真の美容立国の実現を目指して。【森越道大×大学教授:伊藤庸一郎】美容業界の行動経済学【タブロイド版リクエストQJより】

 

タブロイド版リクエストQJ2022-2023年冬春号がこのほど発行されました。ここでは誌面の一部をご紹介します。

 

 

美容業界がデジタルテクノロジーによって抜本的な変化を遂げた今、さらなる期待が寄せられているのがAI(人工知能) だ。AI システムの進歩によって、美容師の仕事の中身も、前代未聞のスピードで変革されるはず。そんな未来を確信し、いち早く動き始めているのは森越道大さん(senjyu)。AI と手を組み、美を創造するプロフェッショナルたちの潜在的なエネルギーを刺激すれば、一般消費者の生活レベルにイノベーションの波を起こす。森越さんと伊藤教授が、美容とAI の新潮流を語り合った。

 

 

美容師  森越道大

senjyu 代表

北海道、横浜の2店舗を経てGARDENに入社。26歳でデビューし、初月売上350万円を達成。 MORIKOSHI プロフェショナルチームを発足後、月間売上1100万円を実現。2020年社内起業『senjyu』を設立。2022年からは senjyu の全国展開を決定し、チームを派遣している。

 

 

大学教授  伊藤庸一郎

愛知産業大学造形学部スマートデザイン学科 教授

自分と同様に考え悩み行動するデジタルクローンをつくりだす「Thinkeye」の開発者でもある。日本福祉大学、大阪大学を経て、2016 年から愛知産業大学造形学部教授。スマートデザイン学科は世界的にも注目されるXAI を学べる唯一の学科として、企業や自治体とも数多くの産学・官学連携プロジェクトを手掛けている。

 


 

今のAIシステムはどれくらい社会に浸透しているの?

 

伊藤:人の生活や仕事をデジタル化していこうといった意味で、デジタルトランスフォーメーションという概念があります。一時期、AIによって人は仕事を奪われるんじゃないかと危惧されましたよね。でも今は、そんなことを言う人は誰もいません。なぜならそんなAIは存在しないからです。ディープラーニング深層学習は、人間が自然に行うタスクをコンピュータに学習させること。技術の一つなのですが、これって人間の代わりにはならないんですよね。人の声や顔などを判別することは得意なんですけど、結果的には人が期待する以上のことはできなかったということがバレちゃったんですね。だから皮肉なことに今、期待されているのが人間の能力や直感、感情を模倣することができるAIなのです。

 

美容師の森越さんが、なぜAIと繋がったの? 伊藤教授との出会いは?

 

森越:着想は5年前です。お客さまにも恵まれて、サロンワークはありがたいことにとても忙しくて。お客さまからの髪質改善に関する問い合わせも多くて、一人ひとりのお客さまにメールでカウンセリングもしていたんですよね。でも僕一人だけでは限界があります。 「僕のクローンAIがあったら、一度にもっとたくさんの人とやりとりできるのに」 と思って。そんな話を周囲にしていたら、知人から紹介されたのが伊藤教授でした。伊藤教授はAI生成プラットフォーム 「Thinkeye」 を駆使して、ユーザーに寄り添った人間中心のAI開発をされている人物。そんなところが美容師のマインドにもフィットしたんだと思います。

 

伊藤:IT専門家でも得意なこととできないことがあるんです。例えば 「温度が36度になったらバルブを開く」 とか、機械の制御は設計できます。でもIT専門家ができる領域は限られていて、無数のクリエイティブな業種別に、毎回なりきってシステムをつくることはできない。つまりは和菓子職人や美容師の代わりはできない、ということです。そこでクリエイター自身が自らのクリエイティブな部分を自動でクローン化する仕組みを作りました。当然、森越さんのデジタルクローンも作れてしまうという訳です。

 

森越:AIというと、ディープラーニングが主流だったと思うんです。数値で判断して正解を出していくような。でも美容師の日々のサロンワークでは、数字では表せない思考判断を経て結論を出しています。お客さまと一緒に悩みを考え、綺麗になっていく道を模索します。なぜかというと、そこには心があるからです。お客さまの気持ちに寄り添うからこそ、数字ではない正しい結論を美容師は導き出すんです。だから伊藤教授が提唱する 「寄り添うAI」 には強烈に惹かれてしまいました。

 

伊藤:もし森越さんのお客さまだったら、毎日好きな時にいつでも森越さんに聞きたいことってあるんじゃないかな。それが美容とデジタルクローンの関係と思った。「今朝の髪型決まらない。どうしたらいい?森越さん」。うん、マーケットあるな。なので森越さんのクローンもありだ。24時間寄り添いの美容クローン、うん面白い。そんなことを森越さんと初めて会ったときに思ったね。

 

森越:まずは僕を完璧にコピーしたクローンを作ります。今までの経験、知識、思考を注ぎこみ成長していくデジタルクローンがあれば、いつでもどこでもお客さまのお悩みを解決できます。2027年には僕なのかクローンなのかわからない程度にまで性能が上がっていると思います。そんなことを考えると可能性がありすぎてワクワクしているんです。

 

 

>AI化していくことにあたって留意していることはありますか?

 

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