ドールメイクの生みの親!  ヘアメイク 双木昭夫さんに聞く、切り開く美容仕事力

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メイクをするほど幼く、お人形のように愛らしく見えるドールメイク。「メイク=大人っぽくなるためのもの」という従来の考え方とは真逆を行く、このメイク法の生みの親がヘアメイクの双木昭夫さんです。

トレンドの移り変わりが激しい美容業界において、独自の世界観で自らの道を切り開き、有名になってからも自費で雑誌『なまいきリボン わがままレース』を出版したり、手作りの仕事道具をプロデュースするなど、今なお進化を続ける双木さん。どうやってドールメイクが生まれたのか、そしてなぜ、さらなる進化を求めて走り続けるのか。美容師とヘアメイク、職業は違っていても、双木さんの開拓者スピリッツから学べることは、少なくないはずです。

 


 

ドールメイクはこうして生まれた!

 

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-双木さんは、美容師さんをされていたそうですが、美容師をやめてヘアメイクさんになったのはなぜですか?

 

私はとても飽き性なんですよ。20代で美容師になって、この先40年、美容師としてこのまま楽しく仕事を続けていけるんだろうかという不安もあったし、もっと自分の可能性にかけてみたい! とも思ったんです。

 

最初はヘアメイクの事務所でアシスタントをしていたのですが1年で辞め、そのあとブライダルのレンタルドレス屋さんに転職しました。そこで「メイクができます」とアピールして、花嫁さんのメイクをさせてもらって。しばらくそこでメイクをしていたのですが、30歳くらいのときに、ずっと憧れていたミュージシャンヘアメイクをしてみたい! と一念発起。ライブハウスに通い詰めて、無償でミュージシャンのヘアメイクをやらせてもらっていました。

 

-ミュージシャンからお金をもらわずに、ヘアメイクをしていたんですか?

 

そうなんです。お金はもらわず。最初はひとつのバンドだったんですが、それからそこのライブハウスに出演するミュージシャンたち、ほぼ全員、メイクするようになりました。たとえただでも、ミュージシャンのヘアメイクをしていたら「私はヘアメイクアップアーティストです」って言えるんですよね(笑)。お金がないから、昼はバイトをしているんですけど。

 

転機になったのは、椎名林檎さんのデビュー曲のCDジャケットのヘアメイクです。椎名さんがすでにほかのスタッフで撮影していたCDジャケットを「こんなのじゃイヤだと」言って、再撮することになったんです。でも、次の日くらいに撮影しないと間に合わないようなスケジュールで、スタッフがつかまらないんです。「あのライブハウスでメイクしているヤツなら暇だろう」と、私の名前が上がったらしく、知り合いの知り合いの知り合いくらいから、声がかかったんです。

 

-椎名林檎さんのデビュー曲のCDジャケット、緊張しませんでしたか?

 

緊張しましたよ。だって、私にとっては実質、初の仕事ですからね。しかも、すでに撮影されていたジャケットは、私も憧れていた有名ヘアメイクさんが手がけたステキなできだったんです。正直、「これでダメなら、どうしたらいいんだろう」って思いましたね。自信はありませんでした

 

-その緊張の現場を、どのように切り抜けたんですか?

 

もうね、開き直るしかないんですよね。ヘアメイクの技術でいったら、私がその有名ヘアメイクさんに敵うはずはないんです。同じことやっていてもダメなんだから、とにかくなにか違うことをしなくてはと。そのときは、ボブのウィッグを持って行って、しかも斜めに被らせたので前髪をあえてガタガタに。椎名さんは「なにこれ〜! なんで私がウィッグ被らなきゃいけないの〜」とゲラゲラ笑ってとても喜んでくれて、ジャケットの仕上がりもとても気に入ってくれました。そこから評判が広まって、どんどん仕事がくるようになって、忌野清志郎さん、矢沢永吉さん、山崎まさよしさん…。その当時、人気のあったミュージシャンのほとんどは私がヘアメイクをしていましたね。

 

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-ミュージシャンのヘアメイクとして活躍していたのに、その地位を捨ててまで「ドールメイク」へと向かったのはなぜですか?

 

ミュージシャンって男性が多いんですよ。男の人より、可愛い女の子のヘアメイクの方が楽しいなと思って(笑)。もともと、可愛いものが大好きでこの世界に入ったので、もっと自分の好きな分野で活躍したいという気持ちが生まれてきたんです。

 

でもビューティのヘアメイクは雑誌の花形だし、ライバルも多いですよね。そこにまともにぶつかっていっても、勝ち目はないなと思ったんです。椎名さんのCDジャケットをさせてもらっていた経験から、人と同じことをしていたんじゃダメだということは身にしみてわかっていたし、なにか人と違うウリをつくらなくてはと思って。そこから生まれたのが『ドールメイク』なんです

 

-ドールメイクの定義は?

 

従来のメイクって、キレイに大人っぽくなるというのが基本だったんですよね。日本人の平らな顔をメイクで彫り深く、求心的に見せるために、シェーディングを使って。ドールメイクはその逆。メイクをすればするほど幼なくなるんですよ。今までのメイクは目の上に暗めのアイシャドウを塗って目の彫りを深く見せていたのですが、ドールメイクでは逆に目の下にシャドウ。目頭はハイライト、目尻にはシャドウをつけます。こうすると、目が下についていて、しかも離れているように見えるんです。

キティちゃんでもマイメロディちゃんでも、ふなっしーでもそうなんですけど、人気キャラクターはみんな目が離れていて、しかも目は低い位置あるんです。そうするとちょっとマヌケな顔になるのですが、それでみんな癒される。見ていて癒しになるからこそ、キャラクターが愛されるんです

 

-ドールメイク人気に火がついたのはなぜだと思いますか?

 

まずは分かりやすさでしょうね。これはコンサルタントをやっている叔父の受け売りなのですが、ビジネスっていうのは、まずは名前をつけるところから始まるらしいんです。ドールメイクというわかりやすい名前をつけることで、ファンを掴み、そうすることでシーンが生まれます。今まで若い子はみんな外国人のような彫りの深い顔に憧れていたのですが、オタク文化とかゴスロリの世界が一般的になってきましたよね。そんな時代性ともマッチして、ドールメイクが人気になったのだと思います。

 

-双木さん自身が、ドールメイクを認知させるためにしたことは?

 

ドールメイクの世界観がわかるポストカードを作って、会う人会う人にポストカードを配っていましたね。「これ、ドールメイクって言うんです。目が離れていると幼く見えて、可愛く見えるんですよ」って営業しながら。そのうち、出版社からドールメイクの企画をやりたいと言われるようになって、そうするとほかの出版社からもどんどん声がかかるようになり、どんどんドールメイクが広がっていきました。

 

 

>競争に勝ち抜くには自分に付加価値をつける

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