「目立つことが大好きだった」ALBUM NOBUさんのこれまで

指名客を増やした

独自の営業

 

 

 都内有名店を辞めた後、NOBUは大阪に戻った。半年で辞めた理由は「人から教わって、言われたとおりのことを納得せずに行うことが何よりも苦手だったから」だ。いわゆる下積みは自分には無理だと考え、いきなり独立を計画。借金をして物件を仮契約したが、周囲の人から「もう少し経験を積んでからでもいいのでは」と言われ、思い留まった。そして、大阪で勢いのあるサロンで働き始める。

 サロンワークで目立つために、何はともあれ「売り上げナンバー1」を目指した。それに加え、指名客の数でも1位を狙った。そこでNOBUは、サロンの界隈にあるアパレルのショップや一般企業などに飛び込み営業をしまくった。「サロンから『営業しろ』と言われていたわけではありません。当時、新規のお客さまが次々と来店していて、集客には困っていなかった。ただ、自分を指名してくれるお客さまを増やしたかったんです。そうすれば自ずと売上げも伸びますからね」

 独自の営業により、読者モデルも数多く担当していた。

 「時間を見つけてモデルハントもしていました。大学の近くや飲食店など若い女性が集まる場所でキラッと光る女の子をハントできたら、女性誌の編集者にも紹介するんです。それがきっかけで読者モデルになる人も少なくなかった。だから、僕を指名してくれる読者モデルがたくさんいたんです」

 その結果、NOBUは売り上げ、指名客数ともに1位となった。そんなNOBUを「面白い!」と認めてくれる幹部もいたが、「お前の集客方法はおかしい」と否定する人もいた。

 認めてもらえない怒りを抱え込み、3年ほどで退職。そしてNOBUは大阪の別のサロンと縁あって、プロデュースを任されることに。

 「これまで1人でやれることはやってきた。次に店自体を発展させるなら、『僕』をたくさんつくったほうが早い、と。それに以前の職場を見返したいという気持ちもありましたね(笑)。肉食系なスタッフばかりを集めて、夜は毎日のように一緒に飲みに行きました。大名行列のようにスタッフと練り歩き、スタッフの顔を売っていくのが狙いでした」

 その結果、集客力においては、一目置かれる人気サロンとして頭角を現す。また大阪の美容師は当時、「大阪で1番売り上げを持っているのはNOBUだ」と、みな口を揃えるほどの不動の地位を確立した。

 さらにトントン拍子でサロンの東京進出が決まる。

 「モデルを連れて雑誌撮影の仕事のため、たびたび東京へ行っていたんです。撮影現場で同じ世代の美容師たちが東京で活躍しているのを見て、『スターやわ〜』と思った。やっぱり憧れの東京で勝負をかけたい! 今の実力なら東京でも通用するという確信もありました」

 ちょうどその頃、大阪にいた読者モデルも上京。「おしゃPブーム」の中心的存在の読者モデルのほとんどが、NOBUの顧客だった。読者モデルの撮影があると、NOBUはヘア・メイクとして呼ばれるようになる。雑誌やファッションショーなど社外での仕事が急激に増加。東京でもNOBUの存在感が着々と高まっていった。

 

 

ルールは誰かが決めたもの。

違和感があれば、

自分なりのルールをつくればいいい。

 

 

時代に則した

新たな働き方

 

 

 NOBUは、2014年から「アルバム」のプロデューサーに就任。アルバムは、業務委託契約を主とするサロンだ。現在、業務委託で働くスタッフは約7割で、都内に5店舗。NOBUは社員として、新宿店に勤務している。

  「決め手は、業務委託の在り方自体を変えてやろうって思ったこと。とにかく稼げる店になれば、働く人の考え方も変わる! 稼ぎたい人がとことん稼げるサロンに変えてしまおう、と」

 アルバムの経営者は美容師ではない。そのため、サロンの運営はNOBUをはじめとするプロデューサーや店長に一任される。一方で本社の管理部が個人の売り上げの推移や分析結果をもとに、ホットペッパーやインターネットでの集客プロモーションを仕掛けている。その一つがインスタグラムを活用したマーケティングだ。フォロワーを増やすためのノウハウも蓄積しており、美容業界ではトップクラスのフォロワー数を誇る。

 「社長と初めて会ったとき、『これからITの力で美容業界を変えていきたい』と話していたことを思い出します。現場でつかんだトレンドが、次々とネット配信されていく。ヘア写真の発信にしても、コンピューターによる緻密な計算のもとで行っているので、大きな反響が確実にかえってくる。管理部はまさにアルバムの心臓部。僕がこれまで時間をかけてやってきたことは何だったんだろうと思うくらい、ITの技術を使えば一瞬でできてしまうんです」

 これまでの人海戦術は、『かつて』の方法論。時代に則した方法があり、それが今はネットなのだ。

 「美容師じゃない人と仕事をするのは初めてなのですが、畑違いだからこそ尊敬し合える。社長や管理部ともいい関係が保てています」

 現在のNOBUの夢は、アルバムの経営母体を上場させること。そして技術やデザインの分野において、「すごい、うまい!」とお客さまはもちろん、より多くの美容師たちに認められることだ。

 「これからは個人としてのブランド力をつけ、個々が発信していく時代。今、生きているのなら、何か爪痕を残したい。自己流でいいから何か新しいことを作りたい。アルバムの面白さは時代の変化に対応し、トレンドを牽引していく環境が整っていること。今、アルバムからどんどん新しいスター美容師たちが生まれています。そんな彼らの才能を発掘し、輝ける場所を作っていくことがプロデューサーとしての自分の使命だと考えています」

 

プロフィール
NOBU
ALBUM プロデューサー

大阪府出身。ル・トーア東亜美容専門学校卒業。大阪と東京のサロンで経験を積み、2014年よりアルバムのプロデューサーとして活躍。美容学校生の頃から既存のルールにとらわれず、独自の手法で技術を高め、売り上げ、集客ともに伸ばしてきた実力者。サロンワークのほか、雑誌の撮影やショーのヘア・メイクの仕事も数多くこなしている。インスタグラムのフォロワーは13万5千人。

 

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(このインタビューは、2017年12月号 THE GENERATION next に掲載されました)

 

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