アシスタントのやる気を伸ばす! 独自の“教育カリキュラム”を導入する美容室3選-LIM・SNIPS・boy-

 『boy』独自のカリキュラム「MDS

 

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-サロン教育で行われている独自の教育カリキュラムについて教えてください。

 

boyでは「MDS」というカリキュラムを行っています。まず、“M”はメディテーション(瞑想)のこと。心を落ち着かせる効果があることからシリコンバレーの多くのコンピューター企業やクリエイティブな職業でも取り入れていますが、boyでも毎日の仕事の前や練習会の前に行っています。

 

次に“D”はデッサンのことです。デッサンができるようになると、自分の頭の中がクリアになってカットの手順もしやすくなるほか、お客さまとのコミュニケーションが具体的になります。

 

そして“S”はシミュレーションのこと。デッサンしたヘアスタイルをいきなり作るのではなく、一度自分の頭のなかで、イメージのプレ(事前)カットで切ってみるのです。これができるようになると、例えばカフェでお茶を飲んでいるときや電車を待っている間に見かけた街の人たちのヘアを“自分の頭のなかで切ることができる”ので、本当に簡単なカットの練習になるんです。頭のなかで手を動かすことも実際に手を動かすことも結局は脳がやることだから、両者はつながっているらしいんです。

 

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-そのカリキュラムを導入した経緯を教えてください。

 

どんな職業でも普通はスキルを積んで成熟しますが、美容師ってある程度カットができるようになると自分自身での練習をあまりしなくなって、退化していく方向にあるんです。つまり、そこそこカットができるようになって終わってしまうんですよね。そうならないようにするためには頭のなかで常にカットの練習を毎日する必要があるということで「MDS」を始めたんです。アシスタント3年目の終わり頃には、お客さまを前にして瞬時に「MDS」ができるようになりたいと思っています。

 

-カリキュラム導入後、スタッフやサロンにどのような変化がありましたか?

 

「MDS」はboy独自のカリキュラムなので、それを行うことで世界中がまだやっていない独特なものを作り出せるようになったと思います。そのわかりやすい例が「ハズシ(ディスコネクション)」というカット技法の発明です。

 

例えば、ヘアスタイルを作るときにアイデアの元を美容とは関係のない分野から得る方が面白いと感じるときがあるんです。例えば海外のニュースなどでみかける、あまり手入れされていない、美容室などに行ったことがないような子どものクシャクシャっとした髪は、文化が異なる日本人にもきっと合うよねと。MDSで頭の中がリラックスすることで、そういう風に、いろんなアイデアを交差させることができるようになりました。

 

-スタッフ教育で最も大切にしていることは何ですか?

 

教える側、教わる側の両者が未来を向くということです。そのために、教える側は自分の全く知らないことに目を向けないといけないし、教わる側は相手と真剣にコミュニケーションを取らなければならない。スタッフ教育において危険なのは、教える立場の人が自分の知っていることだけを教えようとするところなんです。自分の知っていることを教えるのでは自分も過去に行ってしまうし、教わっている方も過去に行ってしまうんですよ。

 

「自分が培ったことを教えて何が間違いなのか」と思う人もいるかもしれませんが、boyでは、教えるということは、教わるということ。教える立場の人が、教わっている人たちからも勉強になるポイントが見えたりして、自分の勉強にもなる。そのような時間をboyでは教育の時間としています。

 

-現在学ぶ立場にある美容師へアドバイスをお願いします。

 

今美容に携わっている人もそうですが、これから美容に関わる人に特に伝えたいのは、技術を身につけながら自分が日々進歩しているなという実感を積み重ねるのが大事だということ。格好いい美容師とは、本当は、人として格好よくないといけないとboyでは話しています。格好いい美容とは、インテリアやアート、世界情勢、歴史、遺跡、他のいろいろな職業といった、美容と関係のない分野にも目を向けるもの。それが美容という仕事に対して、とてもいい働きをするんです。自分の知らないところに興味を持たないと脳は発達しないので、美容以外のことも大切にしてほしいと思います。

 

プロフィール
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代表/茂木 正行(もぎ まさゆき)

ヴィダル・サスーン・アートディレクターとしてロンドンをベースに活躍し、帰国後にboyを設立。ヘアメイクとして、ヘアショー並びに画家、舞踏家、写真家、音楽家、詩人らと創作活動を展開。「ハズシ(ディスコネクション)」の技法を発表。タイ・バンコクに2店舗を作り、まったく新しい美容のやり方で、スタッフを活躍させている。

 

このように一口に「教育カリキュラム」といっても、その内容は実にさまざま。後輩スタッフの教育に悩みを抱える人や、美容師として多様な価値観を身につけたいという人は、今回ご紹介した独自カリキュラムをヒントに、自らの成長へ生かしてみてはいかがでしょうか。

 

(取材・文/阿部夕華)

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