以上に人ありき! 地域に信頼される存在に。

 

-実家サロンを継ぐのは美容師になった頃から決まっていたのですか?

 

継ぐつもりはまったくありませんでした。高校生の頃から将来は高砂には帰らないと決めていたくらいです。元町のサロンで働いているときに父から帰ってくるように言われて、帰る決意をするまでに1年かかりました。元町で美容師としての自分の世界をつくり上げている最中だったのでかなり迷いましたが、地元でそれをつくれればと自分の気持ちを切り替えていきました。

 

とはいえ戻ってから3年くらいは、元町に帰りたくて仕方がなかったです。高砂の街は何世代も住み続けるような地元愛ある土地。でも帰ってみると子どもの頃より圧倒的に若い人が減っていましたし、スタッフの仕事に対する価値観もそれまでいた場所とはずいぶん違いました。僕が戻って1ヵ月でスタッフの半分が辞めてしまいました。

 

-そのような状況でどうやって、ご自分が中心となって引っ張るサロンをつくり上げていったのですか?

 

行動自体は帰った直後からし始めました。サロンを全面リニューアルし、カフェを併設しました。髪を切る用事以外でもサロンにきてもらいたいというのは、元町にいた頃から考えていたことなのですが、プライベートで出会ったアーティストたちの作品をサロンに展示したりしていたんです。同じように高砂のサロンでもリニューアルオープン時から彼らの作品を飾らせてもらったり、作品を販売し、ライブを行ってもらう「月曜市」というイベントを年2回行ったりしはじめました。

 

はじめは僕1人での取り組みでしたが、そういうことをやっているうちに店の新たなブランディングが出来上がってきたし、スタッフの中でも反応する子が出てきたり、働きたいと言ってくれる子がきたりするようになりました。

 

14956382_574302026027786_2978970119158760665_n

「月曜市」は今年の6月で17回目(9年目)。「何でも回数を重ねることが大事」と濱田さん。

 

-サロン名も変えたのですよね。コンセプトや売りも、継ぐ前のものから変えたのでしょうか。

 

もともとのサロン名は「ミスターハマ」といって、男性専門としてスタートしたサロンだったんです。でもカフェを併設し、女性のお客さまもきてくださるようになって、どうしても「ミスター」をとりたかった。そこで戻って3年後、サロンの今後の見通しが立った頃に、創業者である祖母の名前をとって「hull」としました。

 

「街の顔を目指す」。大きすぎるかもしれませんが、これが「hull」のコンセプトです。

 

僕らの店があることで地域に人を呼べるようになったらいいなと考えています。お客さまのターゲットは住んでいる人全員。その中でもおしゃれな人を集めよう。そういう気持ちでやっています。僕が戻った当初はいわゆるヤンキーっぽいお客さまが多かったので、かなり客層も変わりましたね。

 

-新しい客層の集客はどのようにしたのでしょうか?

 

メディア上で具体的なヘアスタイルを提案すると、どうしてもテイストや年代が偏ってしまい、「住んでいる人全員」というターゲットが伝えられません。そこでメディアではヘアスタイルを一切発信せず、イラストを使ってサロンの雰囲気を伝えることを目指しました。

 

今年になってからは「親子hull」をテーマに、2人以上でご来店されたお客さまの写真を撮影して発信させてもらっています。2世代、3世代やご夫婦でこられるお客さまが多いので、ヘアを見せるというよりも、お客さまを紹介させていただいているという感覚です。

 

-都会と地元では求められる美容師像が違いましたか?

 

そう感じています。元町にいた頃はどれだけ雑誌のカバーを飾れるか、ヘアスタイルが勝負でしたが、ここでは「どんな人か」というほうがより大切。住宅地の美容室ですから、どこにいってもお客さまがいらっしゃるんですよね。だからまずは地域に信頼されていないとダメなんです。父からは損得関係なく、美容に関係なくても何かを頼まれたら断らないこと、と教えられました。

 

今では歴史ある街の祭りでヘア&メイクの担当サロンに選んでいただいたり、小学校の職業体験に呼んでいただいたり、行政に関わらせていただいたりと、断らなかったからこそ、頼っていただける存在になりつつあるのかな、と。馴染むまで時間はかかりましたが10年やってきて、こういう方法でこそサロンのブランド力が高まっていくというのを実感しています。もうこの土地を離れることはないでしょうね。

 

14993562_574300339361288_6372861143641299330_n

 

 >CASE3:妻の地元にUターンした美容師夫婦。『Mille』TOMOさん

 

Related Contents 関連コンテンツ

Guidance 転職ガイド

Ranking ランキング