ANTI小松利幸さんのびよう道 〜「ガーン…!!」と頭の中で銅鑼(ドラ)が鳴ったあの瞬間から、「パーマを極める人生」が始まった〜 びよう道 vol.30

カバンに3冊常備するほどの漫画好きが、漫画から卒業した日

 

 

話変わって「頭にガーン!」事件と同じ頃のエピソードです。休憩時間のスタッフルームで昼食をしながら大好きな漫画本を何冊か積み上げて読んでいるところに、オーナーが入ってきて「面白い?」と唐突に聞かれました。何がどれだけ面白いかを慌てて説明し終わると「小松くんはどんな美容師になりたいの?」と。「先生みたいな美容師です」と胸を張って言うと、漫画ではなくフランスのファッション誌を見るようにと優しく諭されました。こうして僕は、漫画から卒業したのです。

 

僕のカバンの中にはいつも漫画が3冊は入っているくらいの漫画好きでしたが、次の日から当時はバカみたいに高いファッション系洋書のファッション、メイク、ヘアースタイルを目に焼き付けるように見続けるようにしたのです。月に1冊しか買えないので何時間もかけて選び、素敵だなと思ったヘアースタイルをパーツで分けてスケッチして毛流れや動きをイメージしました。

 

 

ファッション情報に積極的に触れて自分のデザインへの思いの浅さに気づき、最新の洋書を読めば読むほど、自分のデザインへの思いの浅さに気づきました。当時日本のファッション誌は、週替わりでトレンドを発信しており、ファッションシーンが刻々と進化していることを肌で実感しました。「自転車に乗ってカシミアセーターを腰に巻き日曜日の銀座でブランチを楽しむのがお洒落!」4月号のバカ売れファッション誌は、こんなキャッチコピーでした。

 

「先生、自転車に乗って日曜日の銀座でブランチをするのにカシミアのセーターを腰に巻くのって…お洒落なんですか?」と尋ねると、「春先にどこから自転車で銀座に来るかわからないけど…まず、自転車で銀座に来られる距離。そしてアクセサリーのように腰に巻くのは上質なカシミヤ素材のセーター。最後にランチではなく日曜日だからブランチ。日曜日の朝をゆっくりとした時間を過ごし、少し早めの昼食を銀座のオープンテラスのレストランで。ということがお洒落ということだね。」と説明してくれたのです。

 

「なるほど確かに! 今まではそんな風に考えて雑誌をみたことがなかった。言葉、行動、表現する物事、全ての意味を考え感じられるようにしよう、何事にも意味があるんだ」と気づきました。

 

美容師として認められたとしてもそこで安心したら成長は止まる

 

 

周りから一人前になったと認められることは、美容師としての励みになります。お客さまに喜んでもらえたとき、ひと月に30誌から撮影の依頼を受けたときなど、自分が求められる美容師であることに感謝しました。一方で、自分自身が美容師として一人前である。自分は十分に仕事ができていると思って安心してしまうと、自らの可能性や成長を止めてしまいます。成長を止めないために、そして日々もっといいデザインを作るために、今より3カ月後、今年より来年、と本物を目指し精進する事が必要です。

 

一つずつ積み上げて結果を出せるまでにはいろんな試行錯誤をし、時折立ち止まり振り返り間違っていないか、最善なのかを確認しては進んでいくように、日々意識しています。雑誌に載った自分の作品をほかと見比べて「勝った!」と思うこともありました。その瞬間は最高に満足いく結果が出せたとしても、しばらくすると「もっと○○すればさらに良い結果が得られたかもしれない」と気付く。自分で最高だと思った撮影ですら、反省点が見つかるものなんです。だからと言って後ろばかりを振り返ることはしませんが、決して満足せずに次のクリエーションに挑戦する。そのこと自体が僕の楽しみであり、喜びです。

 

若人よ! 憧れの存在を見つけて、美容バカになれ!

 

 

若い美容師さんにアドバイスするとしたら、将来の目標となる憧れの存在の美容師さんを見つけてくださいってことだね。その憧れの人と美容の話ができると、最高に成長できるチャンスを得られるはずです。そうして目標を定め、人生最大の努力を今から5年間してほしい。「美容バカになれ!努力した質の分だけ人生が変わる!努力は裏切らない!」という言葉を送りたいな。

 

 

些細な事に拘り、身の丈に合ってない分不相応な大胆な大志を持とう。「これからの自分は美容界に必要な逸材になる。」と信じてほしい。理想が大きく、勘違いしているくらいの人の方が大きな夢を掴めるはずだから。

 

 

 

最初からなんでもできる人はいないですよ。だから、できるように努力するだけ。心が折れたり挫折したり挫けそうになっても諦めない。嫌な事から逃げる時の判断は最善の判断を下せない。自分の弱みを鍛えるチャンスだと思ってください。何事もスポンジのように吸収して、確実に自分のものにしてほしい。そして、何より感謝を忘れないこと。常に関わる人、周りの人に感謝して自分も感謝される人になってください。

 

anti/ BOSS

小松利幸(こまつ としゆき)さん

『元祖カリスマ美容師』として、一気にスターダムへ。パーマの微妙なニュアンスを出すのに欠かせない円錐ロッドやエアウェーブの開発に携わるなど『パーマの魔術師』と呼ばれ自身が考案したKPM(Komatsu Perm Method)により傷ませないパーマを実現する。現在は、雑誌やセミナー等で活躍するほか、スタイリング剤などの商品開発にも尽力。『ヒラメキは無限の可能性を人に与え、新たな感動を創り出す』がモットー。

 

(文/外山 武史 撮影/菊池麻美)

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