「飾らないけど、強いもの」とは何か? DaB 山田千恵、Cocoon SAKURA、Hank. 米澤香央里が語る、女性美容師のデザインと生き方−soucutsの庭Vol.10−

「可愛い」を、どう教育する?

 

 

内田:最近、増えましたよね。そもそものカットのベース自体が違うんですかね? 自分なりのマイルールってありますか?

 

山田:カットベースが決まっていなかったら、デザインも決まらないかなっていうのはありますね。いざ、ちょっと触って動かしてみても、「なんか決まらないな」ってなる。自分の中では、一つのヘアから何パターンかスタイリングできたほうがいいと思っているので、元のベースってすごく大事なんですよね。だから、人がカットした髪って動かしづらいんですよ。カットモデルをちょっと触ろうとしても、「あ、やりづらいな」みたいな。

 

内田:どこのサロンでも、ベーシックとして、ある種きちんと髪をつないで切るというか、形をしっかり捉えてカットするというのがあると思うんですけど。そこから先の「崩すためのカット」って、また別軸なのでは?と思っていて。そういうことを、みなさんがどうアップデートしてきたのかが気になります。SAKURAちゃんって、レザーがメインじゃないですか?

 

SAKURA:うちはレザーのイメージを持たれるんですけど、レッスンはハサミなんですよ。レザーを使うのは本当に最後の最後なので。営業中も、ハサミとレザーは半々ですね。

 

内田:実際、結構しっかりワンレンとかレイヤーとか、ベーシックをやっていく感じなの?

 

SAKURA:そうですね。7スタイルくらいあって、ワンレンだったりとかもやります。でも、カットしたときに切り口があって、その髪が落ちたときにどういう効果が生まれるのか。その組み合わせを知るためにやるのが、うちでいうベーシックなんです。その形にすること自体がゴールではない、ということを教えたいんですよ。決められた形どおりに切れることがゴールではないじゃないですか。なぜかというと、お客さまはその形を望んでいるわけではないから。最終的には、自分がお客さまだったり、モデルさんとやりとりしながら、「どうしたいのか」に対応できるようにならなくちゃいけない。そのためのベーシックなので、ただそのとおりに切れることよりも、「それによってどう変わったのか」を見てもらう。そういうやりとりは、すごくしますね。そうしているうちに、勘のいい子だったら、「ここを残したら、ちょっとシュルッとして可愛いな」みたいな、髪の変化や効果に気づくようになる。そういう伝え方を、なるべくするようにはしています。

 

山田:一番難しいですよね、その辺の伝え方って。「シュルッと」とか(笑)。

 

内田:テストでは、何が合格基準なの?

 

SAKURA:それはやっぱり、狙ったシルエットができていること、バランスが合っていることですね。例えば、後ろのフォルムと前が合っているとか。まず、一応決まった形はあるので。

 

内田:じゃあ、左右対称にきっちり切れているかどうかは、そんなに大きな要素ではない?

 

 

SAKURA:うーん。もちろんベーシックでウィッグなので、ものすごくズレるっていうことは、正直ないと思っていて。ただ、頭を球体として捉えて、髪の毛をどこに落とすか、どんなフォルムをつくるかを大事に考えているので、切り口そのものよりも、髪が落ちたときの重なりを重視しています。なので、「長さが同じか」というよりは、「フォルムが左右同じように切れているか」という見方に近いかもしれないです。

 

内田:DaBさんはどんな感じなんですか? ベーシックの考え方は。

 

山田:私は今、ベーシックは教えていなくて。ベーシックからもう一段上がった、モデルカットを見ています。

 

内田:モデルカットは、千恵さんも見るんですね。

 

山田:月に何回かは。せっかくモデルカットが始まったんだから、自分も見たいなと思って。それまでウィッグでベーシックを学んできて、マニュアル的なテクニックは身につけているんですけど、いざ人間でやるとなると、人の肌とか顔とか、全体のバランスとか、いろんな要素が出てくる。そこで、「じゃあ、どう可愛くする?」という課題が出てくるんですよね。そのモデルにとって、何が可愛いのか。そこが一番絶妙じゃないですか。

 

内田:難しいですよね。これを教育するのって、教育する側としては課題だなと思っていて。「可愛い」とか「これがいい」って、ある種、その人の主観でもあるじゃないですか。でも、「外している」のか「外れている」のかっていう違いは大きいよね、という話もある。お三方のデザインもそうだと思うんですけど、「ここがシュルっとしてたら可愛い」みたいなことを、どう言語化するのか。あるいは、どう一定の基準にしていくのか。教育していかなきゃいけない立場として、みなさんはどんなことを考えていますか? 米澤さんとか、どう?

 

 

米澤:私はHank.に入って今2年で、自分の技術自体も見直したいというところがあって。代表に教えてもらう中で、「まだこういう表現の仕方があるんだ」と気づくことも多いですし、改めてカットの奥深さを感じています。千恵さんがおっしゃっていたように、自分でカットしていないと、動かし方も決まらなかったりすると思うんですけど、アウトシルエットだったり、アウトラインとインラインのバランスだったり。そういうところはすごく大事だと思っています。私は普段、スタイリング剤をあまりつけないんです。撮影のときもそうですし、お客さまにもほぼつけなくて。その人自身が持っている柔らかさみたいなものを引き出したいんですよね。飾らない、フワッと動くような、動画のような世界観。それをつくるために、カットやブローといった基礎を置きながら考えているのかなと思います。

内田さんとも前に話していたんですけど、ヒントになる映画だったり、画像だったりを引っ張ってくるのはいいと思うんです。でも、そこからどれだけ自分の言葉で語れるかというか。そのためには、カルチャーだったり、ファッションだったり、アートだったり、もともといろんなものを知っていないといけないと思うんです。「可愛い」の幅が狭いと、自分が表現するコンテストでも、作品をチェックしてもらうときでも、やっぱり語れないんですよ。「どこがどう可愛いと思ったの?」って聞かれても答えられなかったり、イメージが浅かったりする。だから、単純に自分の好きなものだけじゃなくて、そこからさらに引き出しを広げていくことが大事なのかなと思っています。カットだったら、「どうしてこのフォルムなのか」とか。技術だけじゃなくて、その理由までプラスして説明できるようにしたい。言葉にするのってすごく難しいとは思うんですけど。

 

内田:千恵さんは、その時々の感覚でつくることが多いんですか? それとも、「こういう髪質だったらこう」というように、ある程度パターン化されているんですか?

 

山田:頭蓋骨と髪質、それから襟足の毛流とかって、だいたいちょっと似ていたりするんですよね。「このパターンなら、こう攻めたほうが絶対に収まる」というのはあります。そこは、髪の毛と骨格だけの話ですけど。あとは、その人の「存在」があるじゃないですか。その存在に対して、ニュアンスとかディテールをどう加えていくか。ニュアンスって、その人の存在を表すポイントの一つになるから、それをどういうふうに自分がデザインしていくのかは、一番面白いところかなと思っています。普通のショートでも、「どこで切ったの? それ可愛いね」って、人が思ってくれるもの。そして、本人も満足するもの。そこが美容師として、すごく大事な部分かなって思う。ベースとなるヘアデザインがあった上で、その人の一番の魅力がグッと出てくる。そのポイントって、どこなんだろう、みたいな。そういうニュアンスとかイメージを言語化して伝えるっていうのが、私は一番無理なの……(笑)。

 

3人の意外(?)なカウンセリングスタイル

 

内田:また違う角度で聞きたいんですけど、3人って、テクニカルなことはもちろん、単純に「お客さんが自分のことを好きで来てくれている」という印象もあって。例えば、「ここがこうハネちゃう」という悩みに対して、「ハネちゃっていいんだよ」と言って、それが成立するというか。「こうするのが可愛い」とか、「ここがズレているのが可愛い」「うねっているのが可愛い」って、ある意味、主観じゃないですか。その主観を、お客さん自身が肯定できるようにする。それが、その人の世界観なのかなと思っていて。そういうところが、3人はすごく強いのかなって。それって、戦術としてやっている部分はあるんですか? カウンセリングでは、悩みを聞いて解決したいというスタンスなのか、それとも、割と「おまかせ」で任せてもらいたいという感じなのか。

 

SAKURA:私はですね、結構しっかり話しますね。「これがいいと思うよ!」って一方的に決めることはしないです。「お任せで」と言っていただくことも多いし、関係性によってはお任せしてもらうこともあります。ただ、初めてだったり、まだ担当回数が少なかったりするときって、私が思う「似合う」って、すごく不透明じゃないですか。今ここで私が「似合う」と言ったとしても、その人が普段いる場所でどう思われるか、という状況もあるわけで。「似合う」って、そのくらい不透明なものだと思うんです。だから、私は「似合うとかないから」っていう話をしちゃうというか。

どんな状態からでも、その人の「こうなりたい」に対して、ちゃんと応えられるようにしたい。そのためには、まずカットで、その人の髪の一番いいところを見つけることが大事だと思っています。例えば、ぱっつんボブにしたいとしても、この髪質に本当にぱっつんで切ったら真四角になっちゃうな、硬くて厚みが出ちゃうな、ということもある。だったら、ハチ下をどう切るか、下はぱっつんに見せつつ、上は少しずらしておいたほうがいいな、とか考えたり。本人がやりたい、こう見せたいと思っている形に対して違うのであれば、似合うとか喜ぶとか私はないと思っているから。

だから、まずはその人の骨格や髪質、その素材にフィットしながら、狙ったところに持っていけるようにする。その考え方を、ベーシックに落とし込んだり、後輩に伝えたりすることも大事にしています。私自身も、サロンワークではまず「その人にフィットするか」というところから考えます。もちろん、それとオシャレはまた別軸ということもあり得ます。例えば、「○○さんなら、ここがこうなっているほうがフィットしていていいと思う。でも、今言っていた、ちょっと寝癖っぽい感じを出したいなら、ここは少し残してみる?」とか。「ただ、その代わり、ちょっとハネると思うよ」とか。それが本人にとっていいと思うかどうかは、その日の気分やコンディションでも変わるじゃないですか。だから、その人のオシャレの匙加減について、「この人はこれを使えるな」「この人にこれは、ちょっと難しいな」というところは、かなり考えますね。だからどういう人なのか、ということは結構しっかり話して知るようにしています。

 

内田:極論ですけど、Cocoonさんはノンブローカットを提唱しているじゃないですか。もし、「バッキバキにストレートアイロンを入れたいです」というお客さんがいたら、やるんですか?

 

 

SAKURA:うーん……。その人がその仕上がりを喜ぶなら、最後に入れることはあると思います。ただ、できるだけアイロンを入れなくてもいい状態を、カットでつくりたい。そのうえで、少しずつでも「入れなくてもいいな」と思ってもらえるようには、毎回お話しすると思います。

 

内田:一定数の支持を得ている美容師さんって、僕個人の見解ですけど、自分のマイルールに沿って、そのスタイルを求めてお客さんが来てくれることって、結構大事なのかなと思っていて。逆に、聞きすぎちゃうと「自分の売りって何なんだろう」「何を打ち出したらいいのかわからない」という人も多いのかなと思っていて。今の話でいうと、SAKURAちゃんは、結構「聞く」ということを大事にしながら実績をつくってきたタイプなんですか? 自分の意志やスタイルを売るというよりは?

 

SAKURA:そもそも、自分のスタイルって、自分ではあまりわからないというか。それは相手が感じることだと思うんですよね。結果的に、私のスタイルを好きで来てくれている部分もあるのかもしれないけど、根本にあるのは「その人にフィットすること」なんです。例えば、ちゃんと身体がキレイに見えるジャケットを着たいじゃないですか。今流行っているからといってビッグジャケットを着ても、やっぱり人によっては似合わないこともある。でも、ビッグシルエットでも、「この人だったら丈は短いほうがいい」「ボタンの位置はここがいい」とか、その人に合わせることはできる。そのためには、まず一番フィットする仕立てを知らないと、崩せないと思うんですよ。「崩す」ということを言葉で教えるのは難しい部分もあるけど、フィットがわからなかったら、崩せない。私はそう思っています。だから、自分のスタイルを求めて来てもらっている、という感覚はあまりないですね。

 

内田:その人、その人の悩みを聞いて、そこにコミットしていくというスタイルが多いってこと?

 

SAKURA:多いですね。

 

内田:千恵さんはどうですか? お任せが多そうなイメージがありますけど。

 

山田:長く来てくださっている方が多いというのもあるんですけど、初めての方でも「ショートに切りたいんです」と紹介で来てくださることがあります。そういう方って、意外と「何がいいのかわからないから、やってください」ということも多いんですよね。だから、まずは話を聞いて、ムードとしてどっちの方向がいいのかは確認します。ただ、「これにしたほうがいいですよ」と決めてしまうというより、現状の髪の毛の状態から「こういうのはどう?」という形をつくって、実際に見せてあげるんです。そうするとイメージが湧くというか、「次の絵」が浮かびやすくなる。髪の毛を動かしながら、いくつかパターンを見せていく感じです。話をしながら、「こういうのはどう?」「じゃあ、これは?」って、ニュアンスの違うものを何パターンか出して、「この3つだったら、どれがいい?」って聞く。そうすると、どこかでその人のツボに当たるんですよね。なるべく早めに「じゃあ、切ろう」という準備ができるようにする、みたいな感じです。

 

内田:じゃあ、意外と「任せて!」って感じで、一発でやることはあまりないんですか?

 

 

山田:何もないところから、いきなりは……。一応、「こういうのどう?」っていうところから始めて。その中で、「これが絶対いいだろうな」と思ったら、「もうこれ、こんな感じでいきましょう!」って提案することはあります。逆に、内田くんがどうなのか聞きたいんだけど。

 

内田:僕は、めちゃくちゃお任せされたいタイプなんですよね。あんまり四の五の言ってほしくないというか(笑)。どちらかというと、僕はやりたいものがはっきりしているし、売りもはっきりしているから、なんていうか、江戸前の寿司屋みたいな感じが理想なんです。「今日はこれがイキがいいから、これ食べてください」みたいな。それが理想だし、自分の働き方にも合っているなって思うんですよね。ヨネちゃんはどうですか?

 

米澤:私はカウンセリングは早いほうで。「お任せ」と言われたら、めちゃくちゃ嬉しいです。その中でポイントにしているのは、まず「嫌いなところ」と「嫌なところ」のゾーンを先に聞くこと。あとは、骨格や髪質もカウンセリングして、その上で自分のレールに乗せていく、という感じです。ただ、初めてのお客さまには結構時間をかけるかもしれないですね。何回も来てくださっていて、もうお任せでお願いしてくれる方に対しては、最近ちょっと難しさも感じています。「また次も来てもらうためには、どういう提案をしようかな」って。むしろ、そっちのほうが怖さはあるかもしれないです。

 

内田:聞きすぎちゃうと、「言った通りにやったけど、なんか違うやん」みたいなときってないですか? 俺、結構あると思っていて。本人が「こうして、ああして」って言うから、その通りにやることもあるんですけど、結果、「本人もこれ、気に入ってないんじゃないの?」みたいなことがある。だから結局、任せてよって(笑)。そのほうが成功することが多いというか。どうっすか? まあ、場合によるか……。

 

山田:パーツで聞いちゃうと、ダメよね。

 

SAKURA:例えば、「前髪は絶対に短くしたい」と言われたら、「その前髪にするんだったら、こっちのほうがよくない?」とか、「この形だと良くないよ」っていうのはありますよね。

 

内田:あと、たとえば「前髪短いの、どうですか?」って提案して、「え、似合うと思います?」って聞かれるの、僕すごい嫌いなんですよ(笑)。「似合うと思うかどうかは、こっからだから!」って(笑)。これ、お客さんへのディスではないですよ!

 

SAKURA:そしたら……「やってみよ! 伸びるから!」って言っちゃうかな(笑)。「やりたいんだよね? じゃあ、やってみよ!」って。

 

内田:「私が似合わせられるから」ってことだよね。だからSAKURAちゃん、結構パワー系なんだよね、ほんとは(笑)。さっき、ちょっとカッコつけたよね(笑)。

 

山田:さっきとちょっと違うよね(笑)。

 

SAKURA:いやいや!(笑)。でも、最初はやっぱり、「その人がどうしたいのか、なんでそうしたいのか」がないと、やれないんですよ。そこをクリアした上で、「大丈夫だよ、任せて」という感じになる。「ここをこうしたいんだったら、バランスはこうだから」っていうことを説明しながらやっていく感じです。だから、さっき言ったことも、どっちも本当です(笑)。

 

内田:千恵さんも、そういうタイプなのかなと。「私に任せてよ!」みたいな。

 

山田:ずっと来てくれている人は、もう本当にそうですね。さっきは初めての人という想定だったから、「どうしたい?」「どんな自分になりたい?」っていうのは、まず聞く。

 でも、どういう形にするかは、「私が考えるね」みたいな感じかな。

 

>女性美容師は、インプットしない?

 

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