インターナショナルと癖毛を活かすカーリーヘア 多言語が飛び交うサロンで生まれる、新しいヘアデザインのかたち──MEY HAIR/CURLYS Hiro
外国人ゼロから始まった、インターナショナルサロン

帰国した僕は原宿の竹下通りの裏手にインターナショナルサロンMEY HAIRをオープンしました。以前働いていたサロンで一緒だった後輩との共同経営でのスタートです。
2020年3月、オープンしてすぐコロナで緊急事態宣言が出されました。インターナショナルサロンだと言うのに街から外国人が全くいなくなり、竹下通りはゴーストタウン。
でもSNSなどを通じて日本人のお客さまを少しずつ増やし、どうにか軌道に乗せることができました。まだ6席の小さいサロンだったので、なんとか持ち堪えたというのが正直なところです。その後スタッフも増え、翌年14席ある店舗に拡張移転しました。

サロン経営は軌道に乗ったものの、海外のお客さまは依然いない…。せっかくニューヨークまで行って習得した技術を全然使えない、という悔しい状況でした。そこで思いついたのがカーリーヘア、いわゆる癖毛を活かすヘアスタイルです。日本人は、トレンドのヘアスタイルを全員がやろうとする傾向があります。癖毛も「直すもの」「抑えるもの」と捉えられがちで、多くの人が縮毛矯正するスタイルを選びます。でもニューヨークは違いました。人種も肌の色も髪質もバラバラ。クルクルでも癖毛でも矯正するのではなく、それを個性として活かしながら、自分の好きなスタイルを突き詰めるんです。
実は日本人の癖毛率は7割と言われています。だったら、そのクセを受け入れて、もっと自分の本来の髪質を好きになる方向に向かっていいじゃないかと思ったんです。そう考えてニューヨークで培った、癖毛を活かすカットやスタイリングでカーリーヘアを発信し始めました。すると、インフルエンサーの目にとまり、あれよあれよという間に、YouTubeで紹介され、本が出版され、テレビの出演まで決まりました。コロナ禍でなかなか美容室に行けず、根元の癖毛が伸びてきているという状況も追い風になりました。「どうせ伸びているから、この機会に縮毛矯正をやめて活かすヘアにしてみよう」という人が増えたんです。

そうこうしているうちにコロナも終息して、海外からのお客さまもいらっしゃるようになりました。今MEY HAIRはインターナショナルとカーリーヘアの二軸で経営しています。
海外のお客さまが、40%、日本人のお客さまが60%。日本のお客さまの多くは癖毛を活かしたヘアデザインを求めてきてくだっています。
「その価値に、日本人だけが気づいていない」日本の美容を、世界基準へ

海外のお客さまが旅行中の限られた時間の中で、わざわざ予約をして来てくださる。その感覚って、僕ら日本人からすると少し不思議に思えるじゃないですか。自分たちが海外に行って、あえて髪を切るかと言われたら、正直あまりイメージが湧かない。でも、よくよく考えるとすごくシンプルで。例えばタイに旅行に行ったら、マッサージを受けたくなる感覚に近いんですよね。安くて、クオリティが高くて、安心できる。
日本の美容室も、それと同じポジションにあると思っています。価格はニューヨークの3分の1くらいで、チップもいらない。接客は丁寧で、カットからシャンプーまで技術の水準も高い。さらに英語での対応もできるとなれば、「せっかくだから行きたい」と思う理由は十分にある。
ただ、この価値に日本側がまだ気づききれていないとも感じています。気づいていたとしても、それを形にするのが難しい。言語だけじゃなくて、髪質や文化、好みの違いを理解した上で提案する必要があるからです。

僕自身はニューヨークでの経験を通して、日本の繊細な技術と、海外の多様な価値観の両方を学びました。だからこそ今は、どちらにも対応できる美容師を育てていくことに力を入れています。髪質に合わせたカットやスタイリング、ブローの仕方ひとつまで細かく共有しながら、「どんなお客さまにもフィットできる力」を持つ最強のチームをつくりたい。
日本の美容師は本当に技術力が高くて、努力もする。でもその力を、もっと世界に向けていけるはずだと思っています。これからの時代は、日本の中だけで完結するのではなく、グローバルな視点を持ちながら価値を広げていくことが必要になってくると思います。
MEY HAIRとしても、今後は海外への展開を視野に入れています。そのためにも、ここ東京で経験を積み、海外にチャレンジできる人材を育てることが大切です。英語が完璧である必要はなくて、大切なのは「やりたい」という意志。外国人のお客さまを担当したい、海外で働いてみたい、そういう気持ちがある人にとっては、いくらでもチャンスはつくれる環境にしていきたい。
自分がこれまで苦労してきた分、次の世代にはもっとスムーズに世界へ出ていける道をつくりたいと思っています。日本の美容が持つ価値を、ちゃんと世界に届けていく。そのための土台は、少しずつ整ってきていると感じています。

- プロフィール
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MEY HAIR/CURLYS
オーナー/Hiro
福岡県出身。新卒で上京しDaBに参加。副店長を経験後、ニューヨークに渡る。英語を学びながら、日系4サロン、アメリカ系1サロンを経て帰国。原宿にMEY HAIRを立ち上げる。2024年店名をMEY HAIR/CURLYSに変更し、表参道に移転。インターナショナルサロンに癖毛専門サロンを併設し、国内外のお客さまから支持を集めている。同年MEY KYOTOをオープン。海外出店に向けて人材育成にも力を入れている。
Instagram:@hiro_meyhair
(文/池谷美歩 撮影/菊池麻美)