びよう道 vol8. TWIGGY.松浦美穂さん 〜美容道とは美しい生き方のこと。美容師がヘアだけを考える時代は、もう終わりです〜

毎晩のように踊りまくり、1日3箱たばこを吸うヘビースモーカーだった

 

 

振り返ると、自分を大切にすることがびよう道のはじまりでした。20代のころの私は毎日のように自分を痛めつけていましたね。1日に3箱くらいタバコを吸って、お酒を飲んで、朝まで踊る。二日酔いがひどくて、シャンプーのときに「おかゆいところないですか?」って言えないくらいでした。そのころの私は、夜中まで遊んで、人と接して、自分のお客さまとして連れてきたり、撮影の仕事をとってきたりするのが、美容の道を究めることだと思っていたんです。1980年代はそういう時代だった。けれど、その時代に青春できたことは感謝しています。

 

手にたばこのヤニがついていたし、顔もしわしわだったと思う。美容の大敵と言われる日焼けもしていました。明日死ぬ勢いで今日を生きることが、かっこいいと本気で考えていたんです。一つのことをやり遂げるには、犠牲にしなきゃいけないことがたくさんあると思ってた。だけど、「それは間違いだよ」と神様が教えてくれたんです。そのころ無駄な時間をすごしたことが、今の自分をつくっているんですよ。

 

 

やがて好きな人ができて、結婚して、子どもができたときに自分を大事にしていなかったことに気づきました。「私が健康でなかったら、誰がこの子を育てるの?」と。そこから美容って何だろう、健康って何だろうと深く考えるようになりました。

 

みなさんも、美容の道を究めるんだったら、「本当に自分を愛せますか?」とまず自分に問いかけてほしいです。自分を愛せる人だけが、自分以外の愛する人を探せると思います。自分をあまり愛していないと、いい出会いもめぐってきません。美容師たるもの、人をきれいにする仕事だから、まずは自分を大切に、自分をキレイにすることが大前提。自分を磨く努力を、ずっとずっと続けてほしいと思いますね。

 

お客さまをワクワクドキドキさせる美容師になろう

 

 

美容の道を歩む上で、「モチベーション」は絶対に下げてはいけないと思っています。私は、TWIGGY.のミーティングで「今週はどんな映画見た?」「どんな写真集を見た?」って聞くんですけれど、これは「自分のために栄養をつけていこうね」というメッセージなんですよね。

 

日々の中で学んだこと、感じたことをお客さまとの会話につなげていくことで、お客さまとワクワクドキドキする時間を過ごせます。お客さまの言う通りに切る美容師にはなってはいけないと思うんですよ。新しい知識で、新しい感性で、お客さまをわくわくさせるようなアイディアを出せることが大事。でもね、ああしたい、こうしたいって頭の中で勉強していていてもアイディアって出てこないものなんです。心から動かされる衝動があるから、人はものすごく勉強するし、吸収できる。たとえば、私は心からやりたいと思って、世界中を旅したし、数多くの美術館に行ったし、世界的なデザイナーと会ったり、エッジがきいたアーティストを見に行ったりしました。そういう経験が、栄養になっているんです。

 

 

好きだと思うことを辞めない人生を歩むことも、道を究めるために大切なことです。私には約40年のキャリアがあります。その中で、多くの才能ある美容師さんたちが、自分に失望して辞めていくのを見てきました。たとえば、趣味のトランペットを辞めて、ストイックに美容の道を歩いた人。美容師として落ち込んだときに、気晴らしにトランペットを吹こうと思っても、久しぶりだといい音が出ないじゃないですか。それもまたジレンマになって、どこにいても、なにをしても羽を伸ばせないというか、生きている感じがしない。反対に、すごく絵が得意な美容師がいて、彼は絵を描きながらずっと一人で美容室をやっています。それも一つの美容道。美容以外の何かに夢中になってもいいんです。

 

TWIGGY.にも、音楽に走る子がいれば、DJをしている子もいるし、絵描きや、映像作家みたいなことをしている子もいます。みんなそれぞれ何かしらの趣味があるわけですが、私にとってそのことが安心につながっているんです。何でもそうなんだけれど、道を究めるためには、心と体が病に侵されないことが第一だと思います。美容を究めるんだったら、美容と同じように何かを作り上げていくべき。最後まで成し遂げるために、諦めない気持ちを持つために、美容と同じように夢中になれることを探すっていうのは、美容の道を究めるための一つのヒントなんです。

 

 >自分を愛し、人を愛し、地球にやさしく生きる

Related Contents 関連コンテンツ

Guidance 転職ガイド

Ranking ランキング