お客さまも自分も、生きている間ずっと元気で美しく -TWIGGY 松浦美穂さんの習慣 後編-

お金の勝負じゃなく、気持ちの駆け引き

 

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自分の弱い部分や欠点を知ると、それを力に変えることができます。わかりやすい例でいうと、私の頭は絶壁です。コンプレックスが自分自身にあるからこそお客さまの後ろ姿には徹底的にこだわります。前からの見た目は巻いたり、ピンで留めたり、いろんなやりようがあるけれど、後ろ姿はそうはいかないですよね。だから私はそこに命を懸けています。施術後3カ月くらい、美しいフォルムをキープできるようにしているんです。だからこそヘアカラーリスト、ヘアスパリスト、カフェのシェフなどいつもそれぞれの「特技」と「コンプレックス」についての意見交換もします。すなわちそれは自分自身をいつまでも客観視できる状態にしたいからです。

 

自分の軸を持たず、強みも持たずに、ただ流行に振り回されているだけだったら、いつか美容師として、自分が何をすべきなのか見えなくなると思います。そうならないために、今の自分を見つめて、美しく、愛おしく思える生き方を見つめてほしいです。

 

お客さまに寄り添うことはもちろん必要だけど、「前髪1cm切って」と言われて切るだけだったら、別の美容室でもできますよね。そこであえて3cm切るという選択肢があってもいい。お客さまは「えーっ」って驚いて泣きそうになるんだけど、家族や友達に褒められて今まで知らなかった自分を知るとか…周りから言われて気分が上がったりとか…そこを目指してほしいのです。

自分自身が思い浮かばないヘアカラーをカラーリストがやってくれたり、ひとりでは手が回らない時にプロ級の心のこもったマッサージをヘッドスパリストがやってくれて待つ時間も気分が上がるとか…

美容師のこういうお客さまとの気持ちと結果の駆け引きが必要なのであって、そこをお互いが楽しんで「ワクワク感」を持続さえできれば、そこに売り上げは必ずついてくるのです。

 

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今日稼ぎたい、明日いいクルマがほしい、別荘がほしい…そんな80年代のような生き方は終わりました。あえて極端な表現をすれば、1人前になるまで、10年かかってもいいと私は考えています。死ぬまで美容師を続けることを考えれば、決して長い時間じゃない。「プロ」を目指してほしいのです。アシスタントでも「プロのアシスタント」を目指すのです。そうすれば見極めの目と心が養われます。将来「プロ」と思う人達を集めて「プロ」の集団の美容室を作ればよい。お客さまは本物の「プロ」集団を待っているのです。その為に自分にどんどん磨きをかけてください。

 

プロフィール
TWIGGY/Creative Director
松浦 美穂(まつうら みほ)

六本木美容室の店長、ヘアメイクを経てロンドンへ。帰国後にヘアサロンTWIGGYを設立。サロンワークに加え、雑誌、広告、ショーなどでも活躍。2014年にアメリカ版ハーパースバザーにて世界のトップサロンに選ばれ、自身初となる書籍『TWIGGY STYLE どこから見ても美シルエット! 人気No.1ヘアスタイリスト 松浦美穂の3Dヘア』(マガジンハウス)を出版。一店舗主義にこだわり、「生きているあいだじゅう、元気で美しい」を合言葉に、文字通りのトータルビューティーを提供。

 

(取材・文/外山  武史  撮影/菊池 麻美)

 

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