「飾らないけど、強いもの」とは何か? DaB 山田千恵、Cocoon SAKURA、Hank. 米澤香央里が語る、女性美容師のデザインと生き方−soucutsの庭Vol.10−

左から SAKURAさん・山田さん・内田さん・米澤さん
LECO(レコ)代表・内田聡一郎(うちだそういちろう)さんのPodcast「soucutsの庭」。大御所から同世代、さらには若い世代まで幅広い層の美容師をゲストに迎え、今考えていること、そして普段はなかなか語られることのない“思考の奥”までを、MCである内田さんがじっくりと引き出していきます。リクエストQJでは、そのPodcastの模様を記事としてお届け中!
今回は、DaB(ダブ)の山田千恵(やまだちえ)さん、Cocoon(コクーン)のSAKURA(サクラ)さん、Hank.(ハンク)の米澤香央里(よねざわかおり)さんをゲストに迎えて、「飾らないけど、強いものとは何か」をテーマにトーク。柔らかさや自然体のなかにある、芯の強さ。その人らしさを引き出すデザインは、どのように生まれるのか。カットやクリエイティブ、インプットとアウトプットについて語り合いながら、それぞれの美容師としての考え方や、40代以降の働き方、生き方にも話は広がりました。3人が語る、デザインをつくること、そして美容師として生きていくということとは?
山田千恵さんと、「ポスト山田千恵枠」のSAKURAさん、米澤さん

内田: 今回のゲストは、みなさんの憧れの女性美容師と言っていいんですかね。僕も大好きな3人の美容師をお呼びしております!
SAKURA: CocoonのSAKURAです。よろしくお願いします。
米澤: Hank.の米澤香央里です。よろしくお願いします!
山田: DaBの山田千恵です。よろしくお願いします。
内田: 千恵さんは、ずっとお呼びしたいと思っていたんですよ。
山田: ありがとうございます。
内田: 千恵さんお一人でもよかったんですけど、そこに誰かをぶつけたら面白いかな、いい化学反応が生まれるんじゃないかなと思って。それで考えたときに、SAKURAちゃんとヨネちゃんを大抜擢しました。
二人: 嬉しいです! ありがとうございます。
内田: 僕の中では、この3人には共通点が結構あると思っていて。千恵さんは僕にとって大先輩なので、変な言い方になっちゃうかもしれないんですけど、今の美容業界で数少ない、デザインができる女性美容師。その道をずっと牽引してきた、センスのいい女性美容師の代表格という感じで、僕も大好きなんです。
では、なぜこの2人を呼んだかというと、僕の中では勝手に「ポスト山田千恵枠」というか。女性美容師さんで、いわゆるコンサバとはまた違う、センスよくデザインできる人は誰だろうと考えたときに、意外とパッと出てこないんですよ。でも、そんなときでも120%名前が出てくるのが、この2人。その源流に山田千恵がいる。だから、この3人が交わったらどんな話をするのかなって気になって。

山田: こうやって生でお話しするのは初めてなので、緊張しています。でも、可愛らしいSAKURAちゃんとヨネちゃんがいるので、今回は楽しみにしていました!
内田: ありがとうございます。僕が勝手に「ポスト山田千恵枠」って言ってるんですけど、大丈夫ですかね(笑)。
山田: そんなこと言ってくれて大丈夫って思っちゃうけど(笑)。内田くんがそう言ってくれると嬉しいですね。
内田: で、勝手に命名した「山田千恵枠」の2人(笑)。まずSAKURAちゃんがパッと頭に思い浮かんだんだけど、実は千恵さんの弟子だったという。これ、知らない人もいますよね?
SAKURA: そうですね。美容学校を卒業して、絶対にDaBに入りたいと思って入社して、4年くらいいさせてもらいました。最初に働いていたのが代官山だったので、千恵さんのアシスタントにつかせてもらったりとか。1年目で何もできない頃から、千恵さんは仕事をさせてくれるんですよ。もちろん先輩が見ていてくれるんですけど、今になって考えると、すごい状況だったなって時々思い出します。
山田: 懐かしい! 失礼なんだけど、私とSAKURAちゃんは顔が中心に寄ってるからか、お客さんに「なんか似てるよね」ってよく言われていて。
SAKURA: そうなんですよ! 「妹」って言われてました。
山田: センスよく動いてくれて、楽しかった思い出があるんですけど、短くて残念だなって(笑)。
SAKURA: そんな風に言ってもらえて恐縮です……。
内田: ヨネちゃんは、千恵さんと絡みは今まで?
米澤: 新卒の頃、DaBに入りたかったんですけど、落ちて。専門学校の頃はサロンに通っていたんですよ。
内田: えー! 知られざる過去ですね!
米澤: 初めて言いました(笑)。
内田: 千恵さんに切ってもらってたの?
米澤: いや、千恵さんではなかったんですけど……(笑)。
山田: えー、なんで?(笑)
米澤: カットモデルとかでもDaBに行ってました。最近で言うと、JHAの授賞式のときに千恵さんから表彰してもらって。めちゃくちゃ嬉しかったです。
内田: じゃあ、ガッツリ話すのは今回が初めてなんだ。千恵さんは、お二人のこと知ってました?
山田: 知ってますよ! SAKURAさんは活躍されて、CocoonでVANちゃん(Cocoon代表)にとって「いてもらわなくちゃいけない」存在になっていて。米澤さんは、JHAのときに可愛いんだけど、強めな感じのデザインで素敵だなって。でも、お会いすると「こんな可愛らしい感じの人だったんだ」っていう意外性がありましたね。
3人のつくる、柔らかさの正体

内田: さて、今日はトークテーマを設けさせてもらいました。昨今、美容業界でもキーワードになっている「デザイン」とか「クリエイティブ」とか、「つくること」について、このラジオでもいろんなゲストを交えて話しているんですけど。
お三方の共通項として、ある種の男性的なものとは対極にある、柔らかさとか、飾っていないけど強さがある、みたいなものがあるなと思っていて。今日は、これをつくっているみなさんに切り込んでいきたいなと。ズバリ、今回のトークテーマは「飾らないけど、強いものとは何か」。そもそも千恵さんの中で、飾らないこととか自分らしさみたいなことは、意識してやってきたことなのか、それとも特に意識していないのか。まずはそこをお聞きしたかったんですけど。
山田:自分の中では、ずっと自然体でやってきたような気がするんですね。男性的なものとは対極って言ってましたけど、仕事の捌き方としては、意外と男っぽいところもあって。何かをつくるときは、細かい部分まで形を計算してつくり込むというより、そのときに生まれる偶然のニュアンスを大切にしているというか。偶然を待ち構えていて、「あ、今いいじゃない?」って思った瞬間に、それを拾っていく。そのときの瞬発力みたいなものが、自分のテイストなのかなと思うんですけど……。あれ、質問なんでしたっけ……?
内田: でも、そういうことです(笑)。DaBさんも男性美容師がたくさんいらっしゃって、八木岡さんもいらっしゃって。山田さんがつくるものって、DaB的なものではあるけど、それともまた違うみたいな。それもある種、DaB的なのかもしれないですけど。そこのバランスが絶妙だなって、昔から思ってました。
山田: 業界誌で撮影を始めるのも遅くて、DaBに来てからなので30歳くらいなんですけど。当時の業界誌って、わりとカチッとした撮り方が多くて、「なんかダサいな、これ。美容師さん以外に見るのかな」って感じていたんです。だから私は、美容師さんが見ても「これ、とっておきたい」「切り抜いておきたい」って思えるような、絵として魅力のある女性像をつくりたいと思っていました。自分がやりたい形を追求するというより、雑誌全体のイメージ力みたいなものを、もうちょっと上げていきたいなって。これが女性ならではなのか、時代的なものなのかはわからないですけど、変えていきたいという思いはありましたね。

内田:SAKURAちゃん、一緒に働いていたときに、そういうのは感じた?
SAKURA:千恵さんのお仕事を見られていたと言っても、私は1年生の頃なので…。それでも、今でも思い出すんですよ。ものすごい数のお客さんを、千恵さんのスピードでこなしていく姿は、忘れられないカッコよさがあります。それに、「今、この髪が可愛く見える瞬間」を見逃さないというか。「あ、ここで終わるんだ」っていう瞬間があったりして。何かを学べるほど、当時の私に力があったわけではないんですけど、思い出しますね。
内田: 千恵さんは、SAKURAちゃんの当時の印象ってあります?
山田: ニコニコして可愛らしくて、スッとしてるのに、結構バキバキ働くな、という印象(笑)。意外と、体力的に男だな、みたいな。ちょっとか弱そうで、「なんか言ったら辞めちゃいそうだな」って感じてたんですけど、全然タフだなって(笑)。だから、今もこうやって頑張っているんだなって思いました。
内田: 3人の共通項として、実はめちゃめちゃ強いですもんね。
山田: 何が強いのかわからないですけど……。
SAKURA:確かに、何がってわからないけど、強いかもですね。
内田:米澤さんも、意志がありますもんね。ホーリーくん(Hank.代表/堀江昌樹さん)が尻に敷かれている印象がある(笑)。

米澤:やりたいこととか、大切にしたいことはすごくはっきりしているし、それはすぐ堀江さんにも共有します。ガンガン言うタイプです(笑)。
内田:内面的には強さがあるけど、つくり出すものはすごく柔らかい。男性にはつくれない柔らかさがあるなと思っていて。そこを紐解きたいんですけど、何か意識していることはありますか? そもそも、「柔らかい」って意識してますか?
SAKURA:「女性らしい質感」って、確かに言われたりするじゃないですか。でも、あんまり自分ではわからないですよね。
山田:キレイに均等に整えるというより、ちょっと崩した、「クシャっとしているのが可愛い」みたいな。その辺の曖昧さなのかな。1回髪の毛を触って、「あ、今!」みたいな感じ。ただ、それが「柔らかい」かはわからないけど、自分の中では「柔らかいけど、強さがある」というものを目指していたところはありますね。柔らかくて、すり抜けてしまうものとは違うもの。そういう、印象に残る柔らかさって難しいんだけど、好きだし、挑戦したいところでもありますよね。
内田: お二人も、意識はしていなくても、自然とそうなるって感じなんですか?
米澤: 内田さんが、よく「ヨネ毛」って言ってくださるじゃないですか。私がつくる、柔らかい髪の毛の質感のことなんですけど。でも、自分ではそこまで考えていなくて。あとは、ファッションが私の中で重要な要素の一つなので、引いた世界観が好きなんです。引いて見たときのアウトシルエットが、柔らかくて、動きのあるスタイルが好きっていうのがあって。それは髪の毛も含めてなんですけど。写真なんだけど、動画のような世界観というか。そこは意識しているかもしれないです。でも、「ヨネ毛」みたいな質感については、そのときどきの感覚に近いのかもしれないです。
内田:SAKURAちゃんもそんな感じ?
SAKURA:「何を意識しているか」って言われると難しいんですけど…。VANはカットをすごく大事にしているんですけど、営業中にVANのお客さまの髪に触れると、見たときの印象と、実際に触ったときの印象が全然違うことがあるんですよ。毛量があって、骨格もしっかりしているのに、見た目はすごく柔らかく見えている。キレイに収まっているんです。でも触ってみると、頭の張りがすごくて固い。そういうことをたくさん見てきました。やっぱり、髪の悩みが解決されると嬉しいじゃないですか。「こうなったら嬉しい」という状態があるから、それを叶えてあげたい。それは、これまで自分がやってきたことの一つだと思います。それが作品になったときに、結果として「柔らかさ」につながっている部分もあるのかなって。
それと、モデルさんの「いいな」と思う表情って、女性のほうが独特な部分があるのかもしれないと思っていて。決めてつくった表情というより、ふっと出てくる、例えばこの子だけの少年っぽさとか。そういうものを、なんとか捕まえたいっていうか。「あ、この瞬間、この顔!」っていう、自分が好きだと思える表情を見つけたい。その子の女性らしさを前面に出すというより、あえてそこじゃない部分を見つけたいという気持ちがあるんです。そういうところとの融合で、もしかしたら「柔らかい」と感じていただけるのかなって思いました。
内田:今って、結構「固くないデザインのほうがいいよね」という空気感がすごくあって。数年前よりもさらに崩して、その人らしさをナチュラルに見せようとしている。男性美容師も、そこに取り組み始めている人がたくさんいると思うんですけど、それでも女性がつくるあの質感って、出せないなと個人的には思っていて。みなさんのサロンでも、男性スタイリストがつくっているものを見て、「自分より固いな」って思うことはありません?
山田:でも最近は、「あ、これ男の人がつくったんだ」っていうのもありますよね。