沖縄のビーチに現れた移動式ヘアサロン。トレーラーに込めた夢の叶え方とは? 異色のキャリアを経て33歳で理容師に。自然と家族、そして髪。すべてがつながった梶田貴伸の海辺バーバーライフ
土地が見つからず、移動式スタイルに
――読谷村のサロンに入社して、どれくらい働いていたんですか?
5年半お世話になりました。沖縄の人たちや環境を知るという意味では、すごくいい経験になりました。40歳でお店をもちたいという目標があったので、3年目に開業できるように土地を探していたんですけど、全然見つからなくて。土地を持っている方たちは、みなさん子孫に渡していくのが常なので、他人に渡すということをほとんどしないんですね。販売に出ている土地も、資金力では企業には到底かないませんでした。どうしようかな…と考えていたときに、たまたま海外の移動式理容室の記事を見たんです。これならできるかも?って。

――そのあとで、すぐにトレーラーを探した、と。
いろいろ探して、富山の業者がアメリカから輸入してくれました。それを理容室に改装するために僕が設計図を描いて、それを息子の同級生のお父さん(大工さん)に見せて、内装をお願いしました。その大工さんはサーファーでもあるので、僕が理想とする海のイメージをわかってくれるだろうな…と思ったんですよね。
トレーラーの改装をしながら、それを置かせてもらえるビーチを探していたんですが、サロンワークでお客さまにその話を伝えていたら、一人のビーチ管理者の方が「それ面白いね、うちのビーチでやりなよ」と言ってくれたんです。水も電気も使えばいいし、って。場所は今帰仁村だったんですが、そこから人のつながりで「うちでも営業していいよ」と、いろんな場所から声をかけてもらえるようになりました。

――そして2018年、無事に開業ということで、念願の「絶景ビーチを見ながら働く」というワークスタイルを実現されました。
43歳で、ついに実現しました。最高の景色を堪能しながら働けるので、本当に毎日気持ちよく働けますし、お客さまからの評判も上々です。「やっぱり海に来たほうがいいですね」と、しみじみ言われる方も。始めてから2年ほどは、いろんなビーチをぐるぐるまわって営業していました。景色が変わると新鮮ですし、お客さまにとっても気分転換になるので。
口コミやSNSを通してだんだんと認知され、観光客も来てくれるようになり、海外の方も増えました。最近は同じビーチで営業しているんですが、家族で来て、お父さんが髪を切ってる間に子供とお母さんは海で遊んだり、施術後に泳いだりSUP(スタンドアップパドルボード)をしたりして、ビーチを満喫している方も多くて。そんな時間を提供できるのも、ビーチで営業している魅力なのかなと思います。予約はWebで受け付けているんですが、ありがたいことにすぐ埋まっちゃうんですよ。
