MINX で次々とスターが生まれる理由。MINXの「母」、鈴木三枝子さんが残したDNAとは

ゆとり世代は、ゴールとプロセスを見せて育てていく

 

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佐藤 最近の若い子たちは教育するのが難しいと、いろんなサロンのオーナーさんたちから聞きますが、中野さんはどう思っていますか?

中野 よく「ゆとり世代」とか「さとり世代」とかいいますよね。でも、僕はそんなにギャップは感じていないです。結構みんな、前のめりですよ。

この世代は、僕たちに比べると「要領がいいだけ」だと思うんです。無駄なことはしない。ちゃんと結果が出ることをやりたい。そう思っているだけなんです。

だから、昔のような「背中を見て覚えろ」という教え方ではなく、「ゴールがここにあって、そのゴールまでにこんな道筋を通ればいいんだ」ということを提示すれば、それに向かってちゃんと努力します。

 

佐藤 プロセスを見せてあげるんですね。

 

中野 そうです。ゆとり世代だから理解できないということはないです。教えるほうがちゃんと教え方を変えていけば、逆にいまの子たちのほうが、よっぽど素直で頭がよくて頑張れる子たちだと思っています。

 

佐藤 実は『道を継ぐ』の感想って、20代からの感想がものすごく多いんですよ。「僕もこんなふうにお客さまのことを考えられる美容師になりたい」とか「一生をかけて美容師という職業をまっとうしたい」とか。熱く太く真剣に人生を生きることに対して、年代も時代も関係ないんだなって思いました。

 

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中野 若いから冷めているということは、全然ないと僕も思います。うちの子たちも、若い世代でもちゃんと、責任を負いたがりますね。役職をやりたがらない子が増えていると聞きますが、そんなこともない。

 

佐藤 今回、『道を継ぐ』にどうしても入れたかったんだけれど、入れられなかったエピソードがあるんです。原宿店の店長の大竹さん、いらっしゃるじゃないですか。

 

中野 いまはもう代表になりましたね。

 

佐藤 そうでしたか。大竹さん、定期的に鈴木さんのお墓参りにいってらっしゃるそうで、そこでいつもスタッフのことを報告しているんですって。それでね、もしそのときに原宿店を辞めた子がいたら、鈴木さんにお詫びをしてるんだって。「せっかくMINXに一生を捧げると決めた子を、引き止められなくてすみません」って。

その話を聞いて、ああ、MINXさんって、鈴木さんと過ごした時間が半年しかない大竹くんの世代まで、こうやって「人を育てる」DNAを受け継いでいるんだなあって思いました。

 

中野 そんな話があったんですね。僕も知らなかったです。

いまのMINXは、もう鈴木さんと会ったことがないスタッフが半分以上になるんです。でもその教えというのは、ずっと引き継がれてきていると思うんです。

たとえば、僕が鈴木さんから一番学んだことは「本気で相手のことを考えて育てること」です。

鈴木さんは、スタッフを厳しく叱ることもありましたが、決して厳しいだけの人じゃないんです。その子にとって、どういう教育をするのが一番本人のためになるか、とことん相手の立場にたって考えてくれる人でした。鈴木さんはMINXの「母」だと、みんなが思っていますが、母親のような愛情でスタッフ全員を見てくれたと感じますね。

 

佐藤 今回取材した方々全員が言ってらしたのが、鈴木さんの指導には「愛」があったということでした。

 

中野 鈴木さんから受け継がれた「相手の立場にたって指導する」という考え方は、MINXの教育の原点だと思います。

僕自身も、スタッフによって一人ひとり声のかけかたを変えています。厳しく伝えたほうが伸びるタイプもいるし、一緒に考えてあげることが大事な子もいます。自分が教えたいことを教えるのではなく、相手にとっていま、一番大事なアドバイスは何かと考える癖がついていますね。

 

佐藤 そこが、MINXのスタッフさんが、自分に自信を持てるようになったり、自分がオンリーワンになるためにはどうすればいいかと考えられる拠り所なのかもしれないですね。MINXからスターが生まれ続ける理由がわかったような気がします。今日はありがとうございました。

 

中野 こちらこそ、ありがとうございました。

 

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プロフィール
中野 太郎(なかの たろう)
MINX world 取締役 / 青山店ディレクター

国内外で幅広いセミナー活動を展開する MINX を代表する人気スタイリスト。
顧客の再来店率の高さに定評があり、指名客数もトップクラスで月間300名を超える顧客を担当する。売れるスタイリスト育成、一流のアシスタント育成に力を注ぎ、社内育成を統括するスペシャリスト。ファッション誌や業界誌の表紙や巻頭ページの撮影も多くこなす。2016年に発売された「9割リピートするセニング術」はベストセラーとなり海外からも多くの称賛を得ている。

http://www.minx-net.co.jp/

 

プロフィール
佐藤 友美(さとう ゆみ)

日本初、かつ唯一のヘアライター&エディター。MINXの故鈴木三枝子さんについて関係者191名に取材してまとめた最新著作『道を継ぐ』が、美容業界を超えて話題になった。また、『女の運命は髪で変わる』(サンマーク出版)は、NHK「あさイチ」でも特集され、7万部の大ヒットに。「美容業界と一般のお客さまの橋渡しになる」ことをミッションに、数々の企画を担当する。

 

(取材/QJナビ編集部・撮影/菊池 麻美)

 

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