集客ゼロ、インスタ削除からの独立。「それでも、私のお客さまなら戻ってきてくれる」。アイブロウリスト星子さんがSNS発信で切り拓いたキャリア
顧客ゼロ。インスタ集客に悩む日々
−転職したサロンでは、集客に苦戦したそうですね。

そうなんです。挑戦したいという気持ちから、業界内でも知名度の高い完全予約制のサロンへ転職したのですが、そこは予約サイトなどの集客媒体を一切使っていないお店だったんです。つまり、自分でSNSを活用して新規集客しなければなりませんでした。ただ、当時の私はSNSに力を入れていたわけではなく、集客の知識もほとんどありません。さらに前職は指名NGのサロンだったので、顧客さまを連れてくることもできず。転職した時点でお客さまはゼロの状態です。とにかく集客しなくてはと、よくわからないままに施術のビフォーアフター写真を毎日Instagramに投稿していました。
それでも、1日に1人お客さまが来ればいいほう。周りのスタッフは予約が埋まって忙しくしている中、私だけ空き時間ばかりという日も珍しくありませんでした。すごく悔しかったですし、「もしかしたら選択をミスったかも…」と思うこともあって、正直モチベーションはかなり下がっていましたね。
でも、このままぼんやりしていても、状況は変わらないなと思ったんです。そこで、「まずはInstagramを本気でやろう」と気持ちを切り替えることに。空き時間には、バズっている人や、センスのある人の投稿を徹底的に研究して、自分なりに試行錯誤を繰り返していきました。
顔出しのメイク動画発信が転機に
−試行錯誤を重ねる中で、集客が軌道に乗り始めたきっかけはあったのでしょうか。
このままビフォーアフター写真だけを発信していても、情報があふれている中で自分を選んでもらうのは難しいなと思ったんです。そこで、自分自身が顔を出して、メイク動画を発信することにしました。動画では、実際に使っているコスメやメイクのポイントなど、お客さまがプライベートでも活用できる情報を紹介しています。自分でメイクをしながら、アイブロウだけでなく、メイク全体の知識や技術も伝えることで、「この人にお願いしたい」と思ってもらえるのではないかと考えたんです。
この投稿をInstagramで見る
メイク動画を投稿し始めてからフォロワーが一気に増え、予約も徐々に埋まるように。最終的には予約が満席の状態になり、売上も大きく伸びました。アイブロウリストは基本的に一人で施術を行うため、月間売上100万円を超えるとかなり高い水準だと言われています。その中で、私自身は最大で180万円ほどの売上を達成することができました。
また、もともと投稿していたビフォーアフター写真も、見せ方や撮影方法を工夫したことで以前より多くの方に見ていただけるようになりました。「この眉毛にしたい」と私の投稿を保存して来店してくださるお客さまも増えて、自分の発信が集客につながっていることを実感しましたね。
−順調だったからこそ、独立を決めたのでしょうか?

いや、実はそういうわけでもないんです。独立は正直、自分でもまったく想像していませんでしたし、「いつかは」と考えていたわけでもありません。どちらかというと、独立せざるを得なかったというのが本音ですね。というのも、勤めていたサロンと徐々に方針が合わなくなり、急遽退社することになってしまったんです。それをきっかけに、「だったら、自分でやるしかない」と独立を決意しました。
思いがけない形での独立劇
−独立ではなく、転職という選択肢はなかったのでしょうか?

不思議と、自分の中に「雇用される」という選択肢はなかったですね。ただ、だからといって勝算があったわけでもありません。急な退社だったので、お客さまにきちんとご挨拶をすることもできませんでしたし、会社の規定で、それまで運用していたInstagramも削除することになってしまいました。集客の土台もなくなり、まさにゼロからのスタートです。
それでも、「私のお客さまなら、きっとまた見つけて戻ってきてくれる」。そんな根拠のない自信のようなものがあったんです。ちょうど指名してくださるお客さまが増え、自分自身にも少しずつ自信がついてきたタイミングだったことも大きかったと思います。
そんな中で、知人からこの中目黒のSALON VILLAGEがオープンするという話を聞いて。お客さまをできるだけお待たせしたくなかったので、工事中の段階で契約を決め、約1カ月で準備を進めて、2025年8月に独立しました。

星子さんにSALON VILLAGEを紹介したサロウィンの菅生さん。SALON VILLAGEが大切にしているのは、ビューティシャン一人ひとりが、自分の技術や感性を活かしながら、自分らしいキャリアを築ける場所であること。2人は同じ専門学校の先輩後輩という間柄だそう。菅生さんは、星子さんがお客さまと真摯に向き合い、自分の技術や発信力で信頼を築いてきた姿に、大きな可能性を感じていたといいます。働く環境やタイミングによって、その可能性が閉じてしまうのはもったいない。そんな想いから、星子さんがもう一度お客さまと向き合える場所として、SALON VILLAGEでの独立を提案しました。「独立は決して簡単な選択ではありません。だからこそ、場所を提供するだけでなく、安心してお客さまと向き合い、自分の価値を届け続けられる環境をつくりたい。星子さんのように、技術と発信力でお客さまとの信頼関係を築いてきた方が、さらに自分らしく輝ける場所でありたいと考えています」と菅生さん。
−かなり急展開だったんですね。
本当に。実はその頃、退社にまつわるストレスなども重なって、心身ともにかなり追い込まれていたんです。私はもともとすごくポジティブで、いわゆる”根明”だと思うんですけど、そのときは「働きたい」「準備をしなきゃ」と思っていても、なかなか身体がついてこなくて。それでも、待ってくださっているお客さまの存在が支えになりました。どうにか気持ちを奮い立たせて、オープン前の1週間で一気に準備を進め、なんとか開業までたどり着くことができたんです。今となっては笑い話ですけど、本当にギリギリでしたね(笑)。
−独立してみて、いかがですか?

独立は突然のことでしたが、結果的には自分が理想としていた働き方や環境に近づけていると感じています。例えば、私はもともと仕事が好きで、あまり休みがいらないタイプなんです(笑)。でも会社員だと当然シフトや休日のルールがあるので、「私は休みません」なんてことは言えない(笑)。今は自分の裁量で働き方を決められるので、好きなだけサロンにいることもできますし、反対にプライベートの時間も自由に調整できます。そういう働き方は、自分にすごく合っているなと思いますね。
それに、SNSでの発信も大きく変わりました。会社に所属していると、多少なりともそのサロンのカラーに合わせる必要があります。でも今は、自分が本当に発信したいことや、自分らしさをより素直に表現できるようになりました。
また、以前きちんとご挨拶ができないまま離れることになってしまったお客さまにも、SNSを通じて自分の存在を届けたいという思いがあったんです。その気持ちもあって、独立後は一からアカウントを作り直して、以前にも増して発信に力を入れるようになりました。
すると、担当していたお客さまが少しずつ戻ってきてくださるようになって。ありがたいことに、この1年でほとんどのお客さまに再び来店していただくことができました。本当に支えられているなと感じますし、お客さまとのつながりの大切さを改めて実感しています。