夜営業で知ったプラス540円の価値。創業70年を超える老舗美容室3代目の想い―hull濱田健太さん

 

ひらめきと実現力で、日本初の試みに挑戦。これからも地域自体を盛り上げていきたい。

 

 

夜営業はお客さまからとても好評なので、今年の4月から昼夜2部制の営業スタイルをはじめることに決めました。夜スタッフの雇用も考えているのですが、他の美容室で働く美容師さんの副業として、うちのスペースを貸すことも考えています。夜営業をはじめて、うちの美容室の悩みが一つ解消されはじめたように思います。

 

うち創業した70年前からカット料金が4000円なんです。

創業当時はこの地域では「一番高い」と言われていたのですが、時代が変わり安い価格のほうになってきました。だから「カット料金の値上げをどのタイミングでしようかな」とずっと考えていたんです。

 

別途料金を作ったのは、この悩みを解決しようと思ったから。値段を上げることでお客さまがこないリスクもあり怖かったのですが、夜営業をはじめたことで、初めて料金を上げることができました。

 

夜の時間はお客さまからとても気に入ってもらえているので、4月から夜料金をプラス1000円にしようと思っています。カット料金を上げることができれば、そのぶんスタッフたちに還元できますから。

 

現在は16時で帰るスタッフは全員時給なのですが、店で定めた基準を超える実績を出した場合は、そのぶん時給にプラスして、年に2回のボーナス支給という形で渡すことを考えています。この給与体系は4月に導入したいと思っているところです。

 

 

そして実は春から美容室にコインランドリーも併設する予定なんです。これは働く主婦スタッフの家事をひとつでも減らして帰ってもらうことが目的。働いている間にコインランドリーで洗濯を終わらせられれば、そのぶん家で他のことに時間を充てられます。

 

もちろんお客さまの使用もOKです。洗濯物を持ってくれば、美容室で髪を切ったり、2階にあるカフェ「はま茶」でくつろいでいる間に洗濯完了。斬新な形ではあるものの、美容室やカフェで過ごす時間を有効活用できるので、需要はあると踏んでいます。

 

また、ゆくゆくは美容室の敷地内を公園にしたいとも思っているんです。お金を払わなくても誰もが訪れられる憩いの場にできたらいいな、と。店を街に定着させるために重要なのは、いかにお客さまのライフスタイルに寄り添えるかと、お店に足を運ぶハードルをどれだけ下げられるかだと思うからです。

 

現在この地域では大きなスーパーや保育園までもが潰れてしまい、街に空き家がどんどん増えています。今後はそういった場所を活かして、何店舗かお店を持ちたいです。それは美容室でなくてもよくて、とにかくこの街の人たちが活躍できる場所を提供したい。

 

僕、職業は美容師だけど、その肩書きだけに執着せず、常に多方面に向けてアンテナを張っていたいです。

 

その根底にあるのは、“生まれ育ったこの街で、自分に関わった人たちが輝ける場所や、個性を生かせる空間を作っていきたい”という想い。そういうことを丁寧に続けていけば、この地域に人を呼ぶことにも自然につながっていくと思うんです。

 

プロフィール
hair salon hull
オーナー/濱田健太(はまだけんた)

神戸市元町のサロンで働いたのち、2007年に祖母の代からの美容室「ミスターハマ」を継ぐために兵庫県高砂市に戻る。3年後、店名を祖母の名前からとった「hull」に改名。美容室では、ハンドメイド作家が雑貨を出店する「月曜市」を年に2回開催。その他にも小学校で教壇に立ったり、地域の街づくりメンバーになったりと、美容師としてだけでなく地域を盛り上げる活動にも積極的に参加している。サロン2階のカフェ「はま茶」も人気。

 

(取材・文/鈴木美奈子 撮影/奴井名惠太)

 

  ライフマガジンの記事をもっと見る >>

Related Contents 関連コンテンツ

Guidance 転職ガイド

Ranking ランキング