地震、台風、火災…何を備えればいい? 防災に取り組む4サロンに聞く「美容室の防災いろは」

置きっぱなしにしていた物の片付け、「義務」ではなく「何のため?」を意識し改善 ――GARDEN Tokyo 川谷俊勝さん

 

 

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防災に力を入れ始めた時期:2019年8月

 

主に想定している災害:火災、地震など

 

対策をはじめたきっかけ

自身がビル防火防災管理者に選任されたこと

 

行っている取り組み

エレベーターホールのスペース確保、避難経路の確認共有、避難訓練 など

 

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きっかけ:防火防災管理責任者の講習で見た事例に衝撃を受けて…「うちも、あるかも」で意識が変化

 

防災に力を入れはじめたきっかけは、僕がサロンの入っているビルの防火防災管理責任者に任命されたことです。特に、責任者を対象とした講習会で見た火災の事例が衝撃的で意識が大きく変わりました。その事例は新宿のビル火災で、日頃の防災意識がなく避難経路に物を置いていた結果、扉が開かず非常口前で死亡者がたくさん出てしまったというものでした。

 

GARDEN Tokyoの店舗はビルの11階。有事の際は同じように非常口を使って階段を降りることになります。だからより一層、他人事には思えず、火災は常に隣り合わせなんだと感じました。「接客業としてお客さまの命はもちろん、スタッフの命も守らなければならない…今の備えで十分だろうか?」と考えるようになりました。

 

以前、誤動作で非常ベルが鳴ったことがあり、そのときは慌ててしまって確認すべきこともわからず、何もできない状況でした。誤動作だったのでよかったですが、もし本当に火災や地震だったとしたら…ビルの11階からの避難、「なってから」の思考や確認では遅いと改めて認識しました。

 

現在行っている防災の取り組み

 

 エレベーターホールのスペース確保

いつでも救急のストレッチャーを通すことができ、また避難が必要な場合もスムーズに通れるように、エレベーターホールのスペースを確保しています。広さは4〜5畳。これまではリースタオルの返却や業者から届いた新しいタオルが置いたままになっていることが多くありましたが、現在は返却するものはサロン内の広いところに置いておいて業者が回収にきたときに出し、新しいタオルはすぐにしまうようにしています。

 

 

 避難経路・非常口の確認

2つある非常口の場所と避難経路を朝礼で共有し、サロン全体で確認しています。特に非常口のうちの1つは普段は鍵がかかっており、警報が鳴ったときに自動で解錠される仕組みであることなども一緒に確認しています。

 

 避難訓練

防火防災管理責任者を対象に、半年に1度ビル全体で避難口・避難経路を実際に移動して確認する避難訓練があります。今後、サロンとしても独自に同様の避難訓練を行いたいと準備中です。その際はビル管理会社に相談し、事前に避難口の鍵を開けてもらいます。実施は営業前にいつもより1時間早く全スタッフで集まり行う想定です。

 

 消化器・散水機の設置

散水機は法律に基づきもともとビルに設置されているもの。消化器は2台、サロンのどこからでも取りに行ける位置に設置しています。どちらも使い方を防火防災管理責任者の講習で確認しました。サロンのフロアが100坪と広く、ドライヤーのコンセントなど発火の注意が必要なものもあることから、消化器をもう1台増やせないかと検討中です。

 

スタッフの変化:「義務」から「なぜやるの?」を考えるように

 

僕が防災管理責任者になる前から、消化器の設置や消防署検査時の対応など、最低限は行っていました。ただ、「防災のため」ではなく、「必要な手続きだから」という理由で対応していたように思います。

 

例えばエレベーターホールのスペース。これまでも消防署による点検のときは片付けていました。つまり、本来はスペースを空けるべきことだと知ってはいるけれど、あまり意識していなかったんです。まずはその意識を少しでも変えてもらうこと。そのため、朝礼などで何度も伝えて、都度片付けることを少しずつ習慣化していきました。

 

朝礼では「必要だからやりましょう!」と一方的に話すのではなく、まず「身近で火災が起きたことはありませんか?」と聞いて、想像してもらうようにしています。自身があったことはなくても、近所でボヤがあったとか、知人が火災にあったとか、意外と誰かしらから出てくるんです。そうすると、少し身近に起こり得ることとなって想像しやすくなります。そこで「もしここで火災が起きた場合…」と話し、自分ごとと捉えてもらっています。

 

取り組みはまだはじめたばかりなので、意識の差はスタッフによってまちまちです。でも、全員が全員、普段から強く防災を意識していなくてもいいと思っています。大事なのは責任者が日頃から備えをしっかり管理しておくこと、そして何度も繰り返し防災の重要性を伝えて忘れた頃に思い出せるようにし、何かあったときにはみんなが動けるようにすることです。

 

ただ、全員で動くのに全体を把握しているのが1人では足りないなと感じています。まずは、同じように防災意識を持ち防災管理の役割を担うスタッフを数人増やしていきたいですね。

 

 

プロフィール
GARDEN Tokyo
スタイリスト/川谷俊勝(かわにし としのり)

大阪出身。大阪ベルェベル美容専門学校卒業後、2014年にGARDEN入社。ボブスタイル全般とヘアケアを得意とし、10代から50代まで幅広い層の女性から支持されている。2019年にGARDEN Tokyoの防火防災管理責任者となり、店舗の防災強化に取り組んでいる。

 

>海も近い神奈川県藤沢市を中心に多店舗展開するケンジグループの防災とは?

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