美容師のためのゼロから始める創業計画書の書き方!

熱意だけではダメ! 創業計画書は「説得力」をあげることが大切!

 

基本がわかったところで、次は応用編! 萩原健志税理士事務所・代表の萩原健志さんに、よい創業計画書を書くためのコツを教えてもらいました。

まず始めに、「『熱意が伝われば審査が通る』というイメージがありますが、それは少し違います」と言う萩原さん。

「確かに事業の成功には多くのパワーが必要なため、熱意も重要です。しかし、日本公庫の視点は、より現実的。熱意だけでなく、事業が成功するのか、実現する可能性が高いか、整合性があるかを創業計画書でチェックしています。この3つが揃っていないと説得力に欠けると判断されます」

よい創業計画書は返済能力をしっかりと示せる説得力が不可欠。説得力をあげるためには「整合性」と「実現可能性」の2つを抑える必要があるのです。そこで、より伝わる創業計画書を書くためのポイントを、項目ごとにご紹介いただきました! 図に印がある、1〜8つのポイントを見ていきましょう。

 

(出典:日本金融公庫)

 

POINT1.「創業の動機」は具体的な数字・金額プラス! 

「美容師としての熱意を最も伝えやすい項目が『創業の動機』です。ここでさらに説得力を上げるためには、具体的な数字や金額を入れて客観性を上げること。

『自己資金が目標額の200万円に達した』『固定客が100 人ついて、独立の自信がついた』などのほうが、単純に『独立が夢だった』や『成功する自信がある』よりも具体的イメージを持ちやすくなります。また、『⻑年の夢にもかかわらず自己資金がない…』など、動機と行動がマッチしていないと説得力に欠けるので注意が必要です」

 

POINT2.「経営者の略歴等」は客観的な実績を意識して!

「この欄では勤務先や勤務年数、役職だけではなく、仕事の経験値やスキルも見ています。『受賞歴』『指導歴』『指名数』など、客観的な実績を入れることで説得力がアップ。従業員の教育経験や、顧客管理や集客など経営面でも携わっていることもアピールポイントになりますよ」

 

POINT3.「取扱商品・サービス」はメニュー表の添付と独自のサービスがカギ! 

「実際に店舗で取り扱うサービスのメニュー表が完成しているときは、コピーを創業計画書に添付すると説得力が増します。ただし、『メニューが低価格にもかかわらず、想定の客単価が高い』というように整合性がないと説得力が欠けるので注意してください」

 

POINT4.「取引先・取引関係等」は見込み客の人数とその理由をはっきりさせる! 

「美容という業種の販売先は100%一般の個人のお客さま。美容師の創業計画書の「販売先」の欄は「一般個人」と書くことになるでしょう。とはいえ、単に「一般個人」と書いても、実際に集客ができるのか、伝わりません。この欄では、見込みの固定客の人数を記載することで説得力がアップ。しかし、出店立地が現在の勤務サロンと離れていると、既存客が出店するサロンへこない場合もあります。 そんなときは、人通りの人数や、立地のよさ、技術力の高さなどを根拠に、固定客に代えて新規獲得の客数を見込み客に含めることもできます。

ただ、背伸びをした客数を書くと実現可能性がなくなり、説得力に欠けるので注意しましょう」

 

POINT5.「従業員」は実現可能な人数に! 

「開業時に雇⽤する予定人数を記載します。従業員が多いほど人件費としてサロン運営費に大きく影響します。この後ご説明する、『必要な資金』や『事業の見通し』にも影響するため、実現不可能な人数にすると説得力がなくなってしまいます」

 

POINT6.「お借入の状況」では支払いの滞納がマイナス評価になるので注意! 

「ここでは、融資を申し込む時点の借入の状況を記載します。住宅ローンなど一般的なローンであれば、マイナスポイントにならないため心配する必要はありません。ただし、これまで確定申告をしていなかったり、ローンや税金を滞納していると信⽤力が低下。説得力を上げるために、ローンは計画的に組み、支払いも忘れずにしましょう」

 

POINT7.「必要な資金と調達方法」は通帳コピーで自己資金を伝えて! 

「サロンの什器やシャンプー台、人件費など、必要な資金はおおよその金額ではなく、より詳細な金額を書くこと。そのためには、内装工事や設備などの見積書、物件の契約書、インテリアの価格、広告宣伝のプランなど、金額のわかる資料のコピーを添えるとより説得力が増します。

自己資金を示すためには、通帳のコピーを添付することも大切です。自己資金は事業主の本気度を示す最も重要なポイント。面接でどんなに熱意を伝えるよりも、コツコツと貯金をした通帳を見せるほうが説得力は上です」

 

POINT8.「事業の見通し」は今まで書いたことをおさらい! 

「事業の見通しは、これまでの項目についてじっくりと考えていれば自然と計算できるはず。 売上は、サービスの価格と予想の客数から、原価や経費は、取扱商品、従業員数、内装工事、賃貸契約書、広告プランなどの資料から計算できます。逆に、売上や利益で実現可能性が低いものや、これまでの項目と整合性が合わない事業の見通しは説得力に欠け、マイナスポイントになってしまうのです」

 

以上が、ワンランク上の創業計画書を作るためのポイントです。「『必ず融資が受けられる!』という裏技は存在しませんが、ヒントは掴めたのではないでしょうか」と萩原さん。

キーワードは「説得力」。実現不可能なことや、つじつまが合わない内容を書いてしまうと、この「説得力」が低くなってしまいます。創業計画書では、想いだけでなく、日本公庫が納得して、融資できる人物と分かることが大切です。


プロフィール
萩原健志税理士事務所
代表/萩原 健志

横浜市・品川区周辺の美容師開業に強みをもつ税理士事務所を運営。『美容室の開業と経営を融資と経理でサポートする会計事務所』をコンセプトに、これまでの実績と経験に基づく実務の面から若いサロンオーナーの夢をしっかりバックアップ。代表の萩原氏の両親は30年以上理容室店を経営しており、その様子を幼い頃より見て育つ。
https://simple-tax.jp/

 

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