「売名行為」と言われても揺らがなかった。『五番街』はなぜ貧困家庭の子どもの無料カットを創業から40年続けているのか

社会貢献活動が採用のきっかけになることも

 

社会貢献活動の一環として開催しているコンサート『音を楽しむ時間』

 

無料カットの他にも『五番街』では、学生向けの社会体験や盲導犬の募金箱の設置、プロのミュージシャンを呼んでのコンサート『音を楽しむ時間』の開催といった社会貢献活動を行っています。これは無料カットをはじめたときの「この街のために何かしたい」という気持ちと地続きではじめた活動ですが、最近は「CSR(企業の社会的責任)」という言葉も登場し、社会全体がそういう流れになってきていますよね。美容業界でも、カラー剤のチューブを集めてリサイクルし、そのお金で車椅子を購入するといったプロジェクトなども出てきました。

 

この春から新たなスタッフの入社が決まっているのですが、その彼は「CSRに力を入れている美容室ってあるのかな?」と調べ、『五番街』を見つけてくれたそうです。若い世代の意識も変わってきていますし、小さな美容室でも、社会貢献を考えなくてはいけないと思います。

 

社会貢献活動は必須ではない。でも余力があるならやるべき

 

 

先ほども言った通り、社会貢献活動はきちんと事業で利益が出ていて、続けられることが大切です。事業がうまくいっていないのに、「流行しているから」とやる必要はありません。でも、余力があるならやるべきです。それは地域のゴミ拾いでも、どんなことでもいいと思います。

 

僕としては、無料カット券の活動が他の美容室にも広がっていってほしいと思っています。でも実際は、相談してもみなさんなかなか首を縦に振ってくれません。『五番街』はオープン直後からはじめたのでこの活動込みで経営していますが、途中からはじめるのは大変に感じるのかもしれません。でも、僕が発信することで、この活動が広がるといいなと思っています。

 

『五番街』はもうすぐ開業から40年を迎えます。来年には、息子が店を後継してくれるんです。でも、美容師を引退するつもりはありません。息子と働けることや、長く通ってくれるお客さまの髪を切れることがとにかく楽しみです。

 

毎日がおもしろいから、これといった未来の目標は掲げていないんです。昨日と同じように社会の人を喜ばせて、助け合って生きていけたらそれだけでじゅうぶん幸せ。もちろん子どもたちの無料ヘアカットも、ずっと続けていきたいと思っています。

 

<プロフィール>

五番街

代表/大倉太喜生(おおくらたきお)

 

栃木県出身。東京の理容室、美容室を経て、1981年に那須塩原で『五番街』を開く。オープン当初から恵まれない家庭の子どもの髪を無料でカットするなどのさまざまな社会貢献活動を行い、多数の表彰うける。サロンを訪れる人々から人生相談を受けるなど、その人柄と技術は地域の人々から慕われている。

 

(取材・文/小沼理 撮影/八木正弘)

 

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