AFLOAT取締役・中川恵理 乳がん闘病という逆境の先で見つけた、美容師としての新たな生き方
フォロワー1200人からの反撃。癖毛が導いた売上350万

―5年目でデビューしたとのことですが、デビュー後は順調でしたか?
デビュー後は、比較的早い段階で外部のヘアメイクのお仕事をいただけるようになりました。アシスタント時代から撮影現場に同行し、メイクも担当していたので、現場には慣れていたんです。宮村がスケジュール的に入れなかった撮影に呼んでいただいたのをきっかけに、少しずつ他の現場でも声をかけていただけるようになりました。
一方で、売上は順調とは言えませんでした。デビュー1年で100万円ほどまでは伸びたものの、そこからしばらくは停滞。数年後には店長となり、トップマネージャーの打診もいただいたのですが、「この売上のままで本当に周りを引っ張れるのか」という葛藤がありました。
そこで、SNSに本格的に力を入れ始めました。当初はフォロワーが1200人ほど。とにかく毎日スタイル写真や動画を投稿し続けました。
転機になったのは、自分の癖毛をブローでストレートに仕上げる動画でした。これがバズって、1カ月でフォロワーが1.2万人まで増加。そこからは認知も広がり、売上も右肩上がりに伸びて、最終的には350万円まで到達しました。
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走り続けた先の強制ストップ。“長い夏休み”が変えたキャリア

―順調に仕事をされる中で病気が発覚したんですね。
そうなんです。サロンワークに、トップマネージャーの仕事、撮影と忙しく充実した美容師生活を送っていたのですが、34歳のとき、健康診断で乳癌が見つかりました。そこから約1年半、治療のために仕事を離れることになりました。抗がん剤治療に手術、そして放射線治療。正直、体力的にも精神的にもかなりきつい期間でした。それまで走り続けてきた分、急に立ち止まることになってしまったという感覚もありました。
でも時間が経つうちにこの期間を「ぽっかり空いた空白」ではなく、“長い夏休み”のようにも感じ始めたんです。大人になって1年半も仕事をせずに過ごすことなんてなかなかないじゃないですか。これまでの人生があまりにも忙しかったからこそ、「今しかできないことをやろう」と思えました。手術後の動けない期間以外は、抗癌治療をしながらも、合宿免許に行って車の免許を取ったり、やってみたかったけど時間がなかった日々の細かなことに挑戦したり。

自宅で過ごす時間が増えたことで、発信についても考えるようになりました。もともと美容師としての発信はしていましたが、自分の病気のことも含めてお伝えできる場所があってもいいんじゃないかと思ったんです。最初はYouTubeを考えましたが、動画編集のハードルを感じて、代わりに始めたのがTikTokライブでした。これが想像以上の反響で、続けるほどにフォロワーが増えていきました。
その流れの中で、TikTok内のイベントに参加し、ランキング1位を獲得。関西コレクションのランウェイを歩く機会もいただきました。手術から数カ月後というタイミングでしたが、自分でも驚くような経験でした。
病気はもちろん大変な出来事でしたし辛い時期もありましたが、この1年半を通して、自分の可能性や新しい道に気づくことができたのも事実です。そして何より、「また美容師として現場に立ちたい!」という気持ちは一度も消えませんでした。そして、生き方や価値観が大きく変わり、以前よりも「人のために何ができるか」を強く意識するようになった気がします。

―闘病をのりこえて、仕事への向き合い方や価値観にどんな変化があったんでしょうか?
復帰したい気持ちはずっとありましたが、以前と同じ自分に戻ろうとはまったく思わなかったんです。同じことを繰り返してもこれ以上の成長はないと感じていたので、働き方も見直して時短に。限られた時間の中でお客さまと向き合っています。
その一方で、人前に立つことや新しい挑戦に積極的になりました。関西コレクションの経験を通して、「挑戦すること」が新しいチャンスや可能性につながると実感したんです。今年は特に、自分にできることを広げていきたいと思っています。癌を克服した自分が健康な体を目指して挑戦することに意味があると思い、ベストボディジャパンにもチャレンジしています。人と同じことではなく、自分だからこそできることに価値があると思うようになりました。
>美容師の枠を超えて。自分の強みで、誰かのための価値を拡張する