歌舞伎に通い、名店で学び、ルーツを辿る。そのすべてを美容師の価値に変えるーACQUA熊谷安史さんの習慣 後編―
受け継ぎ、広げ、ACQUAを文化に

あともう一つ、最近僕は自社仏閣や、建造物、人など、あらゆることのルーツを辿るということを意識しています。「あ、寺だ」と思うより、この寺は、どんな人が、どんな目的で建立して、どんな役目を担ってきたのかとか、深掘った方が断然楽しいじゃないですか。さらに、ルーツを辿るとそこに育まれた文化も見えてくる。
余談ですが、自分のルーツについても、歴史マニアの友人に手伝ってもらいながら調べてみたんです。もともと我が家では、長男の名前が親の感覚だけで決まるのではなく、代々受け継がれてきた一定の流れの中で授けられる習わしがありました。そうした背景もあってか、自然と自分の家系やルーツに興味を持つようになったのだと思います。
改めて家紋などを手がかりに家系を辿っていくと、熊本藩士である細川家の流れを汲む武家だったことがわかりました。さらに、地元である福井県若狭町とも不思議な縁があり、昨年、資料館でそのつながりを知ることになりました。人も物も、ルーツを辿っていくと、思いがけないつながりや広がりが見えてくる。その奥行きに触れるたび、面白さを感じています。

僕はACQUAを単なる美容室ではなく、文化にしていきたいと思っています。うちは歴史のあるサロンですが、伝統を継承しつつ、新しいものも生み出し続けていかなければ意味がないと思っています。若手からベテランまでが同じ空間で切磋琢磨し、若いお客さまから年配のお客さままで自然に共存している。そんなあり方そのものを、美容業界の文化にまで持っていきたい。その未来を、ただのきれいごとで終わらせず、現実としてちゃんとつくっていくこと。それが、今の自分の役目だと思っています。

- プロフィール
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ACQUA/総店長
熊谷安史(クマガイ ヤスシ)さん
福井県若狭町出身。日本美容専門学校卒業。新卒でACQUA入社。表参道コレクションなどのヘアショーに携わるほか、国連PVや神戸コレクションなどのヘアメイクも担当。全国、海外向けの美容師向けセミナー講師を務め、様々な商品開発にも携わるなど、多方面で活躍。5月にはホスピタリティに関するセミナーも実施予定。また、サロンワークでは、様々な著名をはじめ幅広い顧客層を担当し、顧客に寄り添う的確なアドバイスにも定評がある。ACQUAの数々の要職を経て、現在はACQUA総店長として、サロン全体をまとめている。
Instagram:@kumagai_acqua
(文/池谷美歩 撮影/松林真幸 MIKAN inc)