びよう道 vol8. TWIGGY.松浦美穂さん 〜美容道とは美しい生き方のこと。美容師がヘアだけを考える時代は、もう終わりです〜

 

美容室でも待遇や休日が大切と言われる時代。もちろんそれも大切ですが、美容人生のどこかでは“心も体も美容でいっぱい”という時期があってもよいかもしれません。

 

「びよう道(みち)」は、そんな地道で壮大な鍛錬の道を歩んできた“美容の哲人”に、修業時代に一人前になったと思った瞬間や美容の哲学など、それぞれの美容の道を語っていただく連載企画です。

 

第8回目は、TWIGGY.代表の松浦美穂(まつうらみほ)さんに、これまでの歩みを振り返っていただきながら、美容師として、人として大切にしている考えを語っていただきました。

 


 

美容に向いていると心から感じられたのは、40歳を過ぎてから

 

 

「私、この仕事向いているかも」と思えるようになったのは40歳を超えてからですね。それまでも、アーティストやモデル、セレブなどのお客さまの髪を切っていましたし、多くの有名ファッション誌で仕事をしていました。仕事を通じて、自分の名前をたくさんの人に知っていただくこともできたけれど、それでもこの世界に向いているという確信はなくて、「母親に対して親孝行ができたかな」と思えたくらいだったんですよね。それまでの経験は、すべて今の自分の「クリエイション」のスタートとなり、少しずつ少しずつ自信がついていった気はしますが、決して満足はしていませんでした。。

 

 

実は40歳を過ぎてからの妊娠と出産が、私の人生を変える大きな転機になりました。元々Londonで30年前に出産したときも食事生活を大きく変えたつもりでしたが第2回目の「転機」でしたね。出産に向けて、食生活も見直しました。最初は健康食品を食べるところからはじまり、サプリや酵素ジュースを飲んだりしていたのですが、次第に「食べることを、もっとていねいにやってみよう」と思うようになり、土を育てるところからお米づくりをはじめました。田掻きをして水を入れたときに、ぼこぼこぼこっ、ぼこぼこぼこって水の音がして、土から泡がぽこぽこと出てきたんです。1日置いて、手を入れたら一瞬、水が冷たいって思うんですけれど、土の中は温かいんですよ。そのとき、「生きているってこういうことなんだな」って感動しましたし、「人間も自然の一部なんだ」と思いました。それから、体にとって気持ちい選択をして、美を土台をつくる「トータルビューティー」を発信しはじめたのです。

 

 

もう一つ、大きなきっかけになったのは、秘境を旅したこと。私たちからしたら秘境ですが、そこには昔から暮らしている人たちがいます。その人たちの民族衣装やファッションには、誰にも邪魔されていない、オリジナリティーがあります。ある意味「究極の美」なわけです。その究極の美に、1969年のイヴ・サンローランはインスパイアされたんだなとか、VOGUEで見た70年代のヒッピー風やエスニックな作品も秘境で見たものに影響されていたんだなとか、旅したことでそういうことに気づきました。秘境でインスパイアされたデザイナーさんたちがつくったものに、自分がヘアスタイルをつけるとしたらどうだろうと考えたとき、ヘアスタイルではなく、「あの人だったらこうしたら似合うかも」という具合に「人」が浮かんできたんですよ。

 

それまでは、人よりもヘアスタイルが先でした。正直、ヘアスタイルが浮かんでも仕方がないんですよ。それは、いつかどこかで見たものを、模倣して自分の中でちょっと変えているだけなので。ヘアスタイルじゃなくて、自分の手で生まれ変わる人がイメージできなきゃいけない。といっても、まだまだ私も修業中です。これからもっと究めていきたいですね。

 

>毎晩のように踊りまくり、1日3箱たばこを吸うヘビースモーカーだった

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