【韓国人美容師チェズ<後編>】カツラの概念が壊れる瞬間!それは本物か偽物か?超進化系カツラの制作現場に潜入、マイナス30歳若返るマジックで「もうハゲても大丈夫」
#4 美容師の視点で作る。「メイクリアル」はその集大成
X:美容師の経験が生かされていることはもちろんですが、チェズさんのカツラに対する情熱もあって完成したものなんですね。実際の制作過程で、美容師経験ってどんな風に生かされていると感じていますか?
チェズ:僕は「これを言ったら恥ずかしい」という気持ちがないんです。発注先の工場から呆れた顔で「は?」と言われても怯まないし、図太く交渉し続けます。カツラ制作の指示書も、「ここは毛量を少なく、ここは多く」と細部まで指定しているので担当の職人さんは嫌がりますよね。例えば、若い方で体格がよくて運動しているような男性のお客さまの場合、自然さを求めて、あえてちょっと地肌が透ける部分もカツラに加えます。お客さまの本来あるべき姿を汲み取って、ストーリーを繋ぎ合わせながらカツラを作るんです。
これはカツラですけど、僕自身は単なるカツラと思っていないんですよ。じゃあ何?と聞かれたら一言では言い表せないけど、大きな可能性を秘めた本当の意味での生き物だと思っています。
工場から届いたばかりのカツラを、事前にカットしておけば早いんだけど、あえてお客さまの頭に乗せて顔を見ながら切る。セット面の前に座ってもらって、バランスを確認しながら、分け目を決めたり、長さを設定したり。これも美容師でなければできないことです。最近では20代の男性からの相談が多いので、プードルパーマもやりますし、波巻きパーマもやります。世の中のトレンドを知らないといけないので、美容師さんのインスタはずっと見ていますね。
X:カツラ購入後のアフターケアはどうされているんでしょう?
チェズ:商品のタイプによっては地毛を活かしますので、地毛が伸びると、カツラと合わなくなってきます。だからメンテナンスのカットに来られる方もいらっしゃいます。でも遠方の方には、ベースは何ミリで、刈り上げは何ミリでと仕上がりの写真を撮っています。その写真を美容師さんに見せれば、同じような元の姿に再現できますし、その方が美容師さんにも分かりやすいので。
使用するシャンプーも、何でもいいですよとお伝えしています。地毛カットも誰でもいいですし。実際のところ、カツラを使い続けるにはコストもかかるし、お手入れや手間もかかるイメージがあります。だからこそ、ご自分らしく、面倒なことは省いて、長く使い続けられる方法を推奨しています。肩の力を抜いて、良い意味で「適当にやってOK」という言葉に置き換えてお伝えしているんです。
カツラの料金は、部分タイプは税込29万3700円〜、全頭タイプで30万8000円〜になります。使用する髪の毛は全部人毛で、キューティクルの有無や特殊なカラーリングやパーマ、長さによってはオプション料金が異なります。毎日使うものですから、丁寧に使うと1年、人によっては3年4年と使っている方も。メイクリアルを立ち上げて7年目ですけど、7年間ずっと1台で使っている方もいらっしゃいます。また修理も行っていて、9万3500円〜対応しています。商品の5〜9割ほどの素材を丸ごと取り替えて、新しい髪で植え直して、着用方法によってはピンや接着台なども新調します。新品ではないですけど、ほぼ新品の状態で戻ってきますよ。型紙と設計図を顧客データとしてずっと保管しているので、それを元に修理ができるわけです。
人ぞれぞれ価値観が違います。若い方はお金を貯めて来られます。脱毛症や無毛症は障害ではないですが、心無い言葉をかける人もいますし、好奇の目に晒されます。幼くして無毛症になった子供は、学校に行くことを諦めます。そうするとどんどん孤立していくし、人の目線に恐怖を感じ、追い込まれていくんです。これらはまだ医療の分野でも治療方法が確立されていません。僕の使命は、カツラの意識を根こそぎ変えること。「もしハゲても、チェズのカツラを被れば大丈夫」という安心感を持ってもらえると嬉しいですね。
- プロフィール
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Chez(チェズ)
美現師®︎/メイクリアル代表/韓国人美容師
韓国出身。韓国での美容師経験を経て、山野美容芸術短期大学へ留学。卒業後、東京・原宿の有名サロンに就職する。その後、1店舗を経てフリーランス美容師として独立し、カツラ制作をスタート。2018年から法人化し、2019年に東京・青山に店舗兼アトリエとしてMake Realメイクリアルをオープン。美容師経験を活かし、限界まで地毛に近づけるオーダーメイドのカツラを制作。これまで4000人近くの顧客を担当。自ら「美現師®︎」を名乗り、YouTubeやTikTokでも精力的に発信中。
Youtube MakexReal
TikTok @makexreal
Instagram makexreal
(文/リクエストQJ 撮影/宮崎洋)