【BY THE SALON清水光子】第一期生として飛び込んだ名門サロンでの24年から独立へ。キャリアを切り拓くための選択と、後進に伝えたい本質的な学び。長く活躍し続ける美容師に必要な「変わらない軸」とは?
新たなステージへ。BY THE SALONの誕生

――退社のその先にあったのが、独立ですね。
退社は、とても自然なタイミングでした。何か特別な、大きな出来事があったわけではなくて、「あ、今だな」とふと感じた瞬間があったんです。長く同じ場所で積み重ねてきたからこそ、次のステージへ進む準備が、自分の中で整っていたのかもしれません。
「BY THE SALON」は、元同僚の金澤(BY THE SALON代表・金澤真由美さん)とともに立ち上げました。彼女は美容師として第一線で活躍した後、福祉の分野にもフィールドを広げていて。その取り組みを一つの形にしたいという想いと、「お客さまと長く関係を築ける場所をつくりたい」という私の考えが重なったんです。それぞれの歩みが交差することで、これまでにないサロンのかたちが生まれました。

――講師としての活動も長く続けられていますね。
講師の仕事は、「教えること」と同時に「学び続けること」だと思っています。伝えるためには、自分が深く理解していなければいけないし、「どうすれば伝わるのか」を考え続ける必要がある。
だから講習前には、必ず何台もウィッグを切ります。技術の確認というより、「言葉にするための準備」ですね。技術は、見せるだけでは伝わらない。
“なぜそうするのか”まで言語化して、初めて人に届くものになる。そこに、この仕事の難しさと面白さがあると感じています。

――教育において大切にしていることは?
「教えすぎないこと」です。基礎はしっかり伝えますが、それ以上は本人に委ねる。課題をどう受け取り、どう考え、どう乗り越えるか。そのプロセスこそが、その人の力になるからです。正解が一つではない仕事だからこそ、自分の頭で考えて、自分なりの答えを見つけてほしいと思っています。

変わり続けるために、変わらないものを持つ
――最後に、これからの美容師に伝えたいことを教えてください。
やっぱり、「自分で考えること」だと思います。どうなりたいのか。そのために何をするのか。誰かに与えられるのを待つのではなく、自分で問いを持ち、自分で選び取っていくこと。
そして、変わり続けること。時代も、お客さまも、価値観も、すべてが変化していく中で、自分だけが止まっていたら、気づかないうちに取り残されてしまう。でも、ただ変わればいいわけではないと思うんです。どれだけ環境が変わっても、どれだけ経験を重ねても、「目の前の人を素敵にしたい」という気持ちだけは、変わらずに持ち続けること。
その“揺るがない軸”があるからこそ、人は迷わずに変化できるし、長くこの仕事を続けていける。積み重ねてきた時間の中でしか見えない景色があって、
続けてきた人にしか届かない想いがある。だからこそ簡単に手放さずに、自分の道を歩き続けてほしい。その先にしか、見えない未来があると思います。


- プロフィール
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清水光子 しみずみつこ
BYTHESALON ディレクター
東京都北区出身。中学卒業後、日本美容専門学校夜間部に進む。1989年、PEEK-A-BOOへ第一期生として新卒入社。以来24年間はPEEK-A-BOOに在籍し、サロンディレクターとして活躍。雑誌、広告、撮影、ヘアショー、講師と幅広く活躍の場を広げる。2016年、元同僚の金澤真由美さんと共に、『BY THE SALON』を創業し、代官山・中目黒に展開。また20代半ばからヘアカット講師としても活動し、現在も指導者として多くのファンを擁する。
インスタグラム:@bythesalon_shimizu
https://thesalon-2016.com/
(文/石田雅子 撮影/宮崎洋)