水商売と勘違いされた美容師を憧れに変える。中国で盛り上がる美容室文化の実態とは?―IDEA 佐藤恵理さん

値上げするとお客さまが増える? 美容師の技術レベルに保証がない中国での指標

 

オークラガーデンホテル内にある「IDEA」

 

『IDEA』の料金は、オープン当初から日本人できちんと美容にお金をかける人向けの価格帯に設定しています。薬剤やケア用品は日本メーカーのものを輸入しているため、現在の客単価は日本円で一人1万7,000円ほど。ある時期に中国の物価が上昇したため値上げしたのですが、これが中国人のお客さまの新規来店増加につながりました。

 

上海の美容室はとにかく多種多様。価格が10元(150円)の店もあれば6,000元(10万円)の店もあるので、相場がないんです。日本の美容師免許のような国家資格もないので、技術を保証するものもありません。

 

そんな中で、価格は一つの判断基準になります。価格の高さは、美容師への信頼・安心につながるんです。もともと『IDEA』をはじめとする日系サロンは、中国人にとって「ちゃんとした技術があって、丁寧で信頼ができる」という印象があったようです。さらに『IDEA』は、安心できる割に価格も良心的なところが、中国のお客さまに支持されています。

 

髪型やカラーで遊ぶことに積極的な、中国の美容事情

 

 

私のお客さまは30代の働く女性が中心ですが、みなさんハイトーンカラーやダブルカラーにもすごく積極的。日本人以上に髪型やヘアカラーで遊ぶことに抵抗がないように見えます。こちらもおしゃれな髪型をいろいろと提案できるので、やりがいがありますね。

 

ただ、そうした人が増えてきたのはここ最近です。ほんの数年前まで、中国では「パーマは年に一回かければ十分、カラーは贅沢品、髪は長いのが一番で、メイクは肌が弱くなるからやらないほうがいい。男性は角刈りや坊主が当たり前だから、長い髪にすることはあり得ない」という考えの人が大半でした。

 

中国の美容意識が高まった最初のきっかけは、2010年の上海万博です。街が整備され、人々の生活レベルも一気に高くなりました。次のきっかけが、5年ほど前に中国人が日本に旅行して爆買いするのが流行り、日本と自分たちの国を比較するようになったこと。日本へ旅行した富裕層が「日本の女性はお化粧もばっちりで、髪の毛もつやつやだった。それは毎日メイクをして、美容室に行っているからだ」と気がついたんです。

 

美容メーカーも、中国の人たちに、「綺麗になるためには、こうしたほうがいいですよ」とか、「日本の女性たちが綺麗なのは、毎日ブローとメイクをして、美容室に行っているからですよ」と呼びかけていました。「美容室に行くのは贅沢」という考え方から、「ごく普通の身だしなみ」という意識に変わってきたように感じます。ただ、意識が変わってきている年代は20〜30代が中心。40代以上の年代は「髪の毛は黒が一番、メイクは肌が弱くなるからやらない」など、美容室に行かない志向の方がいまも多いです。

 

>日系サロンとして中国で成功するために必要なこととは?

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