二十歳の頃、どう過ごしてた? SCREEN KAORIさんの二十歳の頃。
─KAORIさんにも、つまずいた経験や大きな失敗などはありましたか?
あります。それこそ、まだカットがあまり出来ない頃に、モデルカットのコンテストに出たときのことです。コンテストの本番の最中に緊張で頭が真っ白になって、切り方がわからなくなってしまったんですよ。
「あれ、これってどうやって切るんだっけ? どうしよう…」と思って、最前列で見てくれていたオーナーの方に「助けて!」という視線を送ったのですが、もちろん本番中なので教えてもらえるわけもなく…。オーナーも、身振り手振りで「いいからやりなさい、頑張りなさい!」みたいなことを伝えてくれましたが、あれは見ている側もかなり不安になっただろうな、と(苦笑)。

自分がオーナーの立場になった今振り返ると、そんなレベルなのに出させてもらっていたこと自体がありがたいと感じますし、私のやりたいことを応援してくれていたんだな、と温かい気持ちになります。
ちなみに、そのコンテストはなんとか切り方を思い出し、入賞することができました。
─入賞されたんですね!すごい…! レッスンなどでつまずいたことはなかったですか?
そうですね。本当に丁寧に教えてもらっていましたし、どうしても克服出来ない技術などはありませんでした。それこそ、辞めたいと思ったことも一度もないんです。私自身、「絶対に辞めないぞ!」と思ってこの世界に入ったこともありますし、素晴らしい環境で働かせてもらっていたので、楽しい毎日でした。
モデル集めに関しても、モデハンするよりも紹介の輪を広げていく方が自分には合っている、と思っていました。来てくれた人に「必ず2人紹介してもらう」ことを意識していたので、大きくつまずくことはなかったですね。ただその分、「この人になら、紹介したい」と思ってもらえる人間でいることは常に心がけていました。

─KAORIさんのモチベーションの高さは、どこから来ていましたか?
美容師の仕事が好きだった、というのももちろんありますが、同期がいなかったことも逆に良かったのかなと思っています。同期がサロンにいない分、目の前にいるのはオーナーだけ。オーナーの意識の高さ、モチベーションの高さを日々感じながら働けたことが大きかったように思います。
同世代からの刺激という点では、やっぱりコンテストの場が主でしたね。そこに出ている人たちが、自分にとっては同期というか、良きライバルのような存在で。コンテストは熱量の高い方が集まる場なので、そういう環境下に身を置くことで、私も気持ちをキープできていたのだと思います。
─当時、特に力を入れて頑張っていたことはなんでしたか?
オーナーの次に生え抜きのスタイリストとしてデビューしたのが私だったので、キャリアの差を感じる場面はやはりありました。デビュー直後はまだ自分に自信もなかったですし、技術は到底敵わない。お客さまに選んでもらう美容師になるにはどうしたらいいのか、ということをすごく考えていましたね。

技術で今すぐ追いつくのは無理な話だったので、まずは人として受け入れてもらえるように、とにかくお客さまと近い存在になりたいと思っていました。ご来店されたお客さまには、その日にお話ししたことや、おすすめのお店などを書いた小さな手紙をお渡ししたり。
─当時を振り返って、こうしておけばよかった、と思うことは何かありますか?
後悔していることはありませんが、強いていうなら、コツコツと基礎を積み重ねてみてもよかったのかもな、と思います。先ほどもお話ししたように、チャレンジ精神の方が勝ってしまい、ベーシックを固める前に色々なことに挑戦して、実践の中で学んでいくことが多い美容師人生だったんですよね。結果的には、そのやり方が自分にあっていたと思うので、どちらが良かったのかは実際のところわからないのですが…。
一度自信をなくした時、また一からベーシックを学び直したという経験があるので、今のアシスタントたちには、基礎をしっかり教えてあげたいなと思っています。
二十歳のみんなへ

今の時代はすごく便利になっているし、私たちがアシスタントの頃よりもはるかに情報量が多くなっていますよね。良いことでもある反面、それによって起こる弊害みたいなものもあると思っています。
私がアシスタントの頃からずっと意識していることは、自分でアンテナを張って気づいて、その気づきに対して考えて、その上で行動を起こすこと。その3ステップを、今でもすごく大切にしています。ただ、便利になって情報が増えた今は、この3つのうちのどこかを端折ってしまうことが増えている気がするんです。それだと、どうしても何かが足りなくなってしまう気がして。

例えば、気づいたことを元に行動を起こしても、考えるフェーズをスキップしてしまうと自分に落とし込めていなくて説得力がなくなってしまう。アンテナを張れていないまま、与えられた情報だけで行動していると、結果が伴わなかったり…。一見問題ないように見えても、どこかでつまずくことが出てくるように思います。
なので、どんなに便利な時代になっても『自ら何かを掴み、自ら考え、自ら動く』という3つは、変わらず大切にしてほしいですね。一つずつそのステップを踏みながら進めていくことは、長い道のりに感じるかもしれないけれど、コツコツ努力したことは絶対に裏切らないはず。
便利な時代である今、賢く動くことはできるでしょうし、近道はできるかもしれない。でも、“楽な近道”はないと思っています。目の前のことに向き合い、一つずつ丁寧に重ねていってほしいです。
★Extra Contents
お金がないアシスタント時代、よく食べていたものは…?

(文/岩木日向子 撮影/Yui Ogano)
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