「美容師である限り、進化し続けなければならない」胸に刻まれた言葉を自分の力に変えてきたー美容師のコトダマHank.米澤香央里さん―

第一線で活躍する美容師たちの人生を変えた「言葉」に迫る連載企画「美容師のコトダマ」。今回登場するのは、表参道Hank.(ハンク)アートディレクターの米澤香央里(よねざわかおり)さん。その人のバックボーンに根ざすヘアデザインで、多くのお客さまを魅了する一方、ヘアメイクとしてもエディトリアルから広告まで幅広く活躍。さらには、コンテストにも力を注ぎ、その芯がありつつ柔らかな表現で注目を集めています。
そんな米澤さんの美容人生には、デザインに妥協せず、自分が思い描く女性像を追求するための背中を押してくれた「言葉」がありました。時には厳しく、時にはじんわりと優しく心に残った言葉の数々が、今の美容に対する姿勢や考え方を形づくっていったといいます。米澤さんの美容人生を支えてきた「コトダマ」とは? これまでの歩みとともに、その言葉に込められた思いを聞きました。
受け止め、解釈した言葉がオリジナルになる

20代半ばで、ヘアメイクのアシスタントをしながら、サロンのレセプションをしていた頃のことです。そのサロンは面貸しサロンで、当時は有名店の美容師さんたちが独立に向けたステップとして集まっているような場所でした。私はレセプションとして働いていたんですが、店長は美容師の仕事もできるようにとカットを教えてくれたり、アドバイスをしてくれたりして、ずっと背中を押してくれていました。
そんな店長から、ある時、「人の話をちゃんと聞いてないでしょ。表情は聞いている感じなんだけど、人から言われたことをちゃんと自分の引き出しに入れて、そこから解釈して、自分の言葉として人に伝えられるようにならないと」と言われたんです。当時は、怒られた、否定されたという感覚のほうが強くて、素直に受け止められませんでした。でも、30代を過ぎてから、その言葉がすごく腑に落ちるようになって。今の自分にも、ずっと生きている言葉だなと思います。

人からもらった言葉はもちろん、普段何気なくかけられた言葉や、広告でふと目にしたフレーズ。そういうものを一度自分の中に入れて、自分なりに解釈して、自分の言葉にする。その大切さが、後になってすごくわかってきたんです。
よく「作品をつくる時、どこからインプットしているんですか?」と聞かれるんですが、気づけば、そういった言葉が起点になっていることが多いんです。言葉が直接デザインになるわけではありません。でも、言葉を自分なりに解釈することで、自分のマインドや、ものを考える方向性がつくられていく。そこから作品のイメージにつながっていきます。20代の頃にこの言葉をもらっていなかったら、今のような作品づくりはできていなかったかもしれません。
「美容師である限り進化し続けなければならない。」

堀江(Hank.代表堀江昌樹さん)から、今も毎日のように言われている言葉です。「美容師である限り、進化し続けなければならない」。技術やセンス、アイデア、デザインそのものが止まってしまったら、来てくださっているお客さまに失礼だということを日々言われています。
その考えから、Hank.ではコンテストに挑戦するスタッフが多いんです。自分の表現を追求する場としてコンテストに取り組むことはもちろん大切ですが、Hank.ではコンテストとサロンワークを切り離して考えていません。そこでデザインを考えたり、表現を追求したりすることが、サロンワークでのデザインや技術の進化にもつながっているんです。
美容師にとって一番大切なのは、目の前のお客さまをきれいにすること。コンテストでも、サロンワークでも、学ぶことでも、最終的には全部お客さまにつながっている。「何のためにデザインするのか」「何のために技術を磨くのか」。美容師として進化し続けることの意味を、思い出させてくれる言葉です。