美容師の確定申告はどうすればいいの?税理士さんがくわしく解説します

Q_どこまで経費として申告していいのですか?

 

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判断基準は「美容師としての売上を稼ぐために必要なもの」です。ただ具体的な詳細が決められているわけではないので、「仕事をするうえで必要なのか」が説明できるかどうかで考えてください。

一般的に、材料代、店舗家賃、通勤交通費、美容器具代、電話代、通信費、店舗に置くための雑誌や書籍代、講習会の参加費などは、問題ないでしょう。

 

Q_経費の申告に制限額はありますか?

 

金額の制限はとくにありません。

 

Q_白色申告と青色申告の違いはなんですか? 美容師だとどちらで申告するのが適切ですか?

 

一言で言うと、青色申告は”ルールが複雑で面倒だけれど支払う税金が安くなる特典がある”、白色申告は“作成書類が青色申告より簡易的だけれど支払う税金が安くなる特典はない”ということ。特典がある分、青色申告の方がお得です。では、もう少しくわしく違いを見ていきましょう。

 

【青色申告】

帳簿:必要(複式簿記もしくは単式簿記から選択)

事前の届出:必要

作成書類:所得税青色申告決算書・確定申告書B

メリット:青色申告特別控除が使えますので、最大65万円もしくは10万円が課税対象額から控除されます(専門知識が必要とされる複式簿記だと65万円、専門知識を要しない単式簿記だと10万円)。それ以外にも、青色事業専従者給与の必要経費算入、純損失の繰越しなどの特典があります。

デメリット:複式簿記の場合、正確なルールに則り精度の高い帳簿を作成しなければならないため、手間がかかります。

 

【白色申告】

帳簿:必要(単式簿記)

事前の届出:不要

作成書類:収支内訳書・確定申告書B

メリット:帳簿は簡易なもので良く、決算書も青色申告の場合に比べて記載項目が少ないため、比較的簡単に書類が作成できます。

デメリット:青色申告にある特典はありません。さらに、あいまいな記載で真実性に乏しい箇所があると、税務調査の際に「本来はこれぐらい税金がかかっているはず」と判断され、余分に課税されることもあります(これを推計課税と呼びます)。

 

Q_申告のときに注意点すべきことはありますか?

 

確定申告の際は、漏れがないよう正しい金額で正確に行いましょう。あとから漏れていた申告内容を修正しようとすると、手間がかかります。また、申告したあとに税務調査があった場合には帳簿や領収書、売上伝票などの書類が必要になりますので、しっかり保管しておくこともたいせつです。

 

Q_美容室で社員として働いている場合でも、確定申告をしなければいけない方はいますか?

 

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下記の条件に当てはまるような場合は、確定申告をしてください。

①住宅を買って、住宅ローンを組んで控除を受ける方の最初の年(自分が住んでいる家のみが対象)

②医療費の支出合計額が10万円を超える方

③勤務している美容室のほかに副収入があり、その所得の合計額が20万円を超える方

 

①の場合、一番最初の確定申告のみ自分で行いますが、2年目以降は勤め先に必要書類を提出すれば年末調整で住宅ローン控除の適用が可能ですので、確定申告は不要となります。

②の場合、医療控除が受けられる可能性があります。還付を受けられそうな方は確定申告をしてください。

 

Q_税務署の窓口のほかにインターネットや郵送でも申告できますが、それぞれのメリットとデメリットはありますか?

 

税務署:不明点があった場合に、職員に相談しながら書類を作成できるのが最大のメリット。ただし、受付に時間を要する場合が多く、とくに締切間近は長蛇の列ができるので覚悟が必要です(申告書の提出だけならそんなに長時間待つことはないでしょう)。確定申告の時期は税務署とは別の場所に申告書作成会場が開設されることがあるので、どこへ行けばよいかは、事前に確認してください。通常は平日の日中しか受け付けていません。

 

郵送・インターネット:待ち時間が一切ないのが一番のメリット。申告書を作成するなかで不明点があった場合は、専用のコールセンターに問い合わせることが可能です。ただし窓口のように1から10まで丁寧に教えてもらうのは難しく、対応は一般的な質問に限られます。インターネットで提出まで行う場合は、事前に電子申告の手続きが必要ですが、「確定申告書作成コーナー」で提出書類を作成して印刷し、郵送で提出するのであれば、PCとプリンタがあれば作成が可能です。メンテナンス時間以外は、夜中でも書類を作成できます。

 

Q_マイナンバー制度の導入により、確定申告はなにか変わりましたか?

 

平成27年分の申告では、まだ変更はありません。来年申告する平成28年分の申告からはマイナンバーの記載が必要となります。注意事項としては、「マイナンバーが漏れないよう管理を徹底する」こと。店舗の経営者は、家族や従業員のマイナンバーも管理することになりますが、管理ルールは極めて厳重です。たとえば、管理サーバーへのアクセス制限を設ける、書類の保管場所を決めて鍵をかけるなど。重要な個人情報だという意識を忘れないでください。

 

プロフィール
伊澤真由美(いざわ まゆみ)/ベネフィット税理士法人・社員税理士・美容室経営アドバイザー。関東信越税理士会所属。『わかりやすく伝える』をモットーに多くの美容室の経理や税務の手助けをしている。

「店舗を経営するようになると、経理や税務でのオーナーさまの負担が大きくなります。当社ではそんなオーナーさまを手助けする税務会計サービスを行っています。今後は情報発信もしていく予定です」

URL:http://benefit-tax.jp/

 

(取材・文/QJナビ編集部)

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