売れている人は“イケてる自分”を楽しんで演出している」vetica内田聡一郎さん

究極的には自分自身が価値になりたい

 

-内田さんは自分を客観視してしまうとのことですが、「内田さんが思う内田聡一郎」は、どんな美容師ですか?

 

正直、面倒臭いですね(笑)。自己実現欲が強いし。第三者として見てたら、好きじゃないかな。「メンドクセーなコイツって思うでしょうね。ただ、一つだけ言えるのは、俺はやりたいことに対してはものすごく貪欲だし、絶対に実現してきた。そして、それを誰よりも頑張ってきたし、それに対してはものすごく純粋だと思っています。DJをすることに関してもそうだけど、普通は深夜にイベントでDJをして、昼にはサロンで働いてって、無理かなって思うけど、俺はやる。もちろん、DJをすることは楽しいけど、自己ブランディング的な側面もあって、美容師として仕事に硬派に向き合っているけれど、DJという遊びの部分も持っているという振り幅を見せたい、というのもあるんです。

 

DJ

DJをする内田さん

 

-もともとは「ものすごくなりたい!」と思っていたわけじゃない美容師の仕事に貪欲に向き合うようになったのはなぜですか?

 

読者モデルをするようになったことがきっかけですね。当時は、カリスマブームの流れで、「美容師さんっておしゃれ、ファッションの参考にしよう』と盛んに雑誌で特集をされていて、原宿のGAP前(現在の東急プラザ前)で『smart(スマート)』などのメンズ誌が、モデルハント中の美容師をスナップしていたんです。俺はとにかく有名になりたかったから、モデルハントをしている体を装って、本当はスナップされるようにおしゃれを頑張っていました。そのうち美容師スナップの常連になって、おしゃれをすることがルーティン化していって、それがきっかけで『チョキチョキ』のおしゃれキングにも選ばれました。

 

『チョキチョキ』のおしゃれキングになった途端、美容師さんや読者の方からの認知度がものすごく上がって、お客さまも爆発的に増えたんですよね。でも、そのときには、自分自身のカット技術が追いついていなかったんです。お客さまも『おしゃれ美容師』として、期待を持ってきてくださっていたのだと思うのですが、あとでネット検索してみると「すごい下手」「もう二度と行かない」とボロクソに書かれていて。悔しくて、悔しくて、そこから猛練習をしました。

 

-内田さんが目指す、究極の美容師とは?

 

俺が切ったことでOK。俺に切ってもらっていることが価値と思われるようになりたいですね。俺が目指すのは究極、そこなんです。その美容師さんが提案するもの、触ってくれること自体が商品であり、価値なんだと。誰もがそこを目指すべきだと思うし、そこを目指している美容師が強いと思う。

 

もちろん、独りよがりにならないための裏づけは絶対ですよ。上手に切ることとか、左右対称に切ることとか、似合わせだったり。理論上はわかっているし、技術もあるけれど、それを大事にしたいとは思わない。左右対称に切ることよりも、最後、施術を終えて鏡を見たときに「来た!」って思えるほうが大事。お客さまはとりあえず座っていてくれればいいですよ、という感じが理想です。

 

 

プロフィール
vetica
クリエイティブディレクター/内田聡一郎(うちだ そういちろう)

神奈川県出身。1店舗を経て、VeLOオープニングスタッフとして参加し、店長兼ディレクターを経た後、2009年にVeLOの姉妹店となるveticaのクリエイティブディレクターに。サロンワークをはじめ一般誌から業界誌、セミナー、数々のミュージシャンやアイドルのヘアメイクなど、幅広く活躍。2015年には同店が移転拡張し今後さらなる活躍が期待されている。またプライベートではDJとしても活躍しており、都内クラブを中心に活動している。

 

 

(取材・文/池山 章子  撮影/QJナビ編集部)

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