長崎英広さん。ヘアライター佐藤友美がみた”美容師列伝” 第20回「伝える人」

伝えるときの、その解像度

 

 これは昨年、鈴木三枝子さんの人生について描いた『道を継ぐ』の取材で長崎さんにお話を聞きに行ったときに教えてもらった話です。

 

 MINXの中でもヘアカラーを極め、後輩を指導する立場になった長崎さんに対して鈴木さんは「もっとわかりやすい伝え方をしなさい」とアドバイスをされたそうです。

 せっかくの技術も、知識も、人に伝わらないと意味がない。極めた技術を簡単にわかりやすく伝えることができてこそ、価値がある。鈴木さんはそうおっしゃったのだとか。

 

 長崎さんが、ファッション誌のライターにも理解できるレベルで、カラーリングの奥深さを伝えてくれること。

 全国の美容師さんたちが、長崎さんのセミナーでは、落語会かと思うくらいに笑い転げて、でも楽しいだけじゃなくて、その間にカラーのノウハウがちゃんと身についていること。

 それらが、鈴木さんのひとことからスタートしたのだとしたら、私たちみんな、鈴木さんに感謝しなくちゃって思わされたお話でした。

 

 長崎さんの話は、文字通りビビッドです。

 長崎さんの話を聞いていると、私たちの頭の中には、映像が浮かびます。そして、その映像は細部まですみずみ解像度が高くて、色鮮やかです。

 

 長崎さんの話のすごさは、そこ。

 まるで自分が見てきたかのような映像を、私たちに見せてくれること。

 

 それは、話していることに対して理解が深くなければできないことだし、深くまで理解したことを、誰にでもわかる言葉で再現してあげようとしなければできないことだし、その2つは、片方できるだけでも超人級なのに、長崎さんは、それが両方できてしまう人なんだ、と思うのです。

 

 長崎さんが、天才だったら、嫉妬しない。

 だけど、長崎さんが、その2つの才能を、努力で手に入れたのだとしたら(多分そうだと思う)、私たちはもっと嫉妬して、努力して、手に入れようと思ってもいいのかもしれない。そう感じます。

 

 いま、初めて告白するのですが、私がライターとして目指しているのは、長崎さんみたいな存在です。

 

 極めるときの深さ。

 伝えるときの解像度。

 

 そんなプロフェッショナルに、私もなりたい。

 私にとって長崎さんは、ずっと憧れの存在だし、目標とする先輩です。

 

 

 -Profile-

 

CANAAN代表 長崎 英広(ながさき ひでひろ)

三重県出身。旭理美容専門学校通信課程卒。MINXセントラル店代表、MINX原宿店代表を経て独立。毎年国内外で数多くのセミナー活動を行い、受講者は年間1万人を超える。メーカーカラー材開発の技術協力を行うなど、カラーでは国内トップの技術をもつ。近著には、髪書房の「ヘアカラーマル秘レシピ」「新発想マル秘グレイカラー」2018年1月23日発売予定の「45日後カラー逆算レシピ」、このほか著書には、女性モード社より「成功するヘアカラー」、「続•成功するヘアカラー」がある。

 

文・佐藤友美

 

 

日本初、かつ唯一のヘアライター&エディター。MINXの故鈴木三枝子さんについて関係者191名に取材してまとめた最新著作『道を継ぐ』が、美容業界を超えて話題になった。また、『女の運命は髪で変わる』(サンマーク出版)は、NHK「あさイチ」でも特集され、7万部の大ヒットに。「美容業界と一般のお客さまの橋渡しになる」ことをミッションに、数々の企画を担当する。

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