“ヘアスタイル＋お店で過ごす時間”をサービスとして売っている

－SNSに写真をアップするときに大切にしていることは？

媚びないこと。そのときの自分が心から感心があった写真、綺麗だと思った写真をあげるようにしています。だから『いいね！』やフォロアー数は気にしません。SNSは表現の場だと思っているので。『いいね！』をもらうことが目的ではなく、綺麗だと思ったものを発信したいだけなんです。その自分の美学に共感してくれる方がいて、お店にきてくれる。それだけです。

－美容師として働いているときに大切にしていることは？

美容師なのでちゃんとカットすることは基本です。それから期待を裏切ること。サービスをしている1時間のうち、30分は普通のカットをするんです。ユニークなお店なので、初めてのお客さまは『なんだ普通のカットじゃん』と失望するんです。でも後半の30分は攻めます。お店の世界観の説明や僕自身のプレゼンをするんです。このプレゼンをすることで、帰ったあとにお店のことが頭に残るんです。するとお客さまがお店に戻ってきてくれる。だいたい80％のお客さまはリピーターになってくれますよ。僕はお客さまに、“ヘアスタイル＋お店で過ごす時間”を、サービスとして提供しているんです。

－ではお客さまを魅了するコツは？

プレゼンをするためには文化の知識が必要です。だからそのジャンルに詳しい人に会いに行くんです。ジャズに興味ができたらジャズに精通している人に会いに行く、戦前のカルチャー・ファッションに興味を抱いたら、詳しい人に会いに行く。そこで蓄積した知識をお店で披露するんです。

－月に1回、演奏会を開催されていますね。なぜ演奏会をしているのですか？

理由は簡単です。ボクがやりたいから（笑）。美容室って髪をカットするときにしかお客さまはこられないですよね。でも『お茶を飲みたい。くつろぎたい』という声があったので、それで日曜日の夜に、この空間をイベントのために開放しようと思ったんです。美容以外の時間でもここにきて欲しい。お客さまにはウェルカムドリンクを提供し、入場料はもらっていません。僕自身も接客をしません。なぜなら僕が楽しむためのイベントなので（笑）。だから動員も気にしません。ただせっかくきたのなら、演奏会を楽しんで、何かを感じ取ってほしいとは思っていますね。

－生の体験を大切にされているんですね。

さきほど、うちは“ヘアスタイル＋お店で過ごす時間”を、サービスとして提供していると言いましたが、生の体験を経験し、その経験をサービスとして売っていると僕は思っています。カット技術だけを売っているじゃないんです。

プロフィール

SEVEN STARS hair design NAKANO BASE

オーナー／安部 （あべ しんご）

東京都国分寺出身。都内2店舗を経て、EARTH高円寺の店長に就任。その後独立し、東京の阿佐ヶ谷と高円寺にお店をオープン。確かな技術を基に、どんな無茶ぶりにも応えるスタイリスト。

（取材・文／QJ編集部　　撮影／久保田明）

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