体温が上がるトキメキを追い求める! ヘアメイクとサロンワークの両軸で見つけた、自分を偽らない大切さ ANTI 根来かおりさん
お客さまの七変化を一緒に楽しみたい

サロンワークで大切にしているのは、固定概念を持たないこと。私は、女の人はワガママでいいと思ってるんです。今はハイトーンの気分でも、来月には変わるかもしれないし、今日は「モテ系にしたいな」って思ってるけど、来週になったら急にモードにしたくなっていることもある。そういう移り気なところがあると思うし、それで良いと思うんですよ。
なので、カウンセリングはまず「最近どう?今どういう気分?」と聞くところからスタート。前回暗くした髪を、明るくしたいと言われたら「OK!頑張るね!」と思うし、揺れ動く乙女心に共感するのがすごく楽しい。加えて、理論だけに基づいたヘアの提案も、私はあまりしないようにしています。

というのも、私が「あなたの顔の形にはそれよりもこっちの方が似合うよ」と伝えることで、お客さまが「そうなんだ。これって似合わないんだ」となりたい女性像を諦めてしまうのは、悲しいじゃないですか。私は、七変化したい欲求や、変身願望を汲み取って、全力でそれを叶える美容師でありたいんですよね。その思いが伝わっているのか、私のもとにいらっしゃるのは、自分のやりたかったスタイルを断られた経験がある方が多いように思います。
ただ、理論に基づいたスタイル作りを否定したいわけではありません。肌色や骨格によって似合う、似合わないっていうのは、もちろんあると思うんですよ。だから、お断りした美容師さんもその人の中でベストな提案をされているはず。でもベストは何個あっても良いと思うし、そこに順位をつけなくて良いとも思うんですよね。
なぜなら「あなたの肌にはこの色は似合わないよ」と言われても、一度明るくしたいと思った女の子はどうしたって明るくしたいから(笑)。そもそも私がそうなんです。自分のヘアスタイルもファッションも、骨格診断やカラー診断は参考にしないし、やりたいものを似合わせる方法を考えます。だからこそお客さまにも「やってみよう!」と言いたいし、その人が直感で「かわいい」と思ったスタイルを、いかに似合わせるかが、腕の見せ所だとも思っています。

実はここにも、ヘアメイクで得た経験が活きています。ヘアメイクは、モデルさんの顔立ちに一番似合う雰囲気がガーリーだとしても、クライアントから「モードに」という指示があればそれを似合わせ、ハッとするような新しい顔を作る仕事です。もちろん簡単ではないですが、満足のいく仕上がりになると、完成したときには体温が上がるくらいときめくんですよ。
その経験があるからこそ、日々のサロンワークでも、お客さまがなりたい自分になるのを全力で叶えたいという思いでいます。サロンワークと作品作りは違うと思う方もいるかもしれませんが、お客さまの前髪を切った瞬間に、キュンとする時ってあるんですよ。そういう時はお客さまの目も変わるし、ときめきで身体が熱くなる。そこまで突き詰めて、日々のサロンワークに向き合っているつもりです。できていたらいいなあと願いながら。
SNSの発信でも、自分の心に素直でいたい

SNSでメイクを発信するようになったきっかけは、友人との旅行でした。その当時流行っていたふさふさ眉に見せるメイクをして過ごした旅行の最中、お風呂から上がったら「え、眉毛細くない!? さっきのメイクのやり方教えて!」と頼まれたんですよ。私と同年代から少し上の世代は細眉が流行っていたので、私も含めて眉毛がない人が多いんですよね(笑)。「これ、需要があるのかも?」と試しにInstagramに載せたら、思った以上に反響をいただいたことが始まりでした。
そのあとすぐ、世の中はコロナ禍に。撮影もサロンワークもかなり減ったことで手が空く時間が増えたので、本格的にSNSの発信をするようになりました。
実はいっとき、ちゃんとビジネスとしてSNSを使ってみようと思った時もあったんです。その時はありがたいことにたくさんお仕事をいただいて、提供していただいたコスメのPRやライブ配信をさせてもらったりして、楽しかったしとても勉強になりました。

でも同時に、数回使っただけで、アイテムの良さを誰にでもわかりやすくお話しするって特殊能力なんだな…と実感したんです。つまり、私には向いていなかった(苦笑)。先ほどのスタイルづくりの話にも通じますが、やっぱり私は、自分の体温が上がる、心からときめいた瞬間を共有したいという原点に戻った感覚がありました。
今は、メイクに関する発信に特化したブランディングをしているつもりも、集客のためだけにSNSを使っている感覚もありません。本当に自分の気持ちが動いた瞬間や、アイテムのことを自分の言葉で発信するようにしています。
私は、ブランディングのために戦略を練ってSNSを使えるような器用なタイプじゃないんです。アカウントのページは散らかってしまっているけど、一貫性がないことも自分の魅力かなと、今は割り切っています(笑)。必死にSNSを頑張っていた頃よりもお客様が増えたりもしていて、不思議ですよね。
心身のバランスを整えてこそ、人をハッピーにできる

ワークライフバランスは、自分の中で最近の大きなテーマになっています。実は昨年、体調を崩してサロンワークができない時期がありました。
自分のコンディションに関わらずニュートラルな状態を保つのは、仕事に必要な能力。ですが、長年そうして自分の辛さを見て見ぬふりをしてきたことで、身体が悲鳴をあげたんですよね。43歳を超えた頃から数々の不定愁訴に悩まされ、なかなか体調が安定せず…。入院をしたりいくつもの病院を回る中で、自分の心と身体を整えないと、人にハッピーを提供することはできないと気づきました。

まずは生活習慣を見直そうと、深夜まで勉強のためにスマホを触るのも、フォロワーを増やすためにSNSを触るのも一切ストップ。休日も、美容以外のことをやるようにしています。
30代までは休みの日も頭の中は仕事でいっぱいで、勉強したり、インプットのために洋書を見に行ったりと美容にどっぷり。美容も自分の好きなことなので、決して無理していたわけではないのですが、今はもう少し肩の力を抜けている気がしますね。
辛い時期もありましたけど、ああでもしないと私は自分の働き方を見直すことはなかったかもしれないので、今では、あの体調不良さえも必要なことだったのかなと思っています(苦笑)。

最近は、アーユルヴェーダという東洋医学を学んでいます。実は、心身のバランスを崩していた1年前に、なんとかしようとスリランカに飛び込み2週間のリトリートを体験したんです。
施術を受け、自分の今までの生き方とじっくり向き合い学んだことで、帰国してからはそれまでの体調不良が嘘のように落ち着きました。今はさらに理論を学ぶために教室に通い、日々の過ごし方や食生活に活かしています。それがすごく楽しいんですよ。
自分の興味が赴くままに始めた勉強ですが、学びながら、美容と健康は切っても切り離せないものだと改めて実感しています。健康という土台があってこそ美容が成り立つので、心身のバランスを整えることを身につければ、それがいずれ美容と関わってくることもあるかもしれないですよね。
最近は、このまま学びを深めて突き詰めていったら、なにか良いプロダクトが作れたりするかも、なんて未来も少しずつ見えてきたところ。ただ、それを狙ってガツガツやるつもりはありません。先ほどもお話ししたように、私はそこまで策士ではないので(笑)。

いい意味で、流れるまま。目の前のことに誠実に、自分が心から「いいな」と思えるものや、楽しい、美しい、かわいい、かっこいいと思うことをその瞬間ごとに積み重ねて今があります。遠い未来を見通す能力はあいにく持ち合わせていませんが、未来に繋がる予感がする今は、毎日が楽しいです。

- プロフィール
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ANTI
根来かおり
埼玉県出身。日本美容専門学校卒業後、新卒でANTIに入社。現在25年目。女性の「なりたい」に寄り添い、それを叶える技術で世代を問わず多くの支持されている。自身のライフスタイルやメイクを発信するSNSでも注目を集めており、美容だけでなくファッションや音楽業界などのヘアメイクとしても活躍中。
Instagram:@kaori_negoro_anti
(文/岩木日向子 撮影/Yui Ogano)
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