日本の美容のために、国を動かしたい −airグループ20周年の軌跡を岩田社長に聞く【後編】−

経営者の仕事はみんなのために「新しい可能性」をつくり続けること

 

 

もちろん、幹部たちは人間力があるし、独立しても十分やれるヤツばっかりです。独立したいのなら、真正面から話してもらえれば、真正面から受け答えしています。ただし、会社を経営するのはみんなが思うほど簡単じゃない。だから「夢だけ膨れ上がって、なんでもできると勘違いするなよ」という具合に話すことも多いです。

 

成功例って氷山の一角で、9割は失敗していると思うんですよ。でも、出てくるのはてっぺんの情報ばっかりだから、勘違いしちゃうんですよね。借金抱えているヤツらは、ニュースにもならないし、表に出てこないんです。それでもやると決めたヤツは応援するんですけれどね。

 

 

幹部たちが独立しないのは、経営者にならなくても面白いことができるというのもあるかもしれません。例えば、金丸(ディレクター金丸佳右さん)はご存じの通り、筋トレや焼肉が好き、パーソナルジムや肉の飲食をやりたいって言っているんです。美容師だからといって美容だけではなく、個々の能力をいかした道もあると思っています。

そういう意味で、経営者としての責任は、今いるメンバーの「可能性」を広げていくこと。みんなの希望を全て満たせるかはわからないけれど、「ここにいれば可能性がある」と思うことができれば、人はやめないものなんですよ。

 

日本の美容をブランディングすることは、国益に関わる

 

 

次の10年は、日本の美容業界を変えるためのアクションをしたいと思います。日本の技術は世界に誇れるものです。我々も月に1回は中国で講習しているんですが、今でこそレベルは日本の方が上かもしれませんが、ガッツは向こうのほうが数倍上です。彼らは数ヶ月でみるみる成長していきます。僕が思うに、中国人が日本人を雇うようになるのは時間の問題です。そうなる前に、少なくとも東アジアにおいては、日本に美容を学びに来る流れをつくる必要があると思います。

 

海外ではヴィダルサスーンがロンドンで美容を学ぶ流れをつくりましたが、日本の美容業界も早くブランディングして海外に情報発信していかないとダメだと思うんですよね。これはメイドインジャパンを世界に広げる取り組みであり、国益に関わる問題です。技術が流出する一方だから、もっとビジネスと紐付けていかないといけないと考えています。これは美容業界に限らない話ですけれど。

 

なぜこんなことになっているかというと美容業界って、65年以上何にも変わっていないからだと思っています。美容師の国家試験では、いまだにフィンガーウェーブなどをやっていますよね。どの美容室に行っても使い道がないのに。何にも変わっていないんですよ。

 

 

つまりは、僕らを含めて美容業界の人たちは行政との向き合い方がうまくなかったんです。とはいえ、イチ民間企業の経営者や文化人、アーティストが騒いだだけでは行政は動いてくれません。日本は民主主義社会だから、最終的には数の論理になると思います。

 

例えば、日本最大級の規模の業界が動けば、政治を動かせるかもしれない。だから、僕は政治とのパイプラインをつくりたいと考え、官僚のかたとコミュニケーションを重ねています。美容業界をよくしたいと、心の底から思っている人たちと、手と手を取り合ってメイドインジャパンを世界に打ち出していきたいからです。

 

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プロフィール
株式会社エアーエンターテイメント
代表取締役社長 岩田 卓郎(いわた たくろう)

1999年、24歳で「air」を立ち上げ、圧倒的なスピードでトップサロンに仲間入りさせたグループ最高責任者。美容室経営という枠にとらわれず、全ての“美”が集まる総合エンターテインメント企業を目指し、ヘアケアグッズの開発や販売、エステ、ネイルサロン、人材教育などさまざまな分野を見据えた事業を展開。メーカーとの共同開発や自社製品の開発にも力をいれ、多くの美容師を抱えるairグループだからこそ出来るヒット商品を次々と生み出している。「ビューティーコンテンツファクトリー(マリコール)」をはじめとする、世界の有名ブランドがairグループに参加。医療との連携もスタートし、さらなる事業拡大をはかっている。

 

(文/外山  武史  撮影/菊池 麻美)

 

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