【ROOTS加藤孝子】メンズヘア全盛期を築き、渋谷で創業21年目。リアルな声から生み出したジェンダーレスなデザイン提案とコロナ後の働き方

 

リアルな声を吸収して新しいスタイルを生み出す

メンズヘアをやるといっても、世の中には全くスタイルの種類がなかったので、自ら考えて作っていくしかなくて。それでまず男友達をお店に呼んで、美容院の何が苦手なのか、どんなスタイルが好きなのか、細かい悩みなどを含めてリサーチするために聞き取りをしました。当時は今のようにジェンダーレスな時代ではないので、一般的に男性的なクールな髪型を好む方が多かったんですね。「丸くなって可愛くなるのはいやだ」とか、「滞在時間が短い方がいい」「蒸しタオルがほしい」など、いろいろ言ってましたね(笑)。カットラインも女性と違って、レイヤーたっぷりの立体感カットだったり、「重く奥行きを残しすぎないでほしい」「ウェイトが高いほうがいい」など、内容的にはバーバーオーダーを言われましたね。

あの頃はアイロンは使わず、パーマの時代だったんです。ぐりぐりのパーマをかけてブローでスタイリングするブロー全盛期。でも、一般男性はブローなんてできないじゃないですか。だから、みんなブロッコリーみたいな頭だったんですよ(笑)。もっとゆるめのパーマをかけたほうがいいんじゃないかな?と思ったので、それこそ研究ではないですが「無料でカットするよ」と言いつつ、友人の男子大学生をたくさん呼んで、意見や要望を聞きながら実践しました(笑)。また「眉毛がボサボサで気になる」と言われて、それなら眉カットもしようかな?とか。そんな感じでリアルな声を吸収していったのですが、まさかメンズ顧客が売上のメインになるとは想像もしていませんでしたよ(笑)。ビジネスとして考えてなかったからこそ、単純に彼らをカッコよくしたいという観点から彼らの話を素直に聞けていたのかなと思いますね。


女性は面にこだわりますが、男性は毛束感のデザインとか、彫刻的なんですよね。そこに面白さを感じましたし、女の子と違うショートのデザインが組み込まれて新鮮さも感じました。全てが未知数だから楽しめたし、没頭できたんだと思います。当時の私の勤務先サロンは、ファッション誌のヘアメイクをしていました。ファッション誌の影響もあって、来店するお客さまはほぼ女性でコンサバ寄り。だから私が担当する男性客は敬遠されたんです。50席あるお店だったのですが、ヘアカタログを抱えた男性客がどんどん増えてきて「加藤は女性から見えない場所でやってね」と(笑)。ですが男性は隠れ家的な場所が好きなので、逆に喜ばれて助かりました。「個室を取ってありますよ」と特別感を醸し出すと、男性は素直に嬉しそうな顔を見せてくれましたね。あの頃のお客さまたちは、現在は結婚してお子様もいたりしますが、ありがたいことに今も家族で通ってくれていて、長いお付き合いをさせていただいています。





コロナで改めて痛感した”美容師はお客さまありき”


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