VANさん。ヘアライター佐藤友美がみた”美容師列伝” 第17回「踏みしめる人」

「ヘアライター佐藤友美がみた 美容師列伝」。日本全国の美容師を取材してきたヘアライターの目線から、毎回「●●な人」を紹介し、その素顔に迫る新企画です。第17回めはCocoonのVANさん、「踏みしめる人」です。

 

>ヘアライター佐藤友美がみた美容師列伝バックナンバー

 


 

(イラストレーション:カツヤマケイコ)

 

近道をしない、という生き方

 

先日、ある方から、人間には2つのタイプがあって、飛ぶ人と、飛ばない人がいる、と聞きました。

飛ぶ人というのは、前後に脈略がなく、突然ゴールまで飛んでいってしまう人。

飛ばない人というのは、ひとつひとつ行動を積み上げて、ゴールまで到着する人。

野球でいうなら、長嶋監督は飛ぶタイプ、王監督は飛ばないタイプ。どちらの方が優秀というわけではなくて、どちらのタイプもだいたい人口の半数くらいずついるとう話でした。

 

その話を聞いて、私の周りの人たちはどっちのタイプだろうと考えているときに、ふと思い浮かんだのが、VANさんの顔。私が思い出した友人知人の中で、VANさんが最も「飛ばない人」だと思ったからです。

VANさんは私が知っている美容師さんの中で、最も、一歩一歩、その道を踏みしめながら進む人なんじゃないかな。そう思います。

 

VANさんの下積み時代は長い。

その下積み時代の話を聞いたときの、話もえらい長かった。

インタビュー時間は3時間だったんだけど、3時間お話を聞いて、まだスタイリストデビューまでたどり着かなかった。

 

VANさんは、「自分は、ひとつひとつ順番を追って話をしないといけないタイプで、何かをはしょって話すということができないんです」と言ってらした。

そういった、VANさんの丁寧な人生に対する向き合い方は、仕事への誠実さにすごくあらわれていると感じます。

近道をしない、ずるをしない、真面目にコツコツやる。

その姿は、愚直すぎるようにも見えるけれど、結局、そういう人がずっと長く多くの人に支持される。

 

昔、VANさんにある雑誌の巻頭企画をお願いしたときのこと。それはロングヘアのモデルさんをばっさりショートにカットする企画だったのですが、撮影の日、朝スタジオで会ったVANさんの目は真っ赤で、「どうしたんですか? 具合悪いんですか?」と聞いたら、なんと悪夢にうなされて、寝られなかったと言う。

その悪夢というのが、映画のマトリックスのような真っ白い空間に、カット椅子がずらっと並んでいて、そこに座っていたロングのモデルさんを片っ端から切っていったというのですよね。

VANさんは、実際にウィッグをたくさんカットして撮影に備えてくれただけではなく、撮影前日の夢の中でもずっとモデルさんをカットし続け、そして撮影現場に目を真っ赤にして現れたのでした。

 

ひとつひとつ、時間をかけて技術を身につけ、お客さまを満足させていった人の強さというのは、それの道筋をちゃんと人にも説明できることではないかと思っています。

VANさんの姿を見て感じるのは、美容師さんにとって大事なのは、いかに早くスタイリストになるかではなく、「どんな」スタイリストになるかが大事なんだな、ということです。

Cocoonのスタイリストさんたちは、しっかりとした実力をつけられてデビューします。だからこそ、お客さまにも支持されるし、雑誌社の人間からも信頼が厚いし、そして、なにより辞めない

Cocoonの脅威の離職率の低さも、決して近道しようとしない、VANさんの背中を見て育っているからじゃないかなあと感じます。

 

>お客さまは知っている

 

Related Contents 関連コンテンツ

Guidance 転職ガイド

Ranking ランキング