20%の余裕で軽やかに生きる “華の88年世代”のやり方 ーALLY 阿部 吉晃さん U29次世代美容師 ー
夜は六本木でバーテン、休日はフォトシューティング
人気店でハードに働いていた反動からか、個人店に転職してからはかなり遊びました。サロンワークはマジメに。練習はソコソコに（笑）。オーナーが帰ったら速攻で渋谷や六本木へ繰り出して、週3日くらいは朝帰り。クラブでDJをしたり、バーテンダーをしたりと、好きなことをさせてもらっていましたね。
僕は何ごとも100％で打ち込むことはしないんです。美容師だけじゃ満足できない。だから美容師で、自分のリソースの80%を使うとして、残りの20％の余裕をもっておきたい。そして、その余裕が新しい可能性を生み出してくれていると思っています。実際、クラブ通いで同年代の仲間が増えたし、バーテンダーをすることで、サロンワークだけでは築くことができない人脈ができました。
それに20%力を残しているから、僕は疲れないんです。よく周りから「軽やかに生きていそう」「楽しそうに見える」と言われますけどその通りで、好きなようにゆらゆら生きているんですよね。
アシスタント3年目くらいからは、趣味でフォトシューティングも始めました。きっかけは、プロのカメラマンの作品撮りを見て「これなら俺のほうが上手いわ」と思ったこと。それで自分でカメラを買って、どんどんハマっていきました。集客のためではなく、純粋に好きでやっていたのがよかったのか、すぐに『sweet』（宝島社）のフォトコンテストで2回連続準グランプリをいただくことができました。これも20%の余裕があったからできたことです。
同年代で業界を盛り上げたい！ 88 works立ち上げ
88年生まれというと、プロ野球ではいわゆるハンカチ世代。田中将大さんや坂本勇人さんなどスター選手ぞろいです。美容師も88年生まれで集まったら面白いんじゃないかと思って、同い年の仲間と88 worksという撮影チームをつくりました。メンバーは基本、88年と89年の早生まれのみ。2カ月に1回くらいスタジオを貸し切って撮影会を開いています。エリアやサロンの枠組みを超えて、同年代で集まっているのが面白いということで、業界誌に取り上げていただいたこともあるんですよ。
いろんなカタチで作品を掲載しているうちに、僕のスタイルを支持してくださる方も増えてきました。最初のころこだわっていたのは、ハーフのモデルさんを起用すること。外国人風のスタイルを作るために、世界観を統一したいと思ったんです。ちなみに、僕は流行に乗るのが嫌い。外国人風のスタイルが流行り出すと、可愛いスタイルを作り、それが流行り出すと、また外国人風のスタイルを作って、という具合です（笑）。
ちなみに今はスタイルだけでなく写真の質でも勝負しています。カメラやデジタル写真はやり切った感があるので、次はフィルムカメラでやろうと。フィルムで撮影している美容師さんって、いても数人だと思います。とにかく、僕はあまのじゃくなんです。人と同じは嫌。先の先を読んで、流行に飲まれないようにやっていきたいんです。
目指すのは美容と写真の融合
実のところ、僕は美容師だけじゃなく、カメラマンとしてお金をもらって仕事をしています。今考えているのは、美容と写真の融合。それがどういうカタチで実現するのかはまだ見えないけれど、それに向けて動いている最中です。現段階で考えているのは、美容と写真を融合させた写真展。内容はまだ明かせませんが、すでに準備を進めています。
美容以外にもいろんなことに手を出しているから、人によっては「美容に100％全力を注ぎ込めよ！」って思うかもしれない。でも僕は、あえて80％でいきたい。残りの20％が、僕のフットワークを軽くしてくれているんですよ。
もし、20%の余裕ができたとしても、何をしていいかわからない人がいるとしたら、「撮影を勉強してください」って勧めたいですね。SNSで情報発信する時代、美容師さんのスペックとしてカメラの技術は必須だと思います。いつか自分の世界観を出せるようになれば、「あの人気になるよね」という話になる。流行を追いかけているだけだと、真似事だけで終わっちゃいますよ。
こんな風に人と違うことばっかり言っているし、生意気に見えるからか、僕にはアンチもいるみたいです（笑）。だけど、誰に何を言われようが、名前があがった者勝ちかなって思っているので。これからも自分らしく目立って、そして、突き抜けたいと思います。
- プロフィール
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ALLY
スタイリスト／阿部 吉晃（あべ よしあき）
福島県出身。国際文化理容美容専門学校国分寺校卒業後、都内有名サロンに就職。数カ月で退職後、都内個人店に転職。アシスタント時代からフォトシューティングに力を入れて、精力的に作品撮りをおこなう。1988年生まれ、1989年早生まれの美容師を集めたクリエイティブ集団『88works』の代表を務めるなど、サロン外でも活動を展開している。
（取材・文／外山 武史 撮影／菊池 麻美）
