「沢丸 保切」は世界のコンテストでなぜ評価されるのか? クリエイション未経験から今に至るまでの道のりを聞いた

アイヌ民族からインスパイアされた作品がIBIで世界一位に

 

 

僕がつくる作品のテーマは、そのとき興味があることや、昔から好きだったものなど、身近なものから発想することが多いですね。作品づくりには産みの苦しみがありますから、興味がある内容じゃないと苦しくなってしまうと思います。

例えば、International Beauty Industry Awards(IBI) 2022で世界一位に選ばれた作品は、アイヌ民族がテーマです。明治時代の北海道・樺太が舞台の『ゴールデンカムイ』(集英社)という漫画に影響されて興味を持ったことがきっかけでした。

 

沢丸さん作品AINU

 

何冊もの本を読んで、自分なりに勉強していくとさまざまな民族の歴史が見えてきたんです。虐げられていた時代があったことや、生き抜くために悪事に手を染めてしまったことなど、あまり表には出てこない物語があったりします。それらを噛み砕いて理解した上で、作品テーマを決めてつくりこんでいくのが僕のやり方です。

民族をテーマにするとセンシティブな内容も出てくるので、裏付けとなる情報を集めた上で、どこまで触れていいのか慎重に判断しています。作品に添えるステートメント(解説文)をつくる前に熟考して、出来上がったらコピーライターさんに添削してもらうのです。さらに海外に出す場合に英語に翻訳する必要があります。日本語で書いた想いがきちんと伝わるかどうか、英語の先生に監修してもらっているんですよ。

 

 

実感値として民族系の作品は日本のコンテストに出すよりも、海外のほうが評価されやすいというのはあると思います。というのも、民族系の作品は海外の人たちの目に、エキゾチックに映るようなのです。自分たちとの文化とのコントラストにひかれるのかもしれません。

 

民族に限らず、自分の琴線に触れるものを表現していきたい

 

 

ただ、この先ずっと民族だけをやりたいわけではありません。次回は「モス(蛾)」というテーマでコレクションをつくります。完成まで半年くらいかかるので、今年の作品づくりはそれでおしまいです。

来年のテーマも今頭の中にあるのですが、まだ言えません。神々しさを感じるものや、自然の神秘を感じる美しいものなどをモチーフにして作品づくりをしようと考えているところです。

 

 

作品づくりでは、モデルさんは自分で探しますし、テーマによっては自分で衣装をつくることもあります。世の中には賞をもらいやすいモデルさんやカメラマンさんもいますが、僕がコンテストに出る目的は、賞を取ることではないんです。自分がつくる世界観を発表する場であり、それがどのように評価されるのか確認するための機会と捉えています。

モデルさんには必ず、ステートメントを元にしてクリエイションのテーマを共有します。口頭で伝えても悪くはないんですが、きちんと可視化したほうがいい。曖昧な言葉だと伝わらないし、すり合わせをしないと感覚のズレが起こるもの。これはサロンワークにも通じる話だと思いますが、しっかりと目線合わせをすることが成功の秘訣だと思います。

 

 

>クリエイションをする上で大事なのは「継続力」と「環境」

 

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