カリスマ美容師の先駆者artifata CHIKAさんのびよう道〜“頂点”を追い続けた先で気づいた、大切なもの〜
自分らしさを追求して、正解をすぐに求めてはいけない

自分が一人前になったと思えた瞬間は、一度もありません。誰かにそう言われたこともないですね。師匠や両親から「一人前だ」と言われたら、また違うのかもしれませんが、年齢的にも、そう言ってくれるような存在はもう多くないですからね。
ただ、「一流を目指す」という意識はずっと持ち続けています。一流を超えて、超一流へ。まだまだやりたいことは尽きないし、好奇心や野心も、若い頃から変わらず持ち続けています。
若い美容師さんたちに伝えたいのは、人の意見に振り回されて右往左往しないこと。今の時代は難しいかもしれませんが、「あの人が成功しているから真似をする」「流行っているから発信する」といったやり方では、ある程度まではいけても、その先には進めないと思うんです。やっぱり大切なのは、自分らしさ。自分のデザインを求めて来てくださるお客さまがいて、「いつかこの人に切ってもらいたい」と思ってもらえる存在になること。そのために覚悟を持って技術を磨き、時間をかけて積み重ねていくことが必要だと思います。

それから、すぐに正解を求めないこと。まずは自分でやってみて、迷って、その中で自分らしさを見つけていく。今は動画を見れば技術も学べるし、すぐに答えに辿り着ける時代です。でも、試行錯誤しながら自分のスタイルをつくる時間こそが、本当は一番大事なんじゃないかと思います。手と頭を動かして、夢中になって積み重ねたものは、簡単には揺らがない。時間をかけて育てたものは、やがて大きく根を張る“木”のように、自分を支えてくれるはずです。

最後に。美容師という仕事は離職率が高いと言われていますが、僕はそれをネガティブには捉えていません。むしろ業界にとっては、ある意味健全な側面もあると思っています。
というのも、今は美容師の数が多く、いわば過剰供給の状態。そこに価格競争が生まれてしまう。でも、続ける人が限られていくということは、長くやり続ける人の価値が自然と高まっていくということでもあります。ヴィンテージデニムに価値があるのは、数が限られているから。それと同じで、続けているだけで希少性が生まれる側面もあるんです。
毎年多くの方が美容師を目指しますが、その中で残っていく人は決して多くない。だからこそ、この仕事は希望のある職業だと思っています。AIの時代だったとしても、本物の技術を持った美容師は、簡単に代替されることはありません。

そして何より、美容師という仕事は、自由で楽しい。年齢を重ねても、自分らしくいられて、人の人生に関わることができる。「可愛い」とか「素敵」とか、そんな言葉を、おじさんになっても当たり前に使い続けられる仕事って、なかなかないと思うんですよ(笑)。
引き際も、自分で決められる。80歳になっても続けようと思えば続けられるし、やめようと思えばやめられる。誰かのレールに乗る必要がないんです。その自由さも含めて、美容師は本当にいい仕事だなと思います。

- プロフィール
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artifata代表
CHIKA 親 保宏(ちか やすひろ)
都内有名サロンでキャリアをスタートし、圧倒的な行動量と独自の感性で頭角を現す。独立後はartifataを設立し、サロンワークを軸に雑誌、広告、TVなど多方面で活躍。カリスマ美容師ブームを牽引しながら、国内外で確固たる地位を築く。さらに海外へと活動の場を広げ、ファッションショーや『VOGUE』をはじめとするモード誌、ハリウッド女優のヘアメイクなどを手がけるなど国際的にも高い評価を獲得。現在も第一線で活躍し続けながら、独自の美学と哲学を次世代へと伝えている。
(文/富樫聡美 撮影/菊池麻美)