秋川渓谷と里山の間にある「予約のとれない美容室」 -山の小さな美容室-

 

東京都あきる野市の檜原街道沿いの美しい自然に囲まれた地域で、ひっそりと営まれている「山の小さな美容室」。オーナーは都内内陸部の唯一の村で、山梨県との県境にある檜原村出身の島崎直人(しまざきなおと)さんです。「本当にお客さまがくるの?」と心配になるような場所にありますが、地元では「予約が取れない美容室」と言われるほど繫盛しているそう。今回は島崎さんに独立までの歩みを振り返ってもらいつつ、「山の小さな美容室」がなぜ地域に愛されているのか教えてもらいました。

 


 

入社3カ月で辞めるつもりだったのに11年在籍

 

 

以前僕が勤めていたサロンには、永瀬正敏似のカッコいい店長がいました。その人を目標にしていたのですが、僕の入社後わずか3カ月で転職してしまい…。その人がいたから入ったようなものだったので、目標を失って辞めようかと思いました。でも、3カ月過ごした時間を無駄にしたくないので、「3年は続けよう」と決めたんです。

 

ところが、3年経つとスタイリストデビューが迫ってきて、「せっかくだし、もう少し頑張ろうと」。さらに4年、5年経つとお客さまがついてきて「お客さまを裏切れない」と思うように。気がついたら材料関係の取りまとめや経営に関する仕事も任される立場になって、結局11年間働きました。でも1年目のころから独立願望はあったんですよ。

 

前のサロンを辞めて、今の場所で独立したきっかけは祖母の法事でした。「酒屋だった場所があいているから、お店出しなよ」とその場にいた親戚に勧められたんです。そのときは、「このエリアでの出店は無理だろう」と思っていましたが、無下に断るのもよくないので、「今度見せてもらいにいきますね」と答えました。

 

 

その後、断る前に一度は見にいくのが礼儀だろうと思って現地に行ってみると、物件の状態がすごく良かったんです。というのも、前のオーナーさんがお店を改装してすぐに体調を崩し、閉店せざるをえない状態になってしまったらしく、使用感の少ない状態でした。これなら、セット面やシャンプー台を足せば低コストでお店を出せそうだったので、断るのをやめて、そこから具体的な話を進めました。やると決めたらそこからはあっという間でしたね。

 

 

お客さまが広告塔 リアル口コミの底知れぬパワー

 

 

もともと僕は多摩地域で美容師をしていたので、お世話になっていたお客さまが通いやすい立川・福生・昭島あたりのエリアでの独立を考えていました。でも、小規模でいい物件はあまりなくて、踏ん切りがつかなかったんですよ。

 

そんなとき、親戚に紹介されて今の物件と出会ったのですが、なんせ人口が少ない地域ですから、普通の人は出店をためらうと思います。でも僕は、お金持ちになりたいわけじゃないし、家族で食っていければいい。もしダメなら違う仕事で頑張ればいい。そのくらいの気持ちでした。

 

ちなみに、独立前、前のサロンの上司からは「お前が路頭に迷って、このサロンに戻ってくる様子が見える」って言われていたんですよ(笑)。正直、僕もお客さまがゼロの日もあるかなと思っていました。でも、いざ出店してみると3年前に出店して今に至るまで、忙しい毎日を過ごさせてもらっています。暇な時間を潰すために持ってきた本やDVDは、レジの裏で眠ったままです。

 

ウチは予約サイトも割引クーポンも利用したことはありません。ホームページとFacebookをたまに更新するくらいで、これといった情報発信もしていないんですよ。お客さまがお客さまを呼んでくださるんです。たとえば、集客のために1000部ほどリーフレットを作って自分たちで配ろうと思っていたのですが、頼んでもいないのにお客さまが近所に配ってくださって、気がつくと近所のコンビニに置かれていたり…。リーフレットが足りなくなったら補充までしてくれるんです。

 

 

>田舎の地元アドバンテージは大きい

 

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