フリーランス全盛の今だからこそ、改めて考えたい「美容師の働き方」
美容師+αの道を模索するなら、フリーランスでの働き方も◎
そんな中でフリーランスに向いているという人もいるかと思います。例えば、世界中を旅したいという人で日本に戻ってきているとき資金を貯めるために美容師をやっている人もいます。そのような感じで、美容師と同じくらい別のジャンルでやりたいことがある人は、フリーランスとして働くことで業務や時間のコントロールがしやすいかなと思います。また、ヘアメイクをやりたいという人でその仕事の傍らでフリーランス美容師としても働くということもあるでしょう。
ただ、ヘアメイクをやりたいという人の場合は、いきなり辞めてしまうのではなく、会社に相談してみるのもいいと思います。もしかしたら、制度が広がるチャンスかもしれませんから。
あとは、働いているお店自体が問題を抱えていて、自分のアシスタントや他のスタッフを守るために独立を決意するということも考えられます。でも、忘れないでほしいのは、人が人の上に立つというのは、本当に大変だということ。オーナーさんには、スタッフの人生をちゃんと担い、一緒に生きていくくらいの思いでやってほしいですね。
「辞める」という自分の決断を覆せる奴は成功する
僕は、転職には2種類あると思っていて。収益や売上というのはあまり考えず、働き方をゆるやかにしたいのか、今は苦労するかもしれないけれど、向上心をもって転職するのか――。その場合、前者はもちろん将来の生活のことも考慮に入れたいところです。今きつい思いをしても一生懸命やって将来を勝ち取るのか、それとも将来、「どうしよう!?」ってなってから苦労する道を選ぶのか、一回振り返って考えた方が良い。
とはいえ、「転職したい」と思ったらほとんどの人が辞めてしまうのが現状だと思います。でも、僕はそこで自分が一度決めたことを変えられる人こそが成功するんじゃないかと考えていて。
だから、「転職したい」と思ったら、あえて自分が話しにくい人に相談してみて、そこで出てきた答えを大事にしてほしい。自分の考えに近い人間に相談すると、どうしても「いいんじゃない」と同調してしまいますから、あえて痛いところを突いてくるくらいの人に相談したほうが、正しい選択ができると思います。
そして、辞意を伝えたけど引き止められているという人は、その理由を考えてみてほしいですね。止められている理由というのがちゃんとあって、もしかしたら心配してくれているのかもしれないし、その場所でもっとやれることがあると思ってもらえているのかもしれない。そこでオーナーと冷静に話ができれば、働き方や給料が変わって、そこに留まることもできるかもしれない。
誰に相談したらいいかわからないという人は、オーナーの知り合いとか、雇用している側と同じ目線の人に髪を切ってもらったりして相談してみるのもありかもしれません。
僕も、相談されたときは同じように「もう一回オーナーと話し合ってみな」という話をするのですが、そこで給料が上がったという話は本当によくありますから。今いるところは、あなたが一回選んだ場所。お店がちょっとおかしいということもあるかもしれませんが、自分が間違っていたとしたら、ちょっともったいないですよね。
オーナーでも正社員でもフリーランスでも、ラクして稼げることはありません。地道に頑張っていて苦労して、嫌なことはいっぱいあるのに続けている人って魅力がある。それをやっているお店のオーナーさんは成功しているし、スタッフも同じです。
今いる環境に留まるとしても、転職するにしても、自分ができることを一度はがむしゃらにやって働いてみるのは絶対にいいと思う。見ている人は、きっと見てくれていますから。
- プロフィール
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grico 代表
エザキヨシタカ
2009年原宿に「grico」をオープン。美容業界を代表するトレンドセッターとして美容師の新たな在り方に対して常にアプローチを仕掛け、アパレル業、商品開発、コンサルティングなど多方面で活躍。オンラインサロン「マルチバース」「JAPAN7」にて業界の活性化に注力している。著書『夢を叶えるエザキ流方程式』『選ばれる条件』で多くのメディア・美容業界内外から注目されている。
(文/須川奈津江 撮影/金田 裕平)