【フリーランス5年目にして銀座で挑戦】苦境もインバウンドも力に変える。西田智美が目指す「髪を超えた美容師」のかたち
シビアな現実と直面し「自分はこんなものか」と落ち込んだ
――26歳でフリーランスになって、最初は順調でしたか?
いいえ、最初は全然でした(笑)。ありがたいことに、前のサロンからついてきてくださるお客さまはいたんです。でも、当然ながら全員が来てくださるわけではない。フリーランスになって半年くらいは、本当にいろいろ試行錯誤しました。予約が入っていない時間もありましたし、「あれ、今日ノーゲストだ」という日も。前のサロンでは毎日忙しく働いていたので、その落差がすごくて。「私ってこんなものだったんだ」と、かなり落ち込みました。
ただ、そこで立ち止まっているわけにもいかないので、改めて技術の勉強をしました。もともとはカラーなどもしていたんですけど、徐々にトリートメントや、縮毛矯正にも力を入れるようになって。セミナーに行ったり、自分が「この人から学びたい」と思った美容師さんのところへ勉強に行ったりしました。SNSを見ていて、「この人の縮毛矯正を学びたい」と思ったら、その人のセミナーに行く。「もっと学びたい」と思って。そうやって技術を磨いていくうちに、少しずつお客さまも増えていきました。でも、その過程では本当にお客さまに支えていただいたと思っています。

インバウンドとの出会いが、私の視野を広げてくれた
――インバウンドのお客さまを担当するようになったのは、いつ頃からですか?
3年ほど前です。きっかけはSNSを通じて出会った、海外のインフルエンサーの方でした。当時はまだ英語でのやり取りに慣れておらず、きちんと意思疎通ができているのか、本当に来てくださるのかと、私自身が不安に感じていました。それでも実際に来店してくださり、施術を通して言葉を超えて気持ちが通じ合えたような感覚があって。施術後にはとても喜んでくださり、その出会いが海外のお客さまと向き合っていく大きな転機になりました。今でも本当に感謝しています。
でも、もっと遡ると、最初に私の意識を海外へ向けてくれたのは、日本人のお客さまなんです。その方が国際結婚をされ、旦那さまが日本語を話せない方でした。旦那さまとも自分の言葉で直接コミュニケーションを取り、安心して施術を受けていただきたいと思ったことが、英語を学び始めるきっかけです。
英語を意識しはじめたら、次第に英語のDMが来るようになって、先ほどの海外インフルエンサーの方との出会いに繋がったんです今もペラペラ話せるわけではないですけど、英会話スクールに行ったり、アプリを使ったり、外国のお客さまと話すこと自体を勉強にしたりしています。勉強したことがそのまま仕事につながるので、学びへの楽しさが倍増するんですよね。
――実際に、どんな海外のお客さまが来られるんですか?
旅行で日本に来ている方もいますし、日本に住んでいる方もいます。日本語は話せるけれど、海外の髪質に対応できる美容室がなかなか見つからなかったり、日本の美容師さんとのコミュニケーションが難しかったりして、来てくださる方もいます。
日本人のお客さまと海外のお客さまでは、美容に対する考え方も少し違うと感じます。日本人は「似合うかな」と少し控えめに考える方も多いと思うんですけど、海外のお客さまは、「これがしたい。私の良さを引き出して」という感じの方が多い。そいった文化の違いに面白さも感じています。日本にいながら海外の方と関わることで、文化や価値観の違いを知ることができる。それをまた日本のお客さまへの提案に還元できる。それが今の私にとって、すごく大きな学びになっています。

フリーランスだからこそできる、「お客さまの時間」のカスタマイズ
――フリーランスになって、お客さまとの距離感も変わりましたか?
すごく変わったと思います。1対1で担当するので、以前よりもお客さまとの距離が近くなりました。お客さまが自分のバックボーンや、「実はこういうことがあって……」という普段はなかなか話さないようなことまで話してくださる瞬間が、すごく嬉しいんです。お客さまも、いろいろなことがある中で時間をつくって、美容室に来てくださっているわけじゃないですか。だからこそ、その時間を「来てよかった」と思ってもらえるものにしたいと思っています。
フリーランスになって良かったことの一つが、自分次第で時間をカスタマイズできること。もちろん営業時間は決めていますが、お客さまと自分の都合が合えば、早くても遅くてもできるだけ時間を合わせたいんです。雇用されていた頃は、どうしても営業時間に合わせてお客さまに来ていただく必要がありましたけど、ありましたけど、今は自分がボスなので(笑)。これはフリーランスならではの特権だと思っています。
