「スタッフに理想を押しつけてはいけない」。独立後感じたプレイングオーナーの苦悩 ―10年サロン「S.HAIR SALON」のブランディングストーリー前編

2006年〜2009年 組織運営過渡期

予想外に大変だった事務作業。プレイングオーナーとしての苦悩

 

 

経営は安定していましたが、想定外のこともありました。売上管理や役所、保険の手続きといった事務作業が、想像以上に大変だったんです。

 

店をはじめる前は、「店づくりや経営の一つひとつを自分で決められるならそのほうが楽なんじゃないか」と思っていたのですが、とにかく思った以上に作業が多い。事務作業って完全に誰の目にも触れない自分だけの仕事じゃないですか。サロンワークを含め、好きなクリエイティブな仕事に割ける時間が少なくなったことで、正直「自分の店なんてやめときゃよかったかも?」と思うこともありました。もちろん、本気じゃないですけど(笑)。

 

 

スタッフに自我を押しつけていた。個人のいいところを伸ばす教育へと変革

 

 

振り返ってみると、オープンして数年は自我が強くて、なんでも自分でやろうと抱えすぎていたなと思います。組織作りでも自分の理想をスタッフに押しつけていたときもありました。店の雰囲気についてこられない人が出てしまったり、特定のスタッフのできない部分が目について、スタッフ同士がぎくしゃくしてしまったり…。

 

僕はスタッフの教育は植木を育てることに似ていると思うんです。人によって合う場所、合わない場所があるのは当然で、日の当たる場所がいい人もいれば、日陰のほうが伸びる人もいる。その人に向いていないポジションを無理やりやらせてもダメなんです。

 

そのことに気づいてからは、スタッフの一人ひとりをよく見て、苦手なことは無理に任せず、できるだけその人が得意な作業をやってもらうようにしました。そうすることで、周囲の人も「あの人はあれが得意でいいよね」というように、その人のいい部分を見るようになります。そうなれば、本人にとっても負担も少なく、成長スピードも上がるように思いました。

 

結果的に、スタッフの出入りも減っていき、長く働いてくれる人が増えていきました。

 

>後編へ続く

 

プロフィール
S.HAIR SALON
代表/植田高史(うえだたかし)

人気絶頂期に、1年間海外へ放浪。その後2003年外苑前に「S.HAIR SALON」をオープンさせ、2010年に表参道へ拡張移転。サロンワークを中心にファッション誌や広告撮影・プロダクト開発などでも活躍。顧客だけでなく、同世代の美容師、編集者からも慕われている。

 

(取材・文/小沼理 撮影/河合信幸)

 

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